13、ジュリ7歳になる
「また、今朝も、スライムだらけじゃないかい」
私の部屋に小さなお客様が初めて来た日から、毎晩、寝る時には、花のように小さなスライム達が、こっそり遊びに来るようになったよ。
ベッドや床が砂だらけになるから、オバサンが毎朝ぷりぷりしてるの。でも、スライム達が来ることは嫌じゃないみたい。
「お友達がいる方が、すぐに眠くなるよ?」
「ジュリがよく眠れるのは良いんだけどね。毎朝、掃除が大変なんだよ」
「じゃあ、私が、お掃除するよ」
私がそう言うと、オバサンは少し嬉しそうな顔をしたよ。
「ジュリに掃除の方法を教えないとね。だけど今日は、ロックスの髪を染色するから、また今度だね」
「ふぅん。じゃあ、私は、スライム達を草原に連れて行ってから、水汲みするね」
オバサンは、自分の物質スライムを見られるのが嫌いだから、ロックスさんの染色は、見に行かないことにしたよ。漁師のお兄さんも、今日は海に行ってるから。
緑の集落で私の髪色が怖がられたから、あれ以来、お使いは頼まれてないの。緑の集落に引っ越した緑色の髪のお兄さんが、たまにオバサンに呼び出されてる。
あの蒸し物は、また食べてみたいけど、私の髪色は呪われているって怖がる人がいるから、行けないよね。
◇◇◇
上の草原で、ちょっと大きくなったスライム達と遊んでから、水汲みをして、オバサンの家に戻ると、ロックスさんがいたよ。
(あっ! 脱色が効いてる)
「ジュリちゃん、おかえり」
「ただいまなの。ロックスさんの髪色が変わったね。濃い赤茶色が、普通の赤茶色になってる」
「錆びた金属みたいな色だよな。でも、黒さは抜けてきたから、もう大丈夫な気がするよ」
「じゃあ、ロックスさんも次の大型船が来たら、島から出て行っちゃうんだね」
私がそう言うと、ロックスさんは、なんだか難しい顔をしたの。漁師をするより、大陸に戻りたいんだよね?
「俺は、もうしばらく、ここにいるつもりだ」
「ん? どうして?」
「俺は、ジュリちゃんに辛い思いをさせてしまったからな。まだ、何も出来てない。それに、イーグルが黒い髪の人間を見つけたら、たぶん一緒に来ると思うんだ」
「イーグルさんが来るの?」
「あぁ、アイツはそういう性格だからな。俺が大陸へ行くと、冒険者ギルドに伝言を残しても、なかなか合流できない気がするんだよ」
「ふぅん、じゃあ、ここにいる方がいいね」
私は、よくわからない言葉があったけど、聞かないことにしてるの。私が知らない方がいいこともあるみたい。
それに、私の前世の記憶が戻らないかもしれないって、オバサンもお兄さんもすごく心配してるから、私は気にしないフリをしてるの。
スライム達もすごく心配してくれてる。だから毎晩、私の部屋に遊びに来てくれるんだと思うよ。
ロックスさんは、次の大型船には乗らなかったの。漁師の手伝いをしてるから、少し日焼けしてきたみたい。
私は、毎日、草原で楽しく遊んでるよ。
◇◆◇◆◇
『ジュリちゃん! お誕生日おめでとう。ボクが1歳になったから、ジュリちゃんは7歳になったよ』
「えっ? お誕生日なの?」
『うん! ボクは、ジュリちゃんの6歳の誕生日に生まれたから、ボクとジュリちゃんは、誕生日が一緒だよ』
「へぇ、知らなかったよ。私は、7歳になったのね」
ある朝、起きたら、物質スライムがピカピカと光っていたの。海辺の集落にいるスライム達にも自慢してるのかな。
遊びに来ていた小さなスライム達も、ポヨンポヨンと飛び跳ねてる。私におめでとうって言ってくれてるみたい。
『ジュリちゃん、ボクに誕生日の贈り物をくれない?』
「何か欲しい物があるの? 困ったな。私、お金持ってないよ」
『お金はいらないんだ。お願いがあるんだよ』
「なぁに? 私にできること?」
『できるよ。ジュリちゃんにしかできないよ。ボクに名前を付けて欲しいんだ』
「名前? 物質スライムにも名前があるの?」
『ボクは、【出店】の物質スライム。役割の名前しかないんだ。ジュリちゃんに呼んでもらえる名前が欲しいんだよ』
私も、物質スライムには名前がないから、ちょっと不便だなって思ってた。
「そっか。うーむ、どうしようかな? 無色透明な宝石みたいな綺麗な玉がついてるよね。ん〜とね〜、キラキラだから、キララは?」
無色透明な玉が、強くピカピカと光ったよ。
『わぁっ! いい名前だね! ボクの名前はキララ! ジュリちゃん、ありがとう』
「うん、かわいい名前を思いついて良かったよ。私の物質スライムは、今日からキララね」
『ボクはキララ! ジュリちゃんを守る物質スライムだよ』
(あれ?)
強い光が無くなったら、無色透明な玉が、ほんの少し大きくなってるように見えたよ。
「キララ、何か変わったの?」
『ジュリちゃんがボクに名前をくれたから、ボクはすごく成長したよ。魔力が10倍になったんだ』
「10倍? よくわかんないけど、たくさんになったの?」
『うん! たくさんになったよ。この島の中なら、どこへでも行けるからね』
「へぇ、すご〜い!」
私が拍手をすると、小さなスライム達も飛び跳ねて、キララにすごいって言ってるみたい。
「ジュリ、何があったんだい?」
オバサンが慌てて、私の部屋に入ってきたの。 騒がしかったのかも。
『村長、今日はジュリちゃんとボクの誕生日なんだ。ジュリちゃんがボクに、誕生日の贈り物をくれたんだよ』
「もう、一年も経ったのかい。じゃあ、ジュリは7歳になったんだね。おめでとう。今夜はお祝いをしなきゃね」
「村長さん、ありがとう!」
「それで、ジュリは物質スライムに何を贈ったんだい? まだ、何も付属品は付けられないだろ。ん? どういうことだい? ジュリの物質スライムの魔力量が、大幅に増えているじゃないか」
『ジュリちゃんは、ボクに名前をくれたんだ! ボクの名前は、今日からキララだよ。ジュリちゃんが付けてくれた可愛い名前!』
オバサンは、目を見開いてるよ。
「ジュリ、物質スライムに名前を付けたのかい?」
「ん? うん。キララが名前が欲しいって言ったから。ダメだった?」
(あれ?)
なんだか、オバサンが泣いているように見えたの。
「そうかい。よかったよ。物質スライムが名前を欲しがったんだね。そうか……」
「何か、変なの?」
「変じゃないよ。ジュリは8歳になったら、スライム神から、新たなギフトを授けられる。物質スライムは、次の物質スライムが来る一年前になると、名前を欲しがるんだよ」




