表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
414/433

三百十八話 ゴミ箱とピン留め

 

「あ、あれ? タクみん、Kはどしたのでござるかっ!? 髪型も普通に戻っているでござるよっ!!」

「うん、色々あってね。色々恥ずかしいから全部カットしてもらったんだ」


 アフロの改変はダメだったが、サラストの方に伽羅様の制限は付いてなかった。レイアに頼みこんでKになった俺のストーリーを丸ごとなかったことにしてもらったのだ。


『な、なんでや。うち、もうマイク型に変形してしもうたのにっ』


 う、うん、トーナメントが始まるまでに戻しといてね。だいたい、冒険者しかやったことないおっさんが、いきなりKなんてやれるはずないんだよ。


「じゃあタクみんは、何系のラスボスでいくつもりでござるか? このままでは、なんの変哲もない、ただのラスボスでござるよっ」

「ただのラスボスいうな」


 みんなは知らない。どれだけKの俺が惨めだったか。

 わずか数ヶ月の間に駆け抜けたヒストリー。

 ガラガラだったルシア王国ドームライブ、チケットが余りまくって中止になった全国ツアー、噛みまくって俺のセリフだけ全部アフレコになったKドラ出演。

 さすがのレイアも同情して、Kの歴史そのものを無かったことにしてくれた。


「ありのままでいいじゃない。だって俺は俺なんだもの」

「不思議でござる。まるで数ヶ月、売れないアイドルを経験したみたいな顔をしてるでござるよ」


 う、うん、ちょっと記憶残ってる?


「まあ無理してカッコつけたって、ほころびは必ずやってくるんだよ」

『僕みたいに?』


 バッ、と後ろを振り向いた。

 誰もいない。だが、確実に存在していた。


「あのお方」


 無限に加速した時の果て。想像もつかないような遥かな未来。蒼穹天井のさらに上、誰も辿り着けない時間の監獄。

 屋根裏宇宙バックヤードコスモと呼ばれる時間の牢獄をレイアがカットしている。

 だがカットする先の未来が果てしなく遠く、どこまでカットしていいのか見極めるのに時間がかかるため、牢獄を解除できるのは、だいぶ先だと言っていた。※1

 それでも、その気配は肌に感じられるほどに迫ってきている。


「そういえばロッカに頼んでいた件、調べられたかな?」

「謎の人物の手がかりでござるか? 過去現在未来において、無限界層最強といわれる「あのお方」の正体はわからなかったでござる。ただ「あのお方」と全く同じような戦績で無限界層ランキングを一気に勝ち上がってきた人物がいたので、実はその人が「あのお方」じゃないかと疑われている噂は耳にしたでござるよ」


 じゃあ、もうソイツが「あのお方」なんじゃないの?


「だ、誰なんだ、ソイツは?」

「タクみん」

「え? なに?」

「だから「あのお方」と噂されているのはタクみんでござるよ」


 ああ、そうか。

 やっぱりそうなるのか。

 俺もちょっとそうなんじゃないか、と思っていたんだ。

 ネレスに言われて屋根裏宇宙を調べた時、引きこもっていた時の俺とそっくりの部屋を確認している。

 耳元でネレスにその正体を囁かれ、俺もその時は確信していた。でもあれは俺じゃない。俺じゃないんだ。


「……もう少し調べてくれないかな。なんでもいいんだ。魔力の流れでも、靴のサイズでも、何かわかったら教えてほしい」

「わかったでござるよ。拙者も少し時間魔法を習ったでござるから、現在だけではなく過去も調べてみるでござるよ」


 そういえば魔王崩壊サタンバーストが終わった後、まだ出会ってないはずのロッカに会ったような気がする。アレは今のロッカが過去にお邪魔していたのだろうか。※2



「分岐点はやはりあの時か。明らかに物語が変わっている。魔王は最初、ラスボスではなかったはずだ」


 ロッカが探索に向かったので、1人もの思いにふけっていた。微かに残る記憶の断片。巨大なロボットに乗り込んだリックの映像がぼんやりと頭に浮かぶ。※3

 作家のシナリオは、誰かの手で確実に書き換えられている。世界の改変が実行され、その前に存在した物語はなかったことにされたのだ。そう、丸ごとカットされたみたいに……


「レイア、近くにいる?」

「はい、超至近距離、数ミリ単位でくっつく範囲で見守っております」

「うん、そこまで近づかないで。出会った時からずっと距離感バグりまくってるよ」

「そんな褒めないで下さい。照れてしまいます」


 うん。褒めてないから、照れないでいいよ。


「ま、まあ、いいや。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、レイアがカットしたシーンって、どうなるの? 完全に消えてなくなるの?」

「いえ、感覚的にはゴミ箱に捨てている感じです。ただ一度カットしたものは、期限が過ぎれば認知から外れ、戻すこともできなくなるので、この世界からは完全に消えています。でもカットされたシーンは、もしかすると別の世界線に移動しているのかもしれませんね」


 やっぱりそうか。

 まだ予測の範疇を超えないが「あのお方」の正体が薄っすらと見えてくる。


「あ、Kフミさんの物語はカットしましたが、記憶だけは私の頭の中にピン留めしておきましたからっ。みんなが覚えてなくても、私は生涯忘れませんからっ」


「あのお方」の正体よりもそのピン留めを外すのを、慌てて最優先に()り上げた。




 ※1 「あのお方」が時間の牢獄に閉じ込められているエピソードは、「第九部 転章 三百十三話 選択肢のない選択」に載ってます。よければご覧になってみて下さい。


 ※2 タクミが未来のロッカと出会うエピソードは、「第二部 転章 六十七話 恋愛バトルロイヤル」に載ってます。よければご覧になってみて下さい。


 ※3 リックがラスボスだったエピソードは、コミカライズ版へ向けた改稿のため、カットされました。南方の最終巨大兵器「ダムガリオン」やレイアと双子の隠密ヨルの活躍などが完全にカットされましたので、機会があれば特別編として、いつか載せてみたいと思います。





休載していた『うちの弟子』コミカライズが秋田書店様のチャンピオンクロスで9月2日から再開されました。

しばらく毎週更新なので、ぜひご覧になってください!

9月23日更新のチャンピオンクロスでは、※2のエピソードが掲載されて未来のロッカがチラッと出ています。

またコミックス4巻が、2025年12月25日に少年チャンピオンコミックスから発売されます! 小説版とはまた違ったオリジナル展開になりますので、ぜひぜひお手に取ってみて下さい。よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ