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戦中の思考者

戦いながら考え

考えながら戦う

配点(頭脳戦)

side美紗


イリヤと喜美のダブルチーム……!


「楓!戻して!」

「……クソッ」


全国大会を何度も見てきた私から見ても、2人は全国最高峰レベルだ。


その2人から同時にディフェンスを受けているのだ。


もはやパスを出すことさえ至難の技になっている。


「頼む!」


楓は強引にバウンドパスを出す。


2人の高身長プレイヤーに囲まれた楓には私がどこにいるかさえわからない。


果たしてボールは織火の元へ飛んでいく。


「もらいです!」


そのまま一気に走り出してくる。


私は急いでその正面に立ち腰を落とすが、脇をバウンドパスで抜かれた。


長めのバウンドパスは沙耶が取った。


中にいた美樹を押しのけて流し込む。


インサイドでのイージーバスケットを許している。


「一旦落ち着こう」


私は声をかけてテンポを落とす。


ゆっくり上がり、織火と対峙する。


何度も誘うが乗って来ない。


当然ですね。


冷静さ、ということなら私を超えるだろう。


運動能力でも私を上回る。


しかし、こちらも4年間をバスケに注ぎ込んでいますからね。


技術で負けるつもりはないんですよ。


チェンジペースから相手の右を抜きに行く。


織火はすぐについて来る。


楓がイリヤのマークをスクリーンで振り切った。


私はそちらにボールを出すフリをする。


織火が楓へのダブルチームに行こうと私から外れる。


ボールを手の中に戻してそのまま決めた。


「こんなもんです」





side楓


美紗がいい形で決めた。


私抜きでも点数を取れることを見せてやらなければいけない。


そして私はこの女を止めなければいけない。


「さて、どうしてやろうかしらねぇ」

「何でもいいぜ。全部止めてやるから」

「大した自信ね。いいわよ楓。その自信。私好みだわ」

「そりゃどうも……!」


喜美が私に背中を預けるようにドリブルで押してくる。


コイツの戦いは2回しか見たことがない。


私とやった試合と、西条とやった試合。


公式戦には出てないのでビデオで残っているのはこの2試合だけだった。


そのビデオなら夢に出るほど見た。


全ての内容を頭に叩き込んでいる。


それでわかったのは、喜美の身体能力、センス共にずば抜けているということだ。


異常と言ってもいい。


反応が異常なまでに早いのだ。


本能というか、そういうのが発達している。


西条とやったときなどは、知美のフェイントに引っ掛かった上で再度反応して止めて見せたのだ。


オフェンスの時、その能力は最大限発揮される。


こちらの動きに反応して、常に反応し続ける。


常にこちらを抜く動作をしてくる。


どこからでも修正してくる。


どうすれば止められる?


ビデオ2試合分では少なすぎた。


藁にも縋る思いで沢木壮の試合を見た。


それが正解だった。


喜美と壮のスタイルは似ている。


相手の出方を見て常に修正し続ける。


相手に触れさせさえしないような圧倒的な実力。


私は壮の試合を研究した。


抜きに来るときの初期動作、力の入り方、全てそっくりだった。


しかし壮が止められた時というのがほとんどないので難しかった。


最低でもリングに乗せて来るのだ。


しかし壮の試合を見れば見るほど、私はさらにあることに気づいた。


喜美は壮ほど強くない。


年齢とか、男女差ではない。


そういうのを一緒にしても壮のほうが強い気がする。


それは何故だ?


私は試合をしたあとに壮に話したことを思い出す。


人間とやっている感じではなかった……


コンピューターとやっている気分、というのが正しいだろうか?


ゲームで、ベリーハードでレブロンと戦っている気分だった。


機械じみた動き。


それは壮になくて、喜美にあるものだった。


違う。


壮のプレイには人間味があり、喜美のプレイには人間味がない。


常に私の動きに反応して、その場で最善の動きをしようとしてしまう……!


「さぁ、止めてみなさい!」


あぁ、止めてやるよ。


喜美が左に切り込んで来る。


右腕で私を押しのけるようにして体を低くして一気に来る。


このまま行けば抜かれて決められる。


だから私は喜美と激突するギリギリのコースに体を捩込んだ。


喜美、これでアンタはスピンムーブで右を抜いてくるはずだ。


沢木壮がもっとも得意とする技でな!


「ッ!?」

「ビンゴ!」


ほぅら来た!


喜美が完全に止まった。


もたついて、しかしイリヤにパスを出す。


喜美を完全に止めた!





sideイリヤ


喜美が止められた!?


驚愕というのも生温い。


喜美が止められるのは、あんなふうに完璧に相手に止められたのは初めて見た。


そしてボールが私に渡ってしまった。


迷っている暇はない。


ショットクロックは過ぎていく。


私にボールが来たら決めるしかない。


目の前のフォワードをぶっ飛ばすだけだ。


その場で数回ドリブル。


一気にトップスピードに持っていく。


相手の手が伸びて来る。


構うものか。


ぶつかれとばかりにギリギリを抜き去ろうとする。


相手が私のユニフォームを掴んだ。


しかし私は既にステップを踏んでいる。


ユニフォームを掴まれたまま飛び上がり、ボールをボードに当てる。


笛が吹かれる。


カウントだ。


2点を決めて、さらにファールでフリースロー。


決めてやった。


喜美が止められたぶんはキッチリフォローした。


そして次は楓だ。


「クソッ!しつこいッ!」

「当然でしょ……!」


楓はボールを持っていようが持っていまいが関係ない。


常にマークし続けなければいけない相手だ。


楓をゲームから排除しなければいけない。


「構わない!おまえらで決めろッ!」


楓の声が飛ぶ。


美紗が頷き織火と対峙する。





side織火


イリヤはよく働いている。


楓にくっついて、オフェンスから排除することに成功していた。


そして私の目の前には、2番目に注意するべきポイントカードの美紗がいる。


この子、ゲームメイクは上手いわパスは上手いわミドルは上手いわドライブ上手いわのチートポイントカードなんですよね。


バスケ雑誌を立ち読みして知ったのだが、全国で1、2を争う全国屈指のポイントカードらしい。


小学生女子、オールスターの1stチームに選ばれていましたし。


ちなみに楓も1stチームで、琴美も1stチームだった。


というか琴美は全国No.1プレイヤーだった。


まぁ実質喜美を上回っていましたからね。


全国No.1ポイントカードとフォワードがいるのに勝てないのは、ひとえに総合力である。


しかしこの1対1は総合力関係ないですね……


うわぁ!


すごい速いですよ意味わかんない。


中には私と沙耶が守っていた。


その間を切り裂くように美紗が侵入してくる。


飛んで、割り込んできた。


私は一瞬で抜かれて、次の沙耶が止めようと飛ぶ。


しかし美紗は沙耶の巨体をかい潜るようにして避けて、そのまま空中でシュートを放つ。


決まった。


ハハッ、頭おかしいんじゃないですか?


何ですか今の空中での制御。


人じゃないでしょう。


でも、


「頭おかしい人とは毎日やってますからね……!」


ナメないでくださいよ。


これでも毎日あの喜美、イリヤと練習しているんですよ?


お兄さんの指導を受けているんですよ?


全国No.1だか何だか知らないですけど、いや知ってますけど、でも私が勝ちたいんですよ。


リベンジしたいのは貴女達だけじゃないんです。


私だって前回のリベンジをしたくてウズウズしていたんですから。


美紗、貴女にいいようにやられたお返しをさせてくださいよ。


そんなことを思うが、感情は押さえ付けた。


スローインを受け、そのまま上がる。


美紗のディフェンスが激しいが、咲やイリヤをぶつけて落とす。


代わりに私についたのは円香。


この子なら行けますね。


私はスピードを上げてステップを踏む。


さぁ、どっちでしょうかッ!


残念!


右でした!


新たな武器、ステップフェイクを使って円香を抜き去る。


そのまま決めてやる。


私は美紗に勝てませんけど、蓮里が栄光に勝つことはできるんですよ。





side楓


相手の得点が全てインサイドだ。


私が気づくと同時、タイムアウトが取られた。


春秋先生だ。


一度皆で集まる。


「相手の攻撃が全てインサイドです」


春秋先生は当然気づいていた。


「ゾーンディフェンスに切り替えます」

「「「「「はい!」」」」」

「中に入られないようにしてください。外は捨てても構いません」

「「「「「はい!」」」」」

「今回の蓮里には沢木壮がいません。しかし5人だけでも自分達で修正してくるでしょう」


春秋先生は蓮里をナメない。


「楓、喜美は止められますね?」

「大丈夫です。もう対策は見つけました」

「あとは円香、千晴、梨華。貴女達次第です」

「「「はい!」」」

「梨華は沙耶に厳しく当たってください。ファール覚悟で構いません」

「わかりました」

「千晴、ゾーンディフェンスになれば相手は咲にボールを回すはずです。咲対策はわかっていますね?」

「はい!」

「円香。前回の試合でも1番やられたのが貴女です」

「はい!」

「イリヤを、止められますね?」

「できます!」

「よろしい。控えも十分にアップをしておいてください。いつでも出ても大丈夫なように。厳しい戦いになります。全員の力が必要なのです!闘志を剥き出しにしなさい!ボールに食らいつきなさい!」

「「「「「はい!」」」」」

「行くよ、アンタら!」

「「「「「勝利あれ!!」」」」」





side喜美


「どうする喜美?相手たぶんゾーンにしてくるよ?」

「織火、私はこのまま行くべきだと思うわ」

「同感ですね。ゾーンやられたくらいで引くほどヤワじゃないですよ」

「でも実際どうすんの?」

「数回はイリヤに撃たせましょう。咲は警戒されていると思いますから」

「私が外から撃って広げるんだね?」

「はい。あとは喜美と沙耶でぐちゃぐちゃぁ!にしてください」

「わかったわ。ぐちゃぐちゃぁ!にするから任せなさい」

「じゃあ行くよ!」

「「「「「蓮里ファイッ!」」」」」

ちなみに前回の声だしですが、


蓮里のほうは言っているメンバーが1つずつ変わります。


最初の潰せがイリヤ。


叩き潰せが沙耶


我らこそ強者が咲


勝利を掴めが織火


そのあとの蓮里コールが喜美です。


栄光は1人ずつ加わっていく感じで、


楓、美紗、円香、千晴、梨華の順番で加わっています

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