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別れ場の兄妹

苦しんで

悲しんで

そして私は強くなる

配点(兄離れ)

side沢木


おはようございます。


朝からアソコが巨大化して、そこを寝ぼけた喜美が踏ん付けて大変なことになっている沢木壮です。


折れるかと思った。


というか折れたらどうなるのだろう。


マジで途中からポッキリ曲がっているのだろうか?


ちょっと見てみたいがその痛さは想像することさえできない。


やめておこう。


これで子供ができなくなったら大変だ。


現在朝の4時。


寝ぼけていた喜美を着物を剥いで起こして、演劇していたら母さんに見つかってしこたま殴られた。


俺だけ。


男女差別反対です。


喜美とバスケの朝練をする。


もう負ける気がしない。


今までだって一敗もしなかった。


そのうえ喜美の致命的な弱点まで見つけた。


寝ながら戦っても負ける気がしない。


そして喜美は自分の弱点に気づかない。


俺とやって負けるのは実力のせいだと思っている。


コイツも成長しねぇなぁ。


「クソッ!どうして私が行こうとした所に悉くいるのよ兄さんは!


何!?そんなに私といたいのかしら?


フフフいいわよ!


じゃあ手始めに小学校の女子トイレに行ってきなさい!


それで個室のドアを開けて『あ……』とか言って女の子に殴られながら『不慮の事故だってー!』と言いながら吹っ飛びなさい!


ラッキースケベねラッキースケベ!


どこにラッキー要素あるのよ!?


どう見ても確信犯じゃない。

でも素敵ッ!

それで飛んだところをイリヤに見つかってお仕置きでもされていなさい素敵ッ!」


朝からどうしてこう狂っているんだコイツは。


朝練も終わり、喜美はシャワーに行って俺は新聞を取りに行った。


新聞と共に色々な郵便物もあった。


大体は父さんに宛てられたものだ。


しかしその中で1つ俺宛てのものがあった。


何だろう?と見てみると栄光からだった。




「で、これが栄光からの手紙ってわけ?兄さん」

「あぁ、そうだ」

「なんだい?試合をした相手からかい?」


朝ごはんを食べながらその手紙について話し合う。


「まぁ見てみようか」


と、封筒を破いて中の便箋を取り出してみた。


差出人を見ると楓からだった。


『拝啓、お兄様へ』


「兄さん、兄さん。初っ端から楓が飛ばしてきているわよ!?」

「というかコレ本当に楓が書いたのか?」


『暑い夏が続いておりますが、どのように過ごしやがっているでしょうか?』


「早いよッ!敬語が崩れるの早いよ!」


『べ、別に私が兄貴のこと好きだから書いているわけじゃないんだからね!みんなが書けって煩いから書いているだけだかんね!』


「兄さん!何かキャラがぶれまくっているわよ!?メトロノームの反対から反対まで大きく振れたわよ!?」


『実は今度栄光では球技大会というものがあるのです』


「「唐突に敬語ッ!?」」


『この球技大会というものは、他校を呼び、たたきのめすもので御座る』


「もうツッコミ入れる気にもならねぇ……」

「フフフ、武士系ね?」


『つきましては我がバスケ部は、蓮里を呼びたいのでおじゃる』


「もうふざけてねぇか!?楽しんでねぇか!?」

「公家系で来たわね……」


『朕は9月の30日、栄光にてきみを待つ!』


「君と喜美のかけことばだと……!?」

「というか敬語どこへ行ったのかしら?」


『PS春秋です。前回のリベンジはキッチリさせてもらいます。覚悟してください」


怖い……一番前回のことを根に持っているのは先生じゃないかな。


「あ、でも俺この日はダメだ」


「はぁ!?兄さん何を言い出すのよ!?」


「いや、この日横浜羽沢に遠征なんだよ」


「兄さん……嘘でしょ?」


「本当だ。そんなことで嘘をつくわけねぇだろ」


「そんな……兄さんがいないって……」


「コラ、喜美。いい加減壮に頼るのは止めな。いつまで甘えているつもりだい」


「……」


「喜美、やれるか?」


「……フフフ、当たり前でしょう?私を誰だと思っているの?沢木喜美よ?やれるにきまっているでしょう?」


「よし。それじゃあ俺は楓に俺抜きでもいいか聞いてみるよ」


「ええ……」


喜美はしょんぼりして朝食を下げて部屋に戻って行った。


「いい機会だよ。喜美はアンタに甘え過ぎだ」

「俺もそう思っていたところだ」


喜美の俺への依存症はそろそろ治さないとヤバい。


俺とイリヤが結婚しても、一緒に住むとか言い出しそうで困る。


そんなことになったらイリヤと思う存分キャッキャウフフができないし、イヤーンやアーンなこともできない。


それだけは避けなければ……!


それに横浜羽沢と合同練習ができるのだ。


これを逃す訳にはいかない。


さて、あとはどうやってみんなに説明するか、だな。




「あ、そうですか?別に私たちだけでいいですよ」

「むしろコーチがいないほうが清々するというか」


コイツら2人は問題なかった。


織火は色々試してみたいらしく、どちらかというとワクワクしている。


沙耶はうるさく言われないと思うと嬉しいのか、顔がにやけっぱなしである。


問題は残り3人だ。


「いいか?咲」

「私は構わない。壮なしでやることもあるだろうし」


よし。


咲はこういうときは頼りになるいい子だ。


さすがバスケ部1の常識人。


「イリヤもいいかな?」

「私も構わないよ?壮がいなくても勝ってくるから!」


イリヤも予想外にアッサリだった。


「え?何?私だけ?」


戸惑うのは喜美だ。


「あれあれ?喜美はお兄さんがいないとダメなんですかぁ?」

「そ、そんなわけないでしょう。この私が!」


織火にからかわれて喜美が慌てて否定する。


他の3人は喜美の言うことが本当だと思っているようだが、織火の目はごまかせなかった。


「えぇい!兄さんなんていなくても30点差つけてくるわよ!」

「ハッハッハ、そりゃいいや。それじゃあ練習行くぞ。俺がいなくても完璧なようにするから覚悟しておけよ!」

「「「「「押忍!」」」」」

「特に織火!お前、ほとんどコーチみたいなことやらせるからな。色々叩き込むから覚悟しろ!」

「押忍ッ!」

「っしゃあ!アップから元気よく行くぞ!」

「「「「「押忍ッ!」」」」」




夏休みが終わり、練習のほうは少し軽くなった。


夏休みのままの練習だと体が壊れる。


それに全国大会の予選も12月からスタートするのだ。


上位2校だけが全国に進める。


だからこの栄光との練習試合は、かなり重要だった。


ここで勝てるか、負けるか。


それが全国に行けるか、行けないかに直結するのだ。


西条だっているし、他にも強い学校はあるのだ。


いい試練かもしれない。


俺抜きでどこまでやれるのか。


だから今のうちに叩き込めるだけ叩き込む。


「イリヤ!そこはパスじゃねぇ!貰ったらすぐにシュートだろうが!何考えてやってんだテメェ!」

「すいません!」

「もう1回だ」

「「「「「押忍!」」」」」


だから、いつもより厳しく行く。




side喜美


兄さんが来ない。


それは想像以上にショックだった。


思えば私がバスケをしているとき、常に兄さんが隣にいた気がする。


私がバスケをやるときは、兄さんと一緒の時だ。


兄さん抜きでバスケをする。


私はできるのだろうか?


そんなことで私は楓に勝てるのか?


だから私は練習に全力を注ぎ込む。


いつだって全力だった。


でも、今日からはそれ以上だ。


「ラアアアァ!」


沙耶にボールを抑えられるが、無理矢理決めに行く。


思いっ切り振って押し込む。


しかしボールは沙耶に取られていた。


「クソッ!」


思わず声が出る。


こんなことで、こんなことで兄さん抜きで戦えない。


今までの2倍は動けるようにならなければいけないのに。


「回しなさい織火ッ!」

「はいよっと」


織火が咲を抜いてレイアップの体勢になる。


沙耶がブロックで飛び、織火は走り込んできた私にパスした。


そのままレイアップで流し込んだ。


「ッシ!ナイスパス織火!」

「喜美もナイスタイミングでした」

「いいよ喜美!」


練習中は、いつものいざこざはなしだ。


咲とイリヤも練習中はちゃんとやる。


お互いによく話す。


「今の私がヘルプ?」

「そうだね。私ちょっとキツイな」

「了解。次は止めよ」

「オッケー、行くよ!」


沙耶、咲、イリヤの3人となるといくら私と織火のコンビでも決めるのは簡単ではない。


「はぁ……はぁ……」


織火が慎重にタイミングを計る。


そしてクロスオーバーから抜きに行った。


「行かせ……ない!」


咲がそれをギリギリ止めようとするが、織火がかなり押し込んだ。


沙耶が織火に寄る。


私はフェイントをかけてイリヤを置き去りにするとノールックパスを受けとった。


そのままシュートを放つ。


スパンッといい音を立ててシュートが決まった。


「いいわ!いいわよ私!」

「喜美!ナイッシュです!」

「イリヤッ!どうして今振り切られた!考えながらやってんのかッ!」

「すいません!」

「謝れっつってんじゃねえんだよ!何でだって聞いてんだ答えろッ!」


兄さんの指導にも熱が入る。


イリヤにガンガン怒鳴っていく。


むしろイリヤが一番怒られていた。


前回の桐生院のようなことがあってはならないのだ。


イリヤが腑抜けてはダメなのだ。


だから兄さんは特にイリヤに声を飛ばす。


「取り!」

「クソッ!」


次の攻撃はイリヤに取られた。


クソ……この私が……


「よしイリヤ。今のはやろうとしたことが見えた。いい動きだ」

「はい!」

「やればできるんだ。それを続けろ!」

「はい!」

「イリヤ、ナイス」

「ありがと咲」

「イリヤ、次も止めるわよ」

「2回はないわよ。絶対に決めるわ」

「喜美、行きますよ」


織火の言葉で再び開始される。


織火からボールをもぎ取るようにして奪い、中に突っ込んでいく。


そこにイリヤが体を張って止めに来た。


自分の体を壁として、私の突進を受け止める。


チラッと時計が見えた。


練習終了の時刻だった。


「練習時間30分伸ばすわよ!」

「「「「押忍ッ!」」」」


声を出したその隙をついてスピンムーブでイリヤを抜き去り決めて見せた。

練習中は仲良しになる蓮里メンバー


いつも仲が悪くても、試合中のコンビネーションは完璧です。



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