修羅場の兄妹
そんなの私の
お兄ちゃんじゃない
配点
sideイリヤ
へぇ……ほぉ……そう……
うん。大丈夫だよ。
ぜんぜん気にしてない。
そういえば修学旅行の時に咲と壮がイイ感じになってたよね。
でも壮が私以外に靡くわけがないしね。
そうだよぉ。
ぜんぜん平気だよぉ?
「イリヤ!イリヤ!無理しないで!コーチの腕がメキメキって言ってる逝ってる!」
沙耶が何か言うけど気にしない。
咲が壮を見つける。
「壮、来て」
そして壮に手を差し出す。
周りの先生たちはガックリと膝をついている。
「えーっと……いいのか?俺が行くのはありなのか?イリヤ?」
「知らない」
メキメキゴバベキッ!
「イリヤ!なんか今ヤバイ音しなかった!?ねぇ!」
沙耶も煩いなぁ。
「いいよ、壮。行ってきたら?」
「え?いいの?」
「どうせアトラクションだしね。それに壮なら準教員みたいなものだから大丈夫でしょ」
「イリヤ……なんて優しい子なんだ!」
「えへへ」
壮に抱きつかれてちょっと満足。
もう、しょうがないなぁ。
「よしよし。それじゃあ壮、ゴー!」
「おうっ!」
壮はダッシュで咲のところに行くと、そのまま咲と手をつないで走る。
咲の騒ぎのせいで順位は3位に落ちていた。
でも、アンカーにはウチの頼れる姉御がいるのだ。
「フフフ、兄さん連れてくるとかどういうつもりよ咲。私に本気出せってことね?そうよね!?出しちゃうわよ本気!」
「喜美、お願い」
壮と走れるということでテンション上がった喜美が一気に走り出す。
というか旦那は引継ぎなんだね。
……気にしてないよー。
壮と喜美が一緒に仲良く走ってても気にしないよー。
だって兄妹だもんね。
兄妹だもんねー。
「イリヤ。目の前の椅子を殴り壊すのはやめよ?その席の男子が泣いてるから」
「そんなー。沙耶、少し叩いているだけじゃん」
しかしまだ最後の障害が来ていない。
人生における最後の障害?
何だろう。
病気かな?
死かな?
「あぁっと!ここでまさかの破局の危機ーッ!両親の再現になってしまのかッ!?」
本当に考えたくもないような試練を用意してくるね学校側ッ!
私と壮が離婚……離婚……
「ありえない!」
「何が!?」
思わず叫んでしまった。
離婚なんてありえない。
この運命のような私たちが離婚なんて……
あれ?
喜美はどういう反応になるんだろ?
「兄さん……どういうことなの!?」
「俺が聞きたいわッ!」
トップに躍り出た喜美と壮だったが、再び遅れていた。
他のみんなは縋りつく夫を蹴飛ばして走り出している。
これ男のほう踏んだり蹴ったりじゃないかな。
「臭い……他の女の匂いがする……」
「喜美……?」
「これは誰?兄さん。私に黙って他の女に会っていた、そんなわけないわよね!兄さん!」
「い、いや、これは……違うんだ……」
「何が違うって言うの!ごまかさないでよ!ア、アンタは兄さんじゃない!私の兄さんはそんなことしない!」
「喜美!待ってくれ!」
「嫌ッ!来ないでよ偽者!アンタなんか兄さんじゃない!私の兄さんをどこにやったのよ!返せッ!返せええええええええぇぇ!!」
「うわあああああぁぁ!」
喜美が壮を刺した。
いつも所持している短刀で、見事に腹に突き刺した。
というか怖ッ!
リアル修羅場怖ッ!
リアルヤンデレ怖ッ!
他のみんなも、競技者もその迫力に圧倒されていた。
喜美が壮の腹から短刀を引き抜いて笑う。
「フフフ……フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ!!」
「「「「「ぎゃああああああああああ!!」」」」」
暴走した喜美が無差別に競技者を襲い始め、みんなが逃げ惑っているウチに失格となり、結局喜美が1位になったのだった。
昼休み
「マジで刺す馬鹿がいるかッ!」
「兄さん。演劇で大切なのはリアリティーなのよ」
「いや、マジでリアルはすごかったよ。ホントに怖かった……あれが修羅場なんだね」
私はさっきのことを思い返して冷や汗をかく。
こんな人が私の義妹かぁ。
「フフフ、安心なさい。峰打ちよ」
「なってねえよ!サックリ突き刺さったよ!」
しかし喜美も人を刺しなれているようで、壮も刺されなれているようで、かなり軽症で済んでいた。
「フフッ……壮、絶対にイリヤは離婚しないからね?」
「嬉しいよイリヤ。俺も絶対にイリヤを離さないからな!」
「えへへ」
私と壮はああならずに済みそうだ。
「あ、父さんと母さんのバトルが終わったみたい。ちょっと見てくるわ。場合によっては集中治療室送りだし」
と、壮がお義父様とお義母様を見に行った。
壮が行ってしまったので、このタイミングとばかりに私はトイレに行くことにした。
喜美と沙耶も一緒にどこかへ行くみたいだし、咲は先にどこかへフラフラ出かけていった。
「あっれ!?私お留守番ですか!?」
「お願いねー」
「頼んだわよ、織火」
「弁当食べてていいから」
「いやですよ虚しい!」
と、笑って分かれてトイレを目指す。
と、トイレのほうに咲がいた。
「あ、咲!」
「イリヤ」
咲は今気づいたとばかりに顔を上げる。
「イリヤ、壮は?」
「壮?お義父様とお義母様を見に行ったよ」
「フーン」
「あれ?気になるの?」
「壮に感想を聞きたかった」
「フフッ、きっと褒めてくれるよ。咲、大活躍だったしね」
そのときの私は浮かれていた。
壮がお父様への挨拶を成功させて、婚約、結婚の実現に一歩近づいた。
まだ最大の関門は残っているけれど、それも唯一になった。
だからそのときの私は浮かれていたんだと思う。
「へぇ。何それ」
だから、咲の声色が冷たくなっていることに気づかなかった。
「だって咲が壮を相手に選んだから、喜美があれだけの演技ができたわけだし。あ、でも普通に先生だったら喜美が蹴飛ばして終わりだったのかな?どっちにしろ私たちの勝ち」
「何、その上から目線」
私はその時ようやく気づいた。
咲が私を睨み付けていることに。
「いいね。イリヤ。そんなに壮、壮って。まるで自分のものみたいに」
「そ、そんなつもりはないよ?咲」
「さぞ嬉しいだろうね、イリヤ。彼氏を他人に自慢するってどんな気分?」
「あ……ごめん、咲。自慢してたわけじゃないの。ただ」
「ただ、何?何、その余裕ありげな態度」
咲の言葉にどんどん怨嗟が詰まってくる。
「そういうイリヤ、ホントにムカつく。大嫌い」
咲に正面からそう言われた。
咲は言葉数は少ないかわりに、言うことは絶対に嘘じゃない。
いつだって本気のことしか言わない。
なら、今のこの言葉。
この言葉を言ってしまうような心境とは?
「イリヤはいいよね。壮に愛されてるから」
「さ、咲?ゴメン、どこか気に障った?」
「何もしてないくせに、壮に愛される。いいね」
「……咲?」
咲の言葉にドンドンどす黒いものが混じり始める。
「何でイリヤなの……なんで私じゃないの……」
「咲……ごめん」
「私は!私はこんなに頑張って愛しているのに……勇気を振り絞って壮を呼んだのに!イリヤには、そんなことしないでも駆けつけてくれるよね」
咲の目ははっきりと物語っていた。
アンタが憎い、と。
「いいよね、イリヤは。銀髪ってだけで壮に愛してもらえて。あーあ、ホントにいいね!」
「咲、それは……」
「何でイリヤなの!何で私じゃないの!私のほうが壮を何倍も愛しているのに」
「咲、私だって壮を愛しているよ?」
「壮に愛してもらって、でしょ?」
何が咲をここまで怒らせているのか。
呼んで、駆けつけてくれて、でもすぐに壮と分かれなければいけなくなったあのリレーだろうか?
あそこで咲の思いが爆発したのだろうか?
「ホントにムカつく。なんでイリヤなの?なんでイリヤなんかに……」
咲がこちらを睨み付けたまま近づいてくる。
「なんで私じゃないの……?」
それは私の心に響いてきた。
なんで、壮は私を愛しているんだろう?
どうして壮は、イリヤのためにここまでしてくれるんだろう?
咲はそのまま私の隣を通り過ぎていく。
振り返ることはなかった。
side喜美
「あらあら、修羅場ねぇ」
私が修羅場演技した直後にこれなの?
現実は小説より奇なりとはよく言ったものね。
「咲とイリヤの対決。あぁ、兄さんの取り合いね?」
「もう勝敗決しているじゃん」
「フフフまだわからないわよ?」
しかし、と修羅場に目を向けて思う。
学校の屋上にいる私たちからは丸見えだ。
「私としてはイリヤに負けて欲しいわね」
「そりゃどうして?」
「言っておくけどね、私は兄さんとイリヤの婚約に反対なのよ?」
「え?そうなの!?」
「イリヤなんかじゃあ兄さんに釣り合わないわ」
「ああ、あくまでコーチが主体なわけね」
「ええ、こういうのは本人の意向が重要になるわけだから、口出ししないけれど」
「私はどうでもいいけどなー」
「ぶれないわねぇ、アンタは」
「一本筋が通ってるって言いな」
「そうね。アンタのほうがよっぽどいい女だわ」
「でもまぁ、全国大会を3ヵ月後に控えてこの仲間割れか。大丈夫?」
「沙耶、少年漫画の法則は知っているでしょう?」
「殴って仲良しって奴?」
「私たちはちょうどその殴っての期間にいると思うのよね」
「そうなのかしら」
「これも一種の試練って奴かもね。ここからまたケミストリーを上げていくことができるかどうか……」
寝ながら書いたので無茶苦茶になっているかもしれません。
オリンピック始まりましたね。
アメリカのバスケは反則だと思うんだ。
入場行進で確認したのは、レブロン、デュラント、ウェストブルク、コービー。
NBAの得点ランキング上位5位以内にどうやって勝てと?
これでたぶんハワードとか出てるんだろ?
隙がない……
やれるならスペイン。
ガソル、ジノビリ、ラブ。
いやぁ、無理か




