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辺境の訪問者

この人どうして

逮捕されないんですか

配点(だって主人公だし)

「よし!今日の練習はここまでだ!」


俺は元気よく声を上げる。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「うーん?どうした?」


現在、子供は寝る時間夜9時。


今日はウェイトの日ではないのでこの時間まで練習していた。


リビングデッドと化したみんなを体育館から搬出して鍵を締める。


「うぅ・・・・・・」


喜美が呻く。

他のみんなも復活し始めた。


オーバートレーニングではない。

そう。きっとそう。


これでもきちんと考えているのだ。


しばらくぶっ倒れて白目剥いている5人を見ていたら電話がかかってきた。


「あ、沢木か?」

「健二か。どうした?こんな時間に」


織火がありえないものを見たような目でこちらを見る。

なんだ?夜9時に電話がかかってくるなんて珍しいだろ。


「ああ。沢木、栄光女学院って知っているか?」

「ああ、あの人格破綻育成校か。女子校で初等部から高等部とかいつの時代だよ。確かスポーツも強いんだっけ?」

「よく知ってるな。実はそこと合同練習できることになったんだ」

「へぇ」


自慢かこの野郎?


「それでもう1校招待してもいいって言われたから蓮里はどうかなぁと」

「ありがとう心の友よ!」


持つべきは友達だねひゃっほう!


「詳しい日程とかは今日中にメールできると思うから」

「ああ。頼む。サンキュー」

「いいって。こっちもまた喜美達とやりたいし」


もう前のこいつらと思って戦わないほうがいいと思うが。


しかしそれを口にすることはせずに俺は電話を切った。


「なんの電話だったの?兄さん」

「ああ、次の練習試合が決定した」


夜9時の小学校に歓声が響き、校長に見つかって怒られた。




で、7月23日朝4時。

俺たちの姿が駅にあった。


健二から誘われた後に、一応向こうの顧問の人にお願いしたらちょっと渋られたけどOK出された。


なんか3泊4日をキャンプで過ごすことになるらしいがそれもそれで楽しい。


俺があの沢木壮だとは知られていたようで、そのおかげで交渉が有利に進んだ感はあった。

ありがとう中学の時の俺。


俺がしっかり監督をするという条件で蓮里は保護者の同伴無しでの外泊に向かっていた。


「フフフ、こんな朝っぱらから電車とか何考えているの兄さん?」

「いや、だって山奥だし。田舎だし。駅から遠いし」


調べてみたらこれがまた辺鄙な場所にあるのだ。

監獄か何かかと思ってしまう。


今日の俺たちは珍しく私服だった。


みんな学校がある日も、土日の練習の日も、ウェイトが終わった後に飯を食べるときも練習着を着ているので、本格的な私服というのは始めて見た。


喜美は家では和服を好んで着るので洋服とは言いがたい。


やっぱり1番はイリヤだ。


真っ白なワンピースに少し明るい紫色。


イリヤの気品を引き立てている。聞けばお母さんに選んでもらったのだという。


「ありがとーう!イリヤのお母さん!いや!お義母さん!」


俺は駅で叫び、駅員に連行され、理由を話してイリヤを紹介すると感涙むせび泣いて釈放してくれた。


「がんばれよ!同士!」

「同士よ、社会に負けるな」


駅員2人に応援されて俺たちは列車に乗り込んだ。


向かい合う形の4人乗り。


俺たちは6人なので3、3で分かれることになった。

どうせこの時間だから乗客も少ない。


俺はイリヤと一緒になることを主張して、同時に喜美を監視下においておきたかったので喜美は俺の前に座らせることにした。


だからもう一方は織火と咲と沙耶。


織火が上手くまとめてくれるだろう。


栄光まではとにかく遠い。寝て過ごそうかと思ったけど寝過ごしたら洒落にならない。


俺だけはおきていなくてはいけないのだ。


ここは1つ、頭を使う遊びをしたい。


「お兄さん、麻雀やりませんか?」


と、織火が誘ってくれて俺、咲、織火、イリヤで打つことになった。


ちなみに喜美を入れなかったのは、喜美を入れてしまえば間違いなく連続天和で俺たちが即死することがわかっていたからだ。


喜美は正月のお年玉争奪麻雀戦で半荘に1度は天和を上がってくる。


豪運が服を着て麻雀しているようなものだった。


「通らばリーチ!」

「通らないね。ロン!清一だな。ドンマイ!」


そんなことをして俺たちは時間を潰すのだった。




「田舎だあああああああああああああああ!!」


到着して沙耶が叫ぶ。

心からの叫び。


うるさい、と沙耶に言うことはできない。


だってここ、田舎という概念そのまま抽出して結晶させて作り出した空間ではないのかと疑うほどに田舎だった。


「で、ここからどうするの?兄さん」

「ああ、バスが来るはずだ。たしかそろそろ……」


とか言っていたらバスが来た。


「バスがあってよかったねー、お兄ちゃん」

「っていうかないと誰も栄光行けないよね」

「どれくらいかかるの?」

「調べたら40分くらいかかるらしいぜ」

「えー、次はー栄光女学院ー栄光女学院。終点です」

「他にバス停ねぇのかよ!」


現在朝8時。おはようございます。沢木壮です。


早く着きすぎました。


いいんだよ。俺は時間を守る男沢木壮。


練習試合で遅刻とかありえない。

どんな理由でもってもありえない。

そんな奴らやる気が無いとみなされて何もさせてもらえなくても文句を言える立場ではない。


それにしても西条の奴らはどこにいるんだろうな?

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