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蓮里小学校女子バスケットボール部  作者: ジェイソン
ウィンターカップ編
169/251

舞い上がり場の咆哮者

どこまでの決着を望むのか

その答えを見せよう

配点(決着)

side壮


3点差……だッ!


「っしゃああああ!よくやった沢木!」


「ナイッシュ!」


「流石だッ!」


横浜羽沢がタイムアウトを取った。







sideリール


「ここで気を引き締めなさい!相手は死ぬ気で3pプレイを狙うわ!抜かれても構わない!内に入られたら決めさせなさい!」


「「「「「押忍!」」」」」


「ファールだけはするんじゃないわよ!」


「「「「「押忍!」」」」」







side小野寺


「相手は3pプレイだけを警戒するだろうな」


「ああ」


「そのうえで3pを決めないといけないわけだ」


「ま、そうなるな」


「……小野寺、任せるぜ」


「先輩、託します」


「決めてください部長」


「お願いします。キャプテン」


「……任しておけ」







side壮


「三木、俺と交代だ。俺が小野寺を止める」


「じゃあ俺が宮澤か?」


「ああ、宮澤に3pってのはないと思うが気をつけろ」


「押忍」


「とにかく神代と小野寺だけを警戒してください」


「「「「「押忍」」」」」


打つのはこの2人のうちどちらかで決まりだろう。


相手に警戒されても決められる。


それがエースなのだから。





side琴美


「しゃあああああっ!絶対に止めるッ!!」


植松が吠えながらコートに出る。


対する横浜羽沢は静かだった。


スローインから試合が再開する。


投げ入れるのは宮澤。


そして入るのは当然、


「小野寺やね」


小野寺がボールを持つ。


まだ3pラインまでも遠い。


しかし壮はその時点から思いっ切りくっついて3pを打たせないようにディフェンスしていた。


2pは決められてもいい、でも3pは絶対にダメゆうことやな。


「それでも決めるんがエースや」


小野寺と沢木の1対1。


日本バスケット界の頂上決戦かもしれない。


小野寺が背を丸めてドリブルを続ける。


ステップを踏み、軽く横に移動している。


と、小野寺が背中を壮にぶつけた。


「ターンアラウンドを狙うか。私もそうやるやろうけど……」


背中で壮を押して、空間を作ろうとする。


だが壮もそれに抵抗する。


3pだけは決めさせるわけにはいかないのだ。


と、小野寺が唐突に左足を軸に体を回転させた。


「対応ッ!!」


リールの指示に壮の体が動いた。


踏ん張って強張った状態から一瞬で切り替えて塞ぎに行ったのだ。


だが壮の表情が険しい。


「フェイク!?」


小野寺のそれはフェイクだった。


小野寺がそこから再び左足を軸に体を戻すと、今度は右足を軸に回転する。


体2つ分が開いた。


今度こそ小野寺は飛ぶ。


しかも、


「クソが……!」


反応した三木のブロックをかわすために後ろ向きに飛んだのだ。


ターンのフェイクからの逆ターンアラウンドフェイダウェイショット。


まともな平衡感覚ではないだろう。


しかもあの角度なら三木の腕がリングを隠していたはずだ。


三木はそのように腕を動かしたのだから。


それでもシュートは確実に放たれて、


「~~~ッ!!」


小野寺の声にならない咆哮が上がる。


同点の3pシュートが決まった。







side喜美


『何と言うことだあああぁ!ここで小野寺、3pショットを決めた!?強い!強すぎる!これこそまさに頼れる絶対エースッ!!』


「お兄さん……」


「壮……」


全員の表情が一様に険しくなる。


あのショットは、似ている。


アルが最後に決めたショットに似ている。


完全に警戒されている状態からの強引なショット。


違うのは表情1つ変えないアルと吠えた小野寺くらいか。


私としてはあの無表情が恐ろしかったのだが……


「浦話はあと12秒で決めないとオーバータイムだね」


「オーバータイム……厳しいわね。もう体力切れかけでしょ?」


「少なくとも植松、島田は持ちそうにない」


「控えの差がでますね……」


「12秒で決めるしかないわ」


私は繰り返す。


『さぁ浦話高校、ここで最後のタイムアウトを使った!ここが勝負所だ!』






sideリール


「見なさい!私を見なさい全員ッ!」


「「「「「押忍!」」」」」


「説明するわ、よく聞きなさい!」


「「「「「押忍!」」」」」


「ここ、高めで壮にボールを渡しなさい!それで、ここでスクリーンぶつけて壮を一瞬フリーにさせるわ!壮!決めなさい!」


「押忍ッ!」


「このチームならやれるわ!観客は全員アンタ達の勝ちを望んでいるわ!」


「「「「「押忍ッ!」」」」」


「ファンを!仲間を!そして自分自身を失望させるなッ!」


「「「「「オオオォォ忍!」」」」」







side小野寺


「浦話は絶対沢木にボールを持たせるはずだ。意地でも止めるしかない」


「ダブルチームっすか?」


「いや、そしたら他のが決める。素直にマッチアップで止めるべきだ。どうですか、監督」


「俺もそう思う。この一本止めれば勝ちはウチに来る」


「「「「「うっす」」」」」


「この2年半、全てこの時のためと思え」


「「「「「おう!」」」」」


「勝つぞ」


「「「「「おう!」」」」」






side壮


気合い、熱気、努力。


今までの全てを此花咲夜に代理で奏上。


そして、今からの戦いを奉納。


我に加護を与えよ、八百万の神よ。


勝つのは俺で決まりだ。


「ヘイ!」


スローインから再開。


島田先輩から俺にパスが通った。


「ふぅ……」


そこからカウントダウンが開始される。


11、10


「行くぜ、1対1だ」


「最後だ。これで勝った方が勝ち、恨みっこなしだぜ?」


言いながら隙を探す。


ない。


だったら、


「作ればいいだろッ!」


目線を飛ばし、ドリブルのペースを変えて、ステップフェイクを踏む。


「行かせるかよ!」


7、6……!


植松が手を挙げる。


1回戻すのもアリかもしれない。


しかし、


そういう流れじゃねぇよなぁ。


思い、一瞬間を空けた。


「む?」


何度も見覚えた独特の間だ。


これを止めるのは至難の技だろう。


何せ、俺の嫁の間なのだから。


「貰いッ!」


「まだ……だッ!」


一瞬体が強張り、動かなくなった隙を縫って俺は飛び上がる。


3pラインより後ろで、目の前に巨大な壁はいる。


しかし、


絶対に入る……!


見ておけよイリヤ。


お前のシュートは、試合を決めることができんだよ!


小野寺の腕がなおも上がる。


俺の視界を完全に覆った。


この距離、この角度。


今まで何本打ってきたと思ってんだ。


目をつぶっても決めてやるよ……!


小野寺の足が瞬発する。


ありえない態勢から飛び上がった。


最後の最後までよく粘るヤツだ!


だが、遅かったな。


俺の手からはすでにボールが放たれていた。


ボールをリリースした瞬間の姿勢を保ったまま、そのボールの、そして試合の行く先を見る。


全員が俺が放ったボールを見ていた。


ボールは正確な弧を描いて、落下を始める。


リリースした瞬間の状態、右手の手首を返した状態の拳を握りしめる。


そのまま思い切り腕を振り上げて、


「っしゃああああああぁぁぁ!!」


全力で振り下ろし、咆哮した。







side琴美


「決まり、か。ホンマにクラッチタイムの壮は化け物やなぁ」


周りの観客が全員吠えている中で、私は冷静だった。


「最後のシュート……なんか見覚えあるなぁ。ホンマ、仲がよろしいことで」


試合が終わればここにいる意味はない。


さっさと知佳の試合見に行かなあかんしなー






sideイリヤ


『決まったあああぁぁ!残り1秒で劇的な決勝弾!浦話のスーパールーキー、沢木壮が試合を決めました!』


「よっしゃあああ!やりました!やりましたよ喜美!」


「ええ、そうね。ま、兄さんなら勝つわよ」


「すごい……さすがコーチ!流石ッ!!」


「壮……強いね……」


皆が吠える中で、私は冷静だった。


最後のシュート、私の間の取り方とそっくりだったね。


無意識にか、意識的にか。


ま、どっちにしろ。


「流石だよ、壮」

本当はもっと長かったのですが、書ききって送信した瞬間にネットの接続が切れて全てが終わりました。


流石に書き直す元気はありませんでした。


畜生……壮と小野寺の対談とか超書いたのに……


また今度元気があるときに回想という形でいれようと思います。


次回から年末年始編ですね

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