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蓮里小学校女子バスケットボール部  作者: ジェイソン
ウィンターカップ編
164/251

修行場の舞踏者達

何故人は

今の己を

峰とする

配点(現状満足)

side京香


「じゃあ俺が行くか」


「おぅ、頼む」


試合は3Qに入っていた。


ここまで浦話が圧倒的なランを見せている。


壮君抜きでこの点差だ。


ほとんどをインサイドで取っていた。


ビッグ3をほとんど使っていないのだ。


前田や川口、控えの松丸や真田が取っている。


そしてそれが今、壮君にボールを渡した。


壮君がそのボールを片手で掴み、前を見据える。


空気が、変わった。


一気に張り詰めたものになる。


壮君がその場でドリブルを開始する。


股下を通し、ドリブルのペースを変えていく。


そして、


「そいじゃ」


強烈な1歩目をぶち込んだ。


フェイクなど何もない。


純粋に身体能力任せのドライブだ。


そしてそれを止められる者はいなかった。


一瞬でマッチアップ相手を置き去りにして、ヘルプで寄った相手をスピンムーブで抜き去る。


そのまま飛び上がって、


「ッサア!」


ダンクを決めてしまう。


全て1人だった。


強すぎる……


軽々とそれらをやってのけたのだ。


相手のトンファーが折れるのはもはや必然であった。


浦話144ー56松前







side喜美


「寄越してッ!」


私が覚醒した次の日の練習。


始まりから全力だった。


今まで私に合わせて力を落としていた琴美が本気を出し始めたからだ。


「3p警戒ッ!」


「でも入るんやなぁ」


琴美が言った通りだ。


私の素早いマッチアップにも関わらず琴美はアッサリと3pを決めてしまった。


再度の逆転を許してしまう。


「みんな、ちょっとパターン変えます」


そこに美紗がサインを出しながらそう言ってきた。


「パターンを変える?」


「えぇ、ちょっとトリッキータイプで行きます。今からテンション変えるんでちょっと待ってください」


美紗が目をつぶり、


「っしゃあテメェら行くぞオラァ!あぁ?んだその顔はシャキッとせんかいシャキッと!こうブチュッと!ヌチャッと……ヌチャッとって擬音語エロくないですかねぇ!?というわけでそこの喜美!エロく聞こえる擬音語どうぞッ!」


「クチュクチュ」


「合格ッ!!」


美紗が狂って、同時に走り出した。


楓がチェンジで、とサインを出しているが控えはいないのでどうしようもない。


「はい止めてみやがれそこのテメェ!私の熱いダイブを受け止めてッ!」


美紗がドリブル途中で飛び上がった。


本気で相手にダイブしに行ったのだ。


相手はビビりながらもその場に止まる。


そこに美紗が空中でパスを出そうとした。


並走していた知美への速いチェストパスだ。


止まった相手はそれを警戒し、少し知美のほうを警戒する。


美紗はそこで動きを変えた。


出そうとした腕を強引に制止して、右手1本でボールを掴む。


そしてそのまま空中で背中を通すパスをやってのけた。


「ビハインド!?」


「合わせろ喜美ィ!」


相手の驚愕の声を押し潰すように美紗が叫ぶ。


言われなくても。


バウンドして私の目の前に浮いたボールを地面にたたき付ける。


同時に感覚を合わせる。


体が動き出す。ボールをつかみ取り、1歩、2歩。


そして踏み切る。


このままダンクで叩き込む……!


「させへんッ!」


「嘘ッ!?」


私とリングの間に琴美の腕が伸びて、私のダンクを弾いた。


「ダンクをブロック!?できんの!?」


「現実見ぃや」


知美の驚愕を余所にボールは浮く。


そしてそこに美紗と相手のフォワードが同時に飛び込んだ。


「そっち!」


美紗がボールをギリギリで触れる。


そしてキャッチするのではなく、それを弾いた。


「あかん!楓や!」


「遅ぇよ」


ボールの飛んだ先に楓がいる。


チームメイトならではの完璧な連携。


「これでトドメ……だッ!」


ボールが楓の手から離れる。


そしてボールが空中にある時にブザーが鳴った。


……これが、兄さんの言う神様頼みってヤツなのかしら?


そんなことをふと思う。


そういえば今兄さん、どうしているのかしら。


戦っているのでしょうね。


応援に行こうかしら?


……いえ、いいわ。


兄さんが優勝することは決定事項だ。


なら、応援に行く意味はない。


先に帰って、兄さんのために出迎えの準備をするのができた妹という奴だろう。


ええ、別に面倒だからだとか、お金がないからじゃないわよ?


ええ、それも理由の1つだけれど。


ま、とりあえず


スパンッ!と音を立てて決まったシュートを見て思う。


私は胸を張って兄さんを出迎えられそうね。







sideイリヤ


「速い……!」


「これが私の強さだからねッ!」


健二にドライブで突進する。


体ごと当てに行くような激しいプレイだ。


「させる……か!」


健二はそれを必死で押し止めようとする。


私はその動きを利用した。


体をすべて健二に預けたのだ。


体重をかける。


私の全体重だ。


さすがの健二も体が揺れる。


そのタイミングを狙って一気に体を引いた。


健二と私の間に空間が広がる。


その空間を利用して私はシュートを放つ。


ミドルレンジですらない、すぐそこのリングへのシュートだ。


外すわけもなかった。


「はぁ……はぁ……かなり力を上げたね……イリヤ……」


「私なら当然のプレイだよ」


でも、


「調子は良くなったかな。後は……」


後は、試合を動かすシュートを決められるかどうか。


私はそこに懸かっている。


「そこは壮に習うべきだな。アイツのクラッチタイムでの勝負強さは神懸かりだぜ」


「そうだね……」


言われて考える。


そういえば今壮はウィンターカップだったよね。


私は隣で休憩する咲を見る。


「咲、咲は壮のところ行くの?」


「行かない。待ってる」


「そっか、じゃあ一緒に待ってよっか」


「応援、行かないのか?」


驚いたように健二が聞いてくる。


「壮は優勝して帰ってくるからね。パーティーの準備をしておかないとね」


「イエス」


咲と一緒に親指を上げる。


「ま、織火のほうに合流しようかなぁ」


「私は沙耶の様子を見てくる」


それぞれやることは決まった。


「そっか。じゃあ頑張って、全国。応援行くからさ」


「うん。ありがとう健二。それに雪、奈々子、美奈。助かったよ」


「サンクス」


「いいって。それより勝ってこいよ」


「私達に勝ったんだからね」


「全国制覇が夢でしょう?」


言ってくれる3人がありがたい。


いい友人を持ったね。


それじゃあ、と別れを告げて私達は元の場所に帰る。


気持ちは切り替わった。


後は、戦うだけだ。







side沙耶


「喰らえ……ネロアタック!」


「ぐ……!」


部長の強烈なパワードリブル。


そもそも男子高校生と女子小学生では出力が違う。


一気に押される。


その力の差をひっくり返すのが技術だ。


私はそれをひたすら叩き込まれてきた。


今こそ、それを見せる時。


「ぐぅ……おおおおおおぉ!!」


無理に受け止めるのではなく、誘導していく。


最終的にシュートを止めれればいい。


部長はこのまま押し込んで振り向き様のショットを放つ。


そこを私の制御下に置けばいい。


「貰ったッ!コーカンドハンシュートッ!」


「そこ!」


部長は私が軽く体を引いた瞬間を狙って振り向き様のショットを放つ。


それは完全に予想通りだった。


「神風ブロック!」


「馬鹿なッ!?」


そしてついに、特訓期間中初となるブロックを決めた。


ボールが部長の手から離れた瞬間をひっぱたいてぶっ飛ばした。


「……俺の世界史ショットが止められただと?」


「部長……部長は世界を見すぎて、日本を疎かにしていたんだよ……」


「馬鹿な……フッ、そうか。俺も現代ゆとり教育の罠に嵌まっていたのか……松永久秀も知らなかったんだ。当然か……」


そこまで言って2人で顔を見合わせて頷く。


「よくやった沙耶!今の俺は本気だったのにな!」


「知ってるわよ、部長が手加減できないことくらい」


「いやぁ、ホントによくやった。もう俺に教えられることはないぜ。俺を止められるんだったらこの先、同世代にお前の相手はいねぇよ」


「私が日本一?」


「それを証明してこい、沙耶」


部長に頭に手を置かれる。


「お前は俺の自慢の教え子だ。全国に見せ付けてこい」


「押忍」


部長に一礼する。


「御指南忝ない……!」


こうして私の特訓は終了した。


「沙耶ー!」


そして2人だけの体育館から出ようとしたところで咲が来た。


「咲?どうしたの?」


「こっちの練習は終わったから。そっちがどうなっているかって」


「心配してくれたの?ありがと。大丈夫よ」


「そっか……で、」


「うん?」


「……受験生が何やってんの?」


半目で咲が問うと部長が膝から屈した。


「俺だってセンター演習やりたかったんだよおおおおぉ!!」


受験生の魂の慟哭が浦話中に響き渡った。

最近寝オチが多発しています。


死んだようにグッスリ眠れます。


朝起きると死ぬほど疲れてます。


俺の生活これでいいのかな……

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