西国の訪問者達
昨日の敵は今日の味方
今日の味方は明日の友
配点(旧敵)
side壮
「……壮、着いたわよ?」
「うん?」
何やらユサユサと揺すられて俺は起き上がる。
「……ああ、ウィンターカップか」
「そこ忘れたらダメでしょう」
知佳の電話からの俺のコーチとしてのダメさ加減の反省をしていたからあんま寝てないんだよな。
なんてことをリールに言いはしない。
じゃあ何を言おうか。
そうだ。
女の子にはおっぱいか服の話が1番なんだー。
寝ぼけた頭でそう思考する。
さて、おっぱいか、服か。
それが問題だ。
でもおっぱいのことを言ったら織火や知美みたいに発狂するのがいるからなぁ。
よし。
服のことを話そう。
「リール、可愛い服だな」
sideリール
「え?」
私は言われて自分の服を見る。
昨日に桜に相談して決めた服だ。
白のワンピースに黒のジャケット。
どちらもリボンやフリルのついた可愛らしいものだ。
私に似合うかと気になったが桜が似合うよーうんとか言ってたから似合っているのだろう。
それを褒めてもらえた。
「う……うん、ありがとう」
ぬおおおおお!
なんかもっと気の利いた言葉返しなさいよ私ッ!
「何よ壮服を褒めれば女の子喜ぶとか思ってんの甘いわ甘すぎるわイチゴサンデーに砂糖1キロ振りかけてんのかオラァ!」
何言ってんのよ私ッ!
気が利きすぎよ!
「ああ、悪い悪い。確かに甘かったなー。それじゃとりあえずホテル行くか、うん」
しかし壮は気にした様子もない。
そういえばイリヤもナチュラルに口が悪かった。
慣れているのだろう。
ありがたいような、壮がイリヤの色に染め上げられているような、複雑な心境であった。
sideイリヤ
「……ねぇ、イリヤ」
「何、お母様」
「壮君の応援、行かなくてよかったの?」
「今そんな気分じゃない」
私は自分の部屋で布団に包まってゴロゴロしていた。
どうやって活力を出せと言うのだ。
「でも壮君、寂しそうな顔してたわ……ねぇ、行ってあげたら?」
「そんな気分じゃないって言ってるでしょ!もう放っておいてよ!」
「……」
ああもう最悪だ。
私はさらに布団に潜る。
顔を合わせられない。
こんな泣きじゃくった顔で壮と会えるわけないじゃん。
目からはとめどなく涙がこぼれて来る。
赤の目が充血して真っ赤に染まっている。
昨日帰ってきて風呂にも入らず布団に飛び込んだために体臭酷いわ髪グシャグシャだわともう最悪だ。
こんなので会えるわけないでしょ……
失望させた。
壮を失望させてしまっただろう。
蓮里を負けさせたのは私だ。
喜美じゃない。
喜美は最後のギリギリの場面でぴったりアルにマークされながらシュートを打った。
私は違う。
フリーの状態でボールをもらい、シュートを打って、アルに弾かれた。
油断していた。
アルがあの距離を1歩で詰めて来ることはビデオで見て知っていた。
それなのにあの場面、私は目前に迫った優勝に油断していた。
あの場面で私が決めていれば最悪でもオーバータイムに持ち込めていた。
私の油断のせいで蓮里が敗北した。
それがわからない壮ではない。
私のせいだと心のどこかで思っているだろう。
その壮と会うのは嫌だった。
壮の表情にお前のせいで、という色を見つけてしまうのが嫌だった。
「私ってホントに最低……」
どうしようもない。
ウジウジしてしまう私も、負けてしまったこともどうしようもない。
今頃壮はリールと一緒にウィンターカップに挑んでいる。
リールと、か……
奪われたらどうしよう。
アハハ、奪われちゃうかもね。
こんな私より、リールのほうがいいもんね。
可愛いし、綺麗だし、口も達者だし、強いし、私に勝ったし……
ああもうホントに最低だ、私。
side琴美
「……負けた理由か。ま、そんなとこや思っとったけどな」
私は肩をすくめて見せる。
「勝てへんやろな、とは思っとったわ」
「どうして?」
「ふむ……それは実際にやったほうがええやろ。5人、ウチの練習に来ぃな」
「いいの?いえ、そのつもりで来たのだけれど」
「当然、払うもん払ってもらおか」
「え?体?」
「んなもんいらんわッ!ビデオやビデオ!春沼のビデオや!持ってきとるんやろ?」
言うと喜美が着物の袖に手を突っ込んで、
「ああ、あるわよ」
「なんちゅうところに入れとるねん……」
しかし春沼のビデオは手に入れた。
春沼は結成したばかりのチームだ。
実はウチは春沼のビデオを1つも持っておらず、春沼の試合を1回も見たことがなかった。
これはありがたいな。
「待っててな。今からオッチャンに話つけるわ」
私はそう言って席を立つ。
そして廊下でオッチャンに電話をかけた。
「……というわけなんですけど。どうです?悪い取引やないと思いますけど」
「そらお前がええゆうとるんやからええやろ。それに喜美、楓、美紗、梨華やろ?ええやん。全国を想定した練習相手としては最高やろ」
「じゃあ明日からでええんですか?」
「ああ、構へんよ。連れて来たりな。あ、そや。宿はどうするんや?なんやったらウチ貸そか?」
「なんやホテルに泊まるみたいです。あとオッチャン、その台詞犯罪もんですよ」
「おっと。昨今厳しいからなぁ。注意せんと」
「それじゃ、明日頼みます」
「はいよー、じゃあな」
電話を切る。
「ええってよ。明日から練習来ぃな」
「ありがとう。それじゃ私達は今日はホテルに戻るわ」
「はいよー」
さて、とりあえずこのビデオ見るか。
アメリカの生んだ天才がどれほどのものか見せてもらおうではないか。
side楓
「しっかしまさかクリスマス前に大阪に来ることになるなんてな……」
予定なら今頃寮で部活もなくノンビリ過ごすはずだったのだが。
「まさか喜美からこんな誘いが来るとはね」
「感謝してるわよ。ホントに」
喜美に素直にそう言われたら何も言い返せない。
冬休みにはいってノンビリしていたところに電話が来た。
「私と一緒に大阪に来て頂戴」
切羽詰まった口調でそんなことを言われた。
美紗と梨華も一緒にということだった。
桐生院に行くのだろうな、と直感した。
というわけで私と美紗は栄光に来て初めてとなる外泊許可を貰って出掛けることになったのだ。
お金のほうは栄光に来てからお小遣が貯まる一方だったので大丈夫。
駅に着くと喜美と知美が待っていて、一緒に新幹線でここまで来た。
……いろいろ考えているんだろうなぁ。
喜美を見てそう思う。
新幹線の中などでは普通に話すのだが、どこか上の空だと思った。
もう負けてしまった私たちとは違って蓮里はもう1回春沼と戦うチャンスがある。
だから対策を取らなければいけない。
しかし対策を取るにも自分ではどうしようもない。
他人に指摘してもらうしかない。
そして喜美に指摘できるのはアルを除いて唯一喜美に勝った人間だけだ。
つまり、神童と呼ばれる彼女だけだった。
「ふぅ、やっと落ち着いたな」
喜美からの電話以来ずっとバタバタしていたのが、ホテルに戻ってようやく一息つけた。
知美も荷物を置いてグッタリしてる。
クリスマスくらい健二と過ごしたかっただろうに。
哀れ。
美紗は珍しそうに部屋の内装を見て回っている。
「それにしてもよくホテルの部屋なんて小学生だけで取れましたね」
「まぁ私たち、特に私と喜美の身長なんて大人より大きいしばれないかもだけど」
梨華がベッドで飛び跳ねながら言う。
床抜けるからやめろ。
「ちゃんと親に許可は取ってあったから電話されても平気だったけれどね」
喜美はこういうことに慣れているようだ。
昔から講演会とかで全国飛び回っていたんだろうからな。
「さて、それじゃあ」
と喜美が口火を切る。
「蓮里、栄光、西条3校合同対春沼対策会議。始めましょうか?」
「やっぱ最初の方、アルはドライブばっかだな」
「というかドライブしかしていませんね」
「本当だ……それでこんだけ得点重ねられるって……」
ビデオを見直して、アルの強さを再確認していく。
魔法のような空中での姿勢制御は天性の才能だ。
あれは練習でどうにかなるものでもない。
「蓮里もゾーンで守っていた。それでも抜かれたわ。切り裂かれたわね」
喜美も思い出すように言う。
そう、実際やった者としてはあの強さは悪夢だ。
僅かな目の配り方、足の運び方、息遣いまで。
何から何までを偽装して突っ込んでくる。
まず止められるものではない。
しかも仲間に頼ってパスを出すことも多いから厄介だ。
中に固まりすぎて外の桜にパスアウトとか、成功したらまず決められる。
「そして4Q、ここぞという場面で3pシュートを打ち始める、と」
美紗が早送りして4Qのラストまで持っていく。
アルがリールからの低く速いパスを空中でキャッチして、そのままぶん投げて決めていた。
……いや、これはどうしようもねぇだろ。
止めるとかそういうレベルじゃねぇだろ。
そしてその次のアルのプレイ。
リールからボールを受け取ってドリブルをしながら喜美と、3pラインに近づく。
今までドライブで抜かれ続けていることから喜美は警戒して少し後ろに下がっていた。
ここでアルは試合中ほとんど使っていなかったジャンパーを、しかも初の3pシュートをここで打った。
突然の奇襲に喜美は反応できない。
3pは見事にリングを射抜き、点差は1に詰まる。
そしてその次のアルのプレイ。
喜美についていたアルが1歩でイリヤの元に到達する。
そして手からボールが離れた瞬間にそれを弾いてしまった。
そこからの流れは一瞬だ。
千里と桜がリバウンドを死守して、メリルに渡り、メリルからリール、リールからアルへ。
そしてそのままアルがドライブかと思ったら、何と2歩下がって3pを打ったのだ。
この状況でその選択。
ビデオはそこで喜美によって止められた。
「ゴメン。ここから先は見たくないわ」
「うん」
「……そうですね」
私もその気持ちはよくわかる。
まだあの敗戦から時間が経っていない。
気持ちの整理をつけるのは難しいだろう。
「やっぱ問題は、アルが4Qから一気にプレイスタイルを変えてくるということだよな」
だから私はその空気を払拭するためにわざと話を逸らした。
「そうですね。頭でわかっていても体は徹底的に刷り込まれているでしょう」
知美も同意する。
「それはやっぱドライブを止められないからですよね。あのドライブを止めれれば前半から3pを引き出すことができるんじゃないですか?」
「美紗、あのドライブを止められると思うか?」
「……」
あの空中機動とマトモにやりあってはいけない。
壁を3枚くらい用意しても余裕で中を切り裂いていくのだから。
「何らかの絡め手で?」
「んなもんが効く相手とも思えねぇな……」
「体力は……ありますよね」
「だったら3pの危険がある4Qは寄って」
「あれ以上寄ったら簡単に抜かれるわ」
「ダブルチームで」
「フリーになれば他のプレイヤーが絶対決める。それが春沼の強さです」
「いっそファールしちまったらどうだ?」
「5人しかいない蓮里がファールをするのは致命的よ。ただでさえ春沼戦はギリギリなんだから」
「それにフリースローを落とすわけもないし」
「じゃあ……じゃあ……」
ひたすら話し合い、愕然とする。
「「「「「……勝てなくね?」」」」」
結論。
明日の琴美センパイに頼るしかなさそうです……
ロウきゅーぶ11巻読みました。
桜の決め台詞、言い訳は考えたかい?
がぱくられました。
……すいません。
マジですいません。
もう2度と生意気言いません。
この作品がロウきゅーぶのパクリみたいなものなのに生意気言ってマジすいません。
そして思ったこと。
主人公への誕生プレゼントの発想の違い。
ロウきゅーぶ 手作りの料理と編み物
蓮里 楓と百合子ちゃんの同人誌 バナナ ボルト
わぁ!外道ばっかだウチ!
そして試合内の技。
ロウきゅーぶ ターンアラウンド!?
蓮里 ああ、ターンアラウンドフェイダウェイショット?
いえ、もちろんウチが非現実的なだけです。
ザクさんのほうが遥かに上手いです。
マジで尊敬します。
彼のように流れるようなロリへの愛を書き連ねたい。
そして今回は名言がたくさんありました。
その中で最上級のもの。
ノー小学生 ノーライフ
度肝抜かれました。




