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蓮里小学校女子バスケットボール部  作者: ジェイソン
ウィンターカップ編
155/251

冬杯の集結者

当てにはならず

ただ期待ばかりが膨らむもの

配点(下馬評)

sideアル


「おはようございます、桜」


「あれ、アル。今日は早いね」


「桜が遅いのです。どうしたのですか?」


「あー、ちょっと恋する少女の人生相談を……」


恋する少女?


私以外にそのような人がいましたっけ?


「それでもアル、早いね。どうしたの?」


「ええ、今日からアメリカのほうに帰るので」


「今日なんだ?飛行機の時間は?」


「10時です」


「あら、でしたら私と一緒に空港まで行きます?」


そこに降りてきたメリルが声をかけてくる。


ふむ、断る理由も特にない。


いいでしょう。


「では一緒に行きましょうか」


「はい!」







「では行ってきます。大祐」


「しばらくお別れですわね。あー、清々しますわ!」


「……アル、メリル。そんなに俺にツッコミ入れて欲しいのか?」


「あ、もしもし。警察ですか?あ、はい。私です。えぇ、また大祐が……はい。よろしくお願いしまーす」


「ちょっと待てッ!?俺のいない間に話が一足飛びに進んでいないか!?」


「アハハ、大丈夫ですわ。手順踏もうと踏むまいと結果一緒ですから」


メリルと大祐、仲がいいですね……


「乙女にツッコミとかセクハラ以外の何物でもありませんわね」


「私以外にそのようなことを言うと犯罪ですよ、大祐」


「わかった。その糾弾は受け入れよう。それでも俺は言いたいことがある」


「そうですか、どうぞ」


「お前らは馬で空港まで行く気かッ!?」


大祐の言葉を受けて私は自分の乗っている愛馬を見る。


「……そうですが?」


「お前ら、それで県道も国道も走る気か?」


「……あぁ、そういえばマズイですね」


私は納得した。


「そうか。俺はアルが納得してくれるようになって嬉しいよ」


「ノーヘルでしたね」


「そこじゃねぇッ!」


「しかしヘルメットを被って馬に乗るというのもカッコ悪いですから」


「まぁ、不良ですわね、私たち」


「ええ、不良ですよメリル。ギザ不良です」


「もはやテラ不良ですわね!」


「……好きにしてください、アルさん」


そして私たちは馬で出掛けてそれぞれ故郷に帰った。


別に警察は来なかった。


むしろ私だとわかったようでしきりにサインを求められた。


「いやぁ、娘がバスケやっていまして」


「では、コレモ」


私は練習着などをプレゼントして日本を後にした。


さて、リールは上手くやっているでしょうか?






sideリール


バスの中はカオスだった。


「次ッ!前島!プリキュア歌いますッ!」


「「「「「押ー忍ッ!!」」」」」


「……これ何?」


「あぁ、カラオケ大会。声を出してストレス解消プラス体調を整えるという科学的に証明されたウォーミングアップなのだよ、リール君」


「……実際のところは?」


「いや、黙って兵庫とか耐えられないし」


「あっさちぶちまけたわね!」


「次!前田ッ!校歌歌いますッ!」


「「「「「押ー忍ッ!」」」」」


「こおおおおおしゃああああのおお!」


……歌ってるの?






私の突然の参加にも浦高は対応してくれた。


着いた時には


『リール様御歓迎』


なる言葉がロシア語でデカデカと書かれた横断幕が浦高の正門を覆っていた。


その隣に


『クリスマス討伐同盟参加者募集』


『クリスマスはモテない男への差別だ』


『クリスマスとバレンタインは悪習だ』


という言葉が何故か英語で書かれていた。


この時間にも生徒は登校していて、正門での


『近所のスーパーでチョコを買い込んでバレンタインで使わせないゾ』


募金が行われていた。


全員が500円以上を募金していた。


うん、聞いていたけれど狂ってるわね、この学校。


「あ、リール!こっちこっち!みんなに紹介するから!」


と壮に手を引かれてみんなの前に出される。


「あー、みんな。この子はリール。ロシアからの留学生で同世代ヨーロッパNo.1のポイントガードだ」


「「「「「おぉ!」」」」」


No.1という言葉に浦高生が反応した。


「なんか知佳の試合が見たいとかでウチのバスで行くことになったから」


「「「「「よろしくお願いしますッ!!」」」」」


男40人が一斉に膝に手を置いて礼をした。


「ほら、リール。なんか一言」


「え……お、お願いします」


知っているほぼ唯一の日本語を喋ってみる。


「「「「「オドオド系少女萌えええええぇぇ!!」」」」」


こんなのが日本一なんて日本は終わっていると思った瞬間だった。






「……」


「……」


で、バスの中。


ヤバいヤバい!


なんか言葉出てこないし!


どうしてよ!?


いつもなら立て板に水のレベルで雑言が飛び出すのに!


「え、えっと……」


「うん?どうした?」


「昨日は……私が勝ったのだけれど……」


ぬおおおおおおお!


何を言ってるの私はッ!?


何で決勝で敗北したコーチに試合の話してんの!?


完全に性格悪い女に思われるでしょう私ッ!


(いや、実際悪いから By千里)


完全に嫌われたわーヘヘヘ……みんなに偉そうに言っておきながらこの程度ってわけね……


「強いな、リールは」


しかし壮は優しくそう言ってくれた。


「さすがヨーロッパNo.1と言われてるだけはある」


どうやら嫌いになりはしなかったようだ。


「そんなことないわよ。実際あの試合ではイリヤに勝てなかったし……」


「ポジションの違いってのはあるだろ。リールはゲームメイクまで考慮しなければいけなかったんだし」


「でも、負けるのは悔しいのよ。それは負けた言い訳にはならないわ」


「それはわかるなぁ。俺も負けるの大っ嫌いだし」


「そうよね?そうよね!?」


「当たり前だろ。でもリールも負けず嫌いなんだなぁ。やっぱ強いヤツって負けず嫌いだよな」


「アハハ!」


うおおおおお!


よくやった私!


なんかいい雰囲気になってるよひゃっほう!






それから30分後。


「むにゃ……もう無理です。練習できません……」


「俺のミルクが飲めんのかオラァ……」


「かゆ……うま……」


「ぬるぽ……」


「ガッ……」


全員が爆睡していた。


ガキか、こいつらは。


壮も完全に眠っていた。


頭上の荷物置場で寝ている。


仕方なく私は買っていたバスケ雑誌を開くことにした。


大祐に翻訳してもらい、英語で書いてもらっている。


そのせいで寝不足になったらしいが知ったことじゃない。


「えーっと……あった」


私が最初に見たページはウィンターカップの学校の選手、スタッツ、特徴、評価の面だった。


まず最初に浦高が2ページに渡ってデカデカと書かれていた。


「浦話高校。スーパースター沢木の率いる個性派軍団!優勝候補筆頭」


と書かれている。


『沢木と植松の1年生コンビによる圧倒的な火力で敵を葬り去る最強のチーム!さらにこの2人に島田を加えたビッグスリーの活躍にも注目』


やはり壮とポイントガードのコンビは有名らしい。


『インターハイで優勝候補の横浜羽沢を破り優勝。今回は優勝候補筆頭。沢木の圧倒的なパフォーマンスを見逃すな!』


というわけらしい。


スタッツを見てみるとやはり壮と植松の2人で60点くらいは取っている。


さらに要所で島田が3pを決めている記録もある。


唯一の、そして最大の不安要素としてはインサイドの要であったセンターとフォワードが抜けたことだろう。


あのインサイド2人は強力だった。


しかしそれでも浦話は強い。


最後にキャプテンのコメントが載っていた。


『最近の流行語はお母さん、ジャンプ買ってきて、です』


知らんがな。


次のページには横浜羽沢が載っていた。


『インターハイでまさかの敗北を喫した元最強の高校。日本最高峰のポイントガード小野寺、天才シューター神代、スーパールーキー宮澤のビッグスリーを中心とした攻防優れたチーム』


実際、試合などを見ていてこの横浜は強いと感じさせられた。


スタッツを見ると小野寺が30点、宮澤が20点台、神代も20点くらいを取ってくる。


このビッグスリーと浦話のビッグスリーの激突は見ものだ。


コメントには小野寺の言葉が載っていた。


『カレーは甘口派です』


「えええええぇぇ!?」


その身長、筋肉、風貌で甘口派ってギャップすぎるでしょ!?




そしてその次には千里山が載っていた。


『関西最強の高校、千里山がなんと異例の3年生全員出場!今までは全国では結果を残していないが、今年のインターハイから一気に力をつけてきた強豪。若干変態チックなチームだが実力は折り紙つき』


ひどい言われようだわ。


というか浦話以上の変態チックなチームがあるとは思わなかった。


『キャプテンの夕を中心とした超攻撃的なバスケは迫力満点!絶対に見逃すな!』


スタッツを見ると全員がいい感じにばらけて得点を取っている。


ここも強そうね。


最後に愛和学院の野崎が1人特集されていた。


『日本の誇るビッグマン、ウィンターカップで大暴れ!インサイドは彼が支配する!』


載ってる写真は日本版シャックと言ってもいいようなものだった。


横にも縦にもでかい。


あんなのが飛び掛ってきたら逃げるしかないだろう。


そこからは他の高校のスタッツ欄となっており、ボーっと読み流してページをめくっていると見知った名前が出てきた。





『全国小学生大会の出場校決定!注目はやはり桐生院の琴美!』


琴美、聞いたことがある。


大祐がもっとも警戒していたプレイヤーだ。


アルもビデオで見て警戒していた。


「このプレイヤーは敵です」


アルはそう言っていた。


敵、と認めたということだ。


『日本最強のプレイヤー、ついに日本の頂点に立てるのか!?』


見れば桐生院自体は最近は優勝していないらしい。


菫に優勝を奪われたのね……


明るく笑っている写真を見て思う。


どんな人なのかしら?







side琴美


「なんや、えらい珍しい客やなぁ」


「……」


「ま、立っとるのも何やし、座りぃな」


「悪いわね」


「ええわええわ。なんとなくアンタ来そうな気ぃはしとったんや」


「あら、そうなの」


「ホンマやで?でもま、お友達連れてくるとは予想外やったわ」


私は苦笑してソファーに座ってる5人を見る。


「喜美に、楓に、美紗に、梨華、それに……知美やっけ?知っとるで、アンタのことも」


「……」


「ま、ええわ。それで、どうしたんや?」


私はなんとなく答えがわかっている問いを放つ。


喜美はそれに頷いてソファーから立ち上がった。


そして私とちゃぶ台を間に挟んで真正面に来る。


そして、


「私がアルに負けた理由を教えて頂戴ッ!!」


本気の土下座を叩き込まれた。

というわけでウィンターカップ編開始です。

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