異世界の勇者たち
夢の中
一度はやってみたこと
配点(俺TUEEE!)
side織火
「むにゃ……あれ?もう朝ですか?」
さっき寝たばかりだと思ったのですが。
時計を見てみると36時83分と表示されていた。
ああ、ここ夢ですね。
頷いてベッドから出る。
鏡を見れば服装もパジャマではない。
ショートパンツにストッキング、上にプリントシャツという出で立ちだ。
「さて、夢の中で夢と気づいてもやりたいことがありませんね……」
この世の不思議経験は喜美のおかげでだいぶした。
いまさら夢の中で何をしたいということも……
「あ、お兄さんに会いに行きましょう」
夢の中というのは私の頭の中が投影された世界だ。
ということは、夢の中のお兄さんというのは私の想像するお兄さんということになる。
自分がお兄さんに対してどのような想いを抱いているのか客観的に見ることもできるはずだ。
これで私のこの想いが恋なのか、憧れなのかわかるかもしれませんね……
「よっ、と」
窓を開けて外に飛び出す。
喜美のおかげで空中散歩なども経験済みだ。
夢の中で空を飛ぶなど造作もない。
バッと高度を上げる。
「いるなら沢木家だと思うんですけど……」
と街を見回していると、
ズガァンッ!!
という激音が響いてきた。
「うわ!?何ですか!?」
と音のしたほうを見てみれば、
鬼と狂気と悪魔が力を交わしていた。
sideイリヤ
「うっっっおおおお!」
朝起きたらお母様がお父様に優しくしていた。
これは夢だと気づいた。
というわけで壮の気配を追っていると喜美と知佳お姉さんがいた。
この2人は夢でも私の邪魔をするんだね!
たぶん私にとっての邪魔の象徴なのだろう。
ならば私はそれを打ち倒す。
「来いよ氷龍ッ!」
地面に拳を叩き付けると地面を割って氷の龍が飛び出す。
「~~~~ッ!!」
「く……雷槍ッ!」
喜美が手から雷を飛ばす。
「急所狙い!わかりやすすぎだよ!」
首を捻るだけで避けてやった。
と、
『王者は負けず』
ボウッと音声が脳内に流れる。
「王剣、エクスカリパーッ!」
「しまッ!?」
喜美の攻撃は誘導だった。
私に首を捻らせて目線を逸らすための罠だったのだ。
視線が逸らされた僅かな隙を縫って知佳お姉さんが王剣を振り切る。
極太の黄金がこちらを喰おうと襲い掛かって来る!
「氷龍ッ!間に合って!」
氷龍が私と黄金の間に飛び込もうとする。
タイミングとしてはギリギリだ。
あ、間に合わ……
『強者は守り通す』
再びボウッという声が聞こえ、私と黄金の間に巨体が飛び込んできた。
「受け流し!」
構えた大剣を黄金にぶつけ、寸前に僅かに手首を返すことで黄金を反射する。
そして、
「かっとばせー……」
そのまま手首を押し込んで行き、
「ホオオオオムラアアンッ!!」
思いっきり打ち返した。
「ッ!?知佳姉さん!こっち来て!」
「頼むよ喜美ちゃん!」
『雷は全てを超える』
再びボウッと音声が響き、打ち返された黄金に金色が襲い掛かった。
横からぶち抜きに行った雷が黄金の進路を逸らす。
黄金が喜美と知佳お姉さんの隣を通る。
喜美の姿が掻き消える。
次の瞬間、目の前にいた。
『守護者はうろたえず』
ギリギリで条文を発して隙は見せなかった。
しかし、
『雷は撃ち抜く』
「さぁ、行くわよ沢木流雷神拳!」
喜美の拳に雷が纏わり付く。
「ぐ……!」
『守護者は守り通す』
「フフフ、その防御は面の防御よね?だったら……」
喜美の拳が連続する。
同じ点を穿ち続ける。




