瀬戸際の攻略人
勝利を決める
そのために必要なことは
配点 (クール)
side美紗
突破したッ!
このまま自分で運んでいく!
「追ってッ!」
後ろから桜の指示が飛ぶ。
メリルが走り出したのがわかる。
追いつかれるのはそう遅くない。
スピードを上げる。
ああクソ長いですね!
あと12歩は必要だ。
11、10、ああ足音が鳴ってますよ怖ッ!
9、8、息遣い聞こえてますって怖いよ怖いよ!
7って今金髪見えたし!
6手が伸びて来そうでだから怖いですって!
5、ええいあと1歩で埋まらないんですかって来てるし!
4、ついに手が来ましたね!避けますけどね!
3あああん!あと3!頑張れ私!
2!帰ったらラブひな読んで悶えますから!もうビンビンですから!
1いいいい!ラアアアブ!!
メリルの追撃を3度避けた。
0、と。
ステップを踏む。
飛び上がり、最後の追撃を受ける。
日本最強、ですから。
リングにボールを置いて来る。
そこでメリルの手が私に当たった。
笛が吹かれる。
そしてシュートは決まっていた。
「帰ったら……徹夜で読みますからね……」
sideメリル
やられましたわ!
素直にそう思う。
油断はなかったと、そう思いたい。
このポイントカード、何回私の追撃を避けるんですの……!?
基本に忠実に、しかしトリッキーに。
そんな曲芸をやってのけた。
「へへへ……なるなるちゃーん……」
なんて呟いているこの人。
強敵ですわ……!
こっちに来てから仲間以外に対しては初めての評価を下す。
「メリル、大丈夫。少なくとも楽には決めさせないことを示しただろう?」
桜に言われて頷く。
ただ問題なのは、ここから相手が流れに乗るかもしれないということです……
side楓
美紗がやって、私がやってやれないわけがない。
私は栄光のキャプテンで、エースだ。
この場面でボールを持つのが私の役目だ。
「詰めさせてもらうぜ」
「無理だ」
目の前のアルと対峙する。
ここは絶対に止めたい。
もし決められればまたあの包囲網を作られる。
「来いよ、アル」
「No」
アルがリールにボールを戻す。
リールと対するは美紗。
調子に乗った美紗を潰そうということか。
「ミスだな」
リールがドライブする。
低く、速く。
美紗もそれを見切ってついていく。
体を押し付けて、リールの進路を塞ごうとする。
ファール寸前のギリギリの綱渡りだ。
ほんの少しでもコントロールを誤れば笛を吹かれる。
だが、吹かれていない。
それが全てだ。
「ヘイ!」
その状態のリールなら読みやすい。
何の工夫もなく声のしたほうにパスを放つ。
千晴がカットしたのは当然だった。
「ッ!?」
「速攻ッ!」
リールの手からボールが放たれた瞬間に私は走っていた。
気づいたアルがついて来る。
巨体のくせに足が速い……!
千晴がこちらに向けてボールをオーバースローで投げようとする。
桜が飛び上がり止めようとした。
千晴が手から離れかかったボールをもう一方の手で抑える。
「フェイク!?」
「その通りッ!」
バウンドパスで美紗に通る。
「行きましょうか」
迷いのない一歩目を踏み込んだ。
2歩、3歩で疾走が開始される。
リールとメリルがそれを追い掛ける。
これは流石に持ちそうはない。
だからというように美紗は隣を走る百合子にパスを出す。
メリルの進路が変更される。
「うわ怖ッ!」
百合子がたまらず叫んで再び美紗にボールを返す。
美紗はボールをキャッチした時には3pラインを割っていた。
「止まれ!」
千里が立ち塞がるが、美紗は構わず真っ正面から突っ込む。
その直前、美紗がサインを出していた。
私はゴールの左から突っ込みに行く。
美紗が飛び、ボールを後ろに回す。
ノールックビハインドパス
「栄光を!」
「ナメるなああああぁ!!」
どんぴしゃり。
完璧なタイミングで飛び込んできたボールをキャッチして、リングに押し込んだ。
「っしゃああああっ!」
ガッツポーズをして叫ぶ。
そして梨華にサインを出す。
梨華が頷く。
相手のオフェンス、メリルにボールが飛んだ瞬間にダブルチームに行った。
「ぬおおお!死守!」
百合子と千晴がスティールを狙う。
「ぐ……やれますのよ……!」
メリルはそれを押し退けて進もうとするが、
「取りッ!」
千晴がボールを弾き、前に飛ばす。
走っていた私がそれをキャッチする。
「させません」
マッチアップ相手のアルも走って来る。
私じゃ取られる。
さっさとパスするに限るな。
パッとボールを放す。
サイン通りあまりディフェンスには参加せず、オフェンスを待っていた梨華がそれをキャッチした。
「入っとけッ!」
ガンッと音が鳴るほどの勢いでボールが叩き付けられた。
「「「「「うおっしゃあああああッ!」」」」」
side桜
タイムアウトが取られる。
「よく粘る相手だ」
大祐が開口一番そんなことを口にする。
「流石に警戒していた相手なだけはあるわね……」
リールも息を切らしながら言う。
「流れに乗せたら食われる危険もあるわ」
千里も顔をしかめて言う。
「あの2人が強いですわ。特にポイントカードが……」
「他の奴らはそうでもない。そこを突いていくこともできる」
僕も判断を下していく。
「……アル」
「はい」
大祐が目をつぶったままのアルに声をかける。
「試合を決めて来い」
「……了解しました」
目を開き、しっかりと頷いた。
「みんな、私にボールを回してください」
ええ、と1つ頷いて、
「私が勝負を決めます」
side楓
タイムアウト明け、リールはすぐにアルにボールを渡した。
「ツヨイネ」
「ありがとよ」
「オモシロカッタ」
「そうかい」
「ジャアネ」
「ああ……!?」
何の気負いもない。
予備動作も初期動作も見えなかった。
いつのまにか飛んでいて、いつの間にかシュートが放たれている。
こっちの流れで試合が進んでいるのに、そんなのお構いなしという感じの3pだった。
当然のように沈む。
「……化け物め」
これが、世界にその名を轟かせる天才なのか。
どれだけの逆境でもあっさり点数を取って来る。
この3点はただの3点ではない。
流れを引き戻し、全てをリセットする一撃だ。
「オワリデス」
side京香
そこから相手はずっとアルにボールを持たせ続けた。
アルがボールを持ち、自分のリズムでドリブルをすれば止めることはできない。
あらゆるレンジからショットを決めてきた。
さらにディフェンスもより厳しいモノとなり、楓と美紗の得点を封じられるようになった。
「楓!楓!」
「クッソ……!」
楓が45°振り向き様のショットを決める。
しかし、単発だ。
流れの中から得点を取ることが難しくなって来ている。
ジリジリと点差を離されつづけ、とうとう残り1分を切った。
まだ2ケタの点差がある。
が、諦める者はいない。
「回せ!回せ!」
楓が叫び、ボールが回っていく。
土壇場でいいボール回しができている。
千晴からのショットが沈む。
「よし!これで2点詰めた!」
リールが上がり、アルに渡る。
アルがその場でシュートフェイクをして楓を飛ばせ、一旦横に移動して楓をよけてシュートを放つ。
3pが決まる。
「さらに1点を広げただけです」
叫んだり、喜んだりするならまだよかった。
こちらも奮起して挑むことができる。
しかしこの相手は、
まるで当然というようにアッサリとこなしてくる。
「化け物……」
まさしく、化け物だ。
これが、これが世界なのか……!
お姉ちゃんがファールゲームを指示する。
しかし、アルとリールは全てのフリースローを沈めてきた。
そして、
笛の音が鳴った。
その瞬間、栄光の予選敗退が決定した。
栄光さんも敗退ですね。
いるかどうかわかりませんが全国の栄光ファンの皆さん、ごめんなさい。
ちょっと試合ばっかだったのでギャグ話でもいれようと思います。
え?
私が面倒なだけじゃないって?
ハハハ、ソンナコトアリマセンヨ。
感想で要望されたハーレム話でも書こうかなぁ……




