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開戦の咆哮

叫べ

雄たけびを上げろ

配点(威嚇)

Side健二


沢木壮は俺の中学の時の全国への夢を絶った男だ。


悔しかったが、敵わないとも思った。


しかしまさかこんな形でリベンジできるとは。


俺は相手の5人をよく観察する。


1人背がずば抜けて高い。


美奈と同じくらいかもしれない。


そしてそれより10センチほど低い、それでも十分高い少女が1人。


間違いない。


この子がエースだ。


明らかにレベルが違う。


パッと見ただけでわかるほどその実力差はハッキリしていた。


あと2人がそれより5センチほど背が低い。


銀髪の子と、ロングヘアーを複雑な結び方にしている子だ。


銀髪の子は左利きだった。


あの長身から左利きというのはかなりキツイ。


ロングヘアーの子もドリブルがかなり上手い。


そして最後の1人。


このチーム唯一のショートヘアが黙々とシュート練習をしている。


それも止まってではなく激しく動いての実戦形式のものだった。


このチームは手強い。そう確信した。





Side沢木


さて、アップも終わった。ついに試合開始だ。


「お互いフェアプレーでいい試合にしよう」


多田があんなこと言ってるけど、ウチにそれは難しい相談だ。


ナチュラルにエルボー打ち込む奴らだからな。


多田がボールをトスする。


向こうのセンター、美奈というらしいが、と沙耶が同時に飛び上がった。


身長は同じくらいだが反射神経、瞬発力が段違いだ。


沙耶が安全にこちらのボールにした。


「行きます」


今回ポイントガードは織火に任せている。


地道な反復練習によってかなりドリブルが上手くなっていた。


ゆっくり進んで、相手3pラインの当たりでマッチアップマンに当たる。


織火は喜美にパスした。


喜美には知美が付く。


そのディフェンスは隙がない。


知美も強いか。


喜美はイリヤにパスを出す。


イリヤには背の小さな子がマッチアップに入った。


明らかなミスマッチ。


容赦無くミドルシュートを決めに行く。


しかし外れた。


前回に引き続き初撃は外す。


でもかわいいから許す。




Side多田


さすがに甘かった。


普通にマッチアップしたら由梨のミスマッチを突かれる。


俺は知美に指示を出す。


雪を銀髪の少女に、由梨を向こうのシューターに。


こちらの攻撃。


奈那子がボールを運ぶ。


向こうのポイントガードが付く。


奈那子はまだ自分で抜くことができないので知美にパスする。


知美のマッチアップ相手はあの上手い少女だった。


そういえばどことなく顔が沢木に似ている・・・・・・どころかそっくりだ。


妹なのだろうか?




Side喜美


目の前にボールがある。


取ろうかしらと思ったけど止めた。


私が抜かれるわけにはいかないし。


ボールが動く。左かしらねぇ。右だった。


「おっと」


追い付く。もういいかしら。待つのは苦手なのよ、私。


突っ込む。ボールが逃げる。


煩わしいわねぇ・・・・・・。


プレッシャーをかけ続ける。あら、隙があるわね。奪った。




Side多田


「な!?」


俺はその光景に絶句する。知美が誰にもパスできずにスティールされた?


初めての他校との試合に緊張しているのだろうか?


そのフォワードはそのまま一人で走りきった。

誰にも邪魔されずに綺麗に決められる。


「ご、ゴメンね、みんな!」


知美が謝る。


「大丈夫だ、トモ。私が決めてやる」

「そうよ知美。しょうがないって」

「ドンマイドンマイ」

「取り返せばいいだけだよ!」


みんな声をかける。さすがみんなだ。


すぐに立ち直って見せる。


しかし蓮里のほうはもっとすごかった。


「ナイッシュウウウウウ!!ナイッシュ!喜美!」

「いやもう流石!流石!さっすっが!」

「喜美、上手かったよ」

「よくやったわ!喜美!」


たった1回のシュートに声を出しまくる蓮里。


喜美も笑顔でハイタッチ。


「さぁ来い!」


相手ポイントガードが叫び、試合が再開する。




Side沢木


声はとにかく出しまくるように教えたからな。

たった1回のシュートですら決まったらまるで4q残り1秒で逆転の3pシュートを決めたときのような声を出す。


端から見たらアホ丸出し集団だが、勝てば文句は出てこない。


中学のときはこれで意識を改革し、日本1を達成したのだ。笑ってた連中も声を出すようになっていた。


で、またガードから知美か。さぁどうする?


また知美で行こうとしたら喜美にやられるぞ。さっきのあれは実力だ。ちゃんとわかるかな?



Side知美


みんなはマグレだって言うけれど。


この相手は本当に強い。ハッキリとわかる。


少しでも隙を見せればすぐにボールを取られてしまう。


私は全力で突破しようとする。


体を密着させて押す。


びくともしない。


お、大きい!?胸ではない。


そう、断じて胸ではない……


背丈のことだ。


私だってもう少しすれば胸も・・・・・・


見ると相手の手がボールに伸びていた。


「ッ!?」


素早くボールをキープする。


この子、威圧が凄い・・・・・・!


私は雪にパスをする。雪がボールを取る。


向こうの銀髪の少女がマッチアップする。


「とりゃ!」


雪が打とうとするが、銀髪の少女に押さえ込まれる。


「クソッ!面倒だな!」


私は雪のほうに走る。


喜美が気づいて着いてくる。


振り切ってボールをもらう。


すぐに奈那子のほうにボールを飛ばした。


奈那子はすぐにシュートフォームを作り放つ。


それは綺麗にリングを射抜く。これで同点。


「ここからだよ」


私はみんなに、そして自分自身に呟いた。

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