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 王宮に入り、執事の案内で会場まで向かう。

 段々と賑やかになってくる。弦楽器のハーモニーがここまで聞こえてくる。

 それと同時に緊張で鼓動が早くなるのが分かった。大勢の前でいきなり登場するのは初めてだ。

「緊張しているのか?」

 エヴィンが私を横目で見ながらそう聞いた。

「お兄様しか味方がいませんので」

「キースも味方だろ」

「……そうだといいんですが」

 私たちの会話に案内してくれている年配の執事が小さく声を出して笑った。

「大丈夫ですよ。キース様はニコル様の味方です。本日、ニコラ様のその美貌が公になることにキース様は機嫌を損ねているかもしれませんが、決してニコラ様に対して嫌悪感を抱いているわけではないので、誤解なさらずように」

「……そうなんだよなぁ、あいつ誤解されやすいから」

 執事の言葉にエヴィンも納得したように頷く。

 私が執事に詳しく聞こうとすると丁度入り口の前まで来てしまった。ここは会場の反対側にある扉だろう。封鎖されているようだ。衛兵が二人、扉の端に一人ずつ立っている。

 ……まるで私たちのために用意されたような入口ね。

「それでは私はこれで失礼いたします」

 執事は私たちに向かって、お辞儀をする。

「行くか」

 執事には沢山聞きたいことがあったのに、エヴィンの言葉で衛兵たちが扉を開けた。 

 ……エヴィンの性格をちゃんと掴めていないのって私だけなのかしら。

 それなら物凄く悔しいわね。あれほど愛を伝えていて、全く心を開いてくれていないなんて……。

 私はそう思いながら、優雅な音楽が鳴り響く会場へと足を踏み入れた。


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