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「オダイカンサマには敵うまい!」拍手の中身  作者: 斎木リコ


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拍手 089 百八十六 「三つ目の都市の再起動」の辺り

 塔の朝は早い。日の出と共に起床し、祈りを捧げる。

 ここに来て、最初の頃はこの朝の早さに音を上げそうになったけれど、これも慣れだ。今では皆と同じように起きて仕度出来るようになった。

 こうなってみて、改めて自分は甘やかされていたのだと思う。それを鬱陶しいと思ったけれど、今思えばあの頃が一番幸せだったのだ。

「ネル……今頃、どこにいるんだろう……」

 ハリザニールは、祈りを終えて窓から見える空を見上げつつ、自分の代わりに里から追放された姉を思った。


 ハリザニールに両親の記憶はない。物心ついた時には、もう姉と二人の生活だった。幼い頃は、自分に親がいない事を不思議に思い、何度も姉フローネルに聞いていたのを憶えている。

 お父さんとお母さんはどこ? どうして二人ともいないの?

 聞く度に、フローネルが困ったように笑うのが気になって、次第に聞けなくなった。

 大きくなれば、周囲の大人が言っている言葉も理解出来るようになってくる。あの家は掟を破った者の家だ。あの娘達も、きっと同じようになって里を捨てる。

 掟が何なのか、最初はわからなかった。だが、文字を習う塾で、それを教わる。

 許可なく里から出てはならない。でも、先生も周囲の大人も、その理由を教えてはくれなかった。ただ「掟だから」としか言わない。

 何故、そんな掟があるのか。どうして自分の親はその掟を破ったのか。自分達はどうして親に置いて行かれたのか。

 自分が掟を破った事で、その意味を知った。里の外は、危険に満ちている。自分達エルフは、ユルダ……人間に狩られる存在だったのだ。

 狩られたら、二度と里には帰れない。そのまま売られて、どこか知らない場所で死んでいくしかないのだ。

 だから、里の外に出てはいけない。許可を得る者達は、皆腕に覚えのある戦士ばかりだ。彼等が外に出るのは、里の外をうろつくユルダを狩る為。

 彼等がこちらを狩るのなら、こちらも彼等を狩る。ただそれだけ。

 ハリザニールは、空を見上げて溜息を吐く。姉が犠牲になってくれたおかげで、自分は塔から出られない生活だけれど、里に残る事が許された。

 戦士であり、ユルダを狩っていたフローネルは、今頃どうしているだろうか。大変な目にあっていなければいいのだけれど。

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