拍手 177 二百七十四「それから」の辺り
「あああああ! それ! ウェディングドレス!?」
「うん、そう。無理言って、仕立ててもらったんだ」
セロアの絶叫に、笑いながら答えるティザーベル。彼女の結婚式は明日だ。その前日の女子だけの食事会の終わり、セロアと菜々美にだけ、婚礼衣装を披露した。
「綺麗ですねえ。でも、帝国の結婚式って、どんなのなんですか?」
「そうだねえ。教会式に近いかなあ。ただ、使う教会は婚礼の神か恋愛の神が祀られた場所に限られるけど」
帝国は多神教で、教会形式ではあるけれど祀る神は様々だ。また、一つの教会で二つ以上の神を祀る場所も少なくない。
「ま、万神教会に行けば、問題ないしね。教会の数が少ない地方なんかは、どこもそうだし」
「ああ、万神教会って、全ての神様を祀ってるんですよね? 凄いなあって思いました」
「究極の合理主義なのよ」
菜々美とセロアの会話を聞きつつ、出来上がったばかりのドレスを見る。
帝国での婚礼に、白い衣装を使った話はあまり聞かない。庶民は特に、婚礼の時はここぞとばかりに派手な色を使うからだ。普段は質素にしていても、晴れ着は盛る! のが帝国風である。
そんな中の、白い衣装、しかも今までにない型の衣装だ。ちなみに、ヤードの衣装も白の燕尾服にしている。
この意味がわかるのは、転生者組と転移者である菜々美だけだろう。
「でも、いいなあ、ウェディングドレス。私も、結婚する時はこれにしようっと」
「え? 菜々美ちゃん、もうそんな相手が!?」
「え? あ、いえいえ! まだですまだ! その、そういう相手が見つかって、結婚する時がきたら、ですよ!」
「本当かなあ? 今のうちに白状した方が身の為よお?」
「本当ですって! セロアさんが怖いー」
菜々美は慌ててティザーベルの背中に隠れた。食事会にはザミ達もいたけれど、この秘密の二次会は三人だけなのだ。
「からかいも、過ぎるといじめだよ? セロア」
「ちぇー。あわよくば、何か面白い話を聞き出せるかと思ったのにー」
「そういうあんたはどうなのよ。インテリヤクザ様は?」
「あの人は観賞用だって。身分も違うし。狙うなら、同僚辺りかなあ」
「ギルド職員って、結婚相手には人気なんですよね。安定してるからって」
「公務員みたいなものだからねー。でも、油断してると、一斉リストラされる事もあるよー」
「ああ、いつぞやの」
「そう。まあでも、よっぽどでないとクビにならないのは、本当よ。だから、菜々美ちゃんも旦那さん探すなら、職員を狙うといいかもよー?」
「もう! まだそんな年齢じゃないです!」
「でも、帝国の適齢期って、日本より早いよ? 大体二十歳前後だからね?」
「え? そうなんですか?」
そこからは、セロアと菜々美の結婚適齢期談義に移った。
この時あれこれ言っていたセロアは、ティザーベルに遅れること約半年で、身分違いのクイトと結婚した。




