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「オダイカンサマには敵うまい!」拍手の中身  作者: 斎木リコ


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161/177

拍手 161 二百五十八「帝都からの使者」の辺り

 冒険者組合――ギルドのラザトークス支部には、数ヶ月前から大きな魔法道具が鎮座ましましていた。

「先輩、あれって何ですか?」

「ああ、帝都から送られてきた魔法道具よ。何でも、手紙を一瞬で帝都まで送れるんですって」

「本当ですか!? そんな凄い魔法道具、どうやってこんな田舎の支部に……」

「あれ、誰でも使えるものじゃないのよ」

「ほへ?」

「特定の人物から、特定の人物への手紙が出された時のみ、使用可能なんですって」

「ええ!? じゃあ、ギルドの書類とかも、ダメなんですか?」

「もちろん。あと、個人的なものを送るのもダメよ?」

「ギク……」

「あんた、まさか……」

「いえ、実際には送れなくて……えへへ」

「呆れた……あれは、支部長でないと動かせないからね」

「なーんだ。だったら、支部長の部屋に置いておけばいいのに」

「そういう訳にもいかないの」


 そんな会話を忘れていたある日、とうとう魔法道具を使う日がやってきた。

「おお、これが……」

「手紙の中身、見ちゃダメよ?」

「見ませんよ!」

 そんなやり取りをしている目の前で、魔法道具の中に手紙が消えていった。

「なんか、あっさりしていますねー」

「ま、こんなもんでしょ」

 そんなやり取りをした翌日、ギルドに客が訪れた。街中の依頼主でも、帝都から希に来る豪商でもない。整った身なりの、見るからに貴族筋とわかる人物である。

「誰でしょうね? こんな辺境に珍しい人じゃないですか?」

「そうだけど、私達一般職員が知る必要はないわよ」

「先輩、冷めてますねー」

「達観してると言ってちょうだい」


 帝都からの客人が来たその日から、ギルド職員にはある仕事が追加された。

「ああ、あの手紙を出しに来た女の子ですか? 私が担当しましたよ?」

「そういえば、あなた半年前に異動してきた子だったわね。じゃあ、顔はわかるわね? 街の入り口で、彼女が入ってくるのを見張っていてちょうだい。あ、あっちの男子職員と一緒にね。あなたは彼女の足止めを、男子はギルドに彼女が来た事を報せて」

「えええええええ!? 何ですか!? それ」

「帝都の統括長官からの命令です。嫌なら今後の査定に響く――」

「わかりました! やらせていただきます!」

 彼女がティザーベルを見つけたのは、それから数日後の事。

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