研究
「ミーナちゃん!しっかり!」
「げふっ…魔王様…やってやりました、にゃ」
「今ディードがメレスを呼びに行ってるから!」
動かないオオカミのような黒い獣の隣で倒れているミーナを起こし、ソファーに寝かせた。
腹部と肩から血が流れており、地面にも大量の血が飛び散っている。
私は両手に魔力を込めて回復魔法を使う。
私は技術がないため、本格的な治療ではなく止血程度しかできないが、メレスが来るまでの時間稼ぎくらいにはなるだろう。
「ふーっ、ふーっ…ユウキ様は、無事ですにゃ?」
「ええ、無事です…本当に、よくやってくれました」
「にゃはは、お給料アップ、期待してます、にゃ」
獣の首にはミーナが愛用している銀色のナイフが突き刺さっていた。
そのナイフもボロボロで、相当な攻撃を受け流していたことがわかる。
「連れてきたぜ!」
「ありがと、ディード。魔王様、ミーナちゃんの容体はどんな感じ?」
ディードの肩から降りたメレスがこちらに駆け寄ってきた。
「出血がひどいです。とりあえず回復魔法で血を止めてますが、相当危険な状態だと思います」
「…うん、ここで処置できる感じじゃないね。治療室まで運ぼう。ディード、お願い」
「おう!ミーナ、抱えるから痛かったら言えよ!」
「魔王様はこのまま治療室まで回復魔法を」
「はい、了解です」
「ユウキのことは余に任せよ。それと魔王、この獣は余が出自を調べる、よいな?」
「はい、出処がわかったら報告をお願いします」
そうして私は部屋を出た。
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「おい、誰だ夢の悪魔やら魔獣をけしかけたのは」
『すまんな、種子の成果が出んと国王閣下殿がお怒りなんだ。さっさと成果を出さんからこうなるのだ』
「…本当にいいんだな、長い年月をかけた月の悪魔の種子を無駄にする気か!」
『そんなものに頼らずとも魔王宇国を壊滅させることはできる。お前も国の意向に従え』
「…わかった」
『よし、それじゃあカンダユウキを殺すためにこれからも魔獣を送り込む。お前は内部からそれの補助をしろ』
「了解」
…チッ、馬鹿どもが。
私は国のためにここまでやったのにそれを無駄にしやがった。
しかし、国に逆らうつもりはない。
逆らえばどうなるかなんて考えたくもない。
かといって研究を無駄にするつもりもない。
夢の悪魔の呪いは死ぬわけではなく、眠っているだけだ。
その間に月の悪魔を強制的に覚醒させたらいい。
覚醒させるための方法は不明だが、いくつか考えはある。
そうとなれば早速研究にとりかかろう。




