約束
少し遅くなってしまったけど更新
Q.なぜわざわざユウキは男体化した?
A.サプライズ&ロリのままだと格好つかないから。
9月25日追記
明日投稿します。
わっはっは!という酔っぱらいの笑いがこだまする宴会場。
「うにゃあははは!アニスちゃんは可愛いにゃあ〜!」
「うっ…ま、魔王様、助けて」
「もう、ミーナちゃん、絡み酒はダメですよ!」
「わははっ!ユウキも飲もうぜ!」
「酒臭っ!俺は飲まねえって言ってんだろ!」
「そうだぞディード。無理に誘うのはよせ」
「ちぇー…」
皆すっかり出来上がって、ぶっ倒れている人もちらほらと見える。
宴会の日によく見る光景だ。
…そろそろかな。
「ツムギ、外行こうぜ」
「外ですか?はい、お供しますよ。えっと、ヘイル。この場をお願いしてもいいですか?」
「はい、お任せを」
ツムギを連れて宴会場を出て、城の外に出た。
宴会場の熱気とは違って、外は初春の涼しい風が吹いている。
火照っていた体がゆっくりと冷えていくのを感じる。
…よし、まだ2時間ある。
「少し散歩しないか?」
「夜のお散歩、いいですね」
深夜で誰もいない街の中。
魔灯によって照らされた道を2人で歩く。
適当に最近のことなんか話しながら街をふらつく。
しばらく歩いていると、獣の悪魔と戦った場所に着いた。
「…あんなにボロボロだったのに、よくここまで修復できたな?」
「はい、大工さんや兵士たちが頑張ってくれました。ところで、ここに用があったんですか?」
「ああそうだ、もう少し先だけどな…ちょっと失礼」
俺はツムギを抱き上げ、勢いよく民家の屋根に飛び乗った。
「きゃあっ!?」
「手、離すなよ」
体は男の俺に戻ったものの、これはあくまでも皮であるため、狼人の身体能力は変わらない。
ひょいひょいと屋根を飛び移り、目指した場所は獣の悪魔戦で狙撃に使った時計塔。
あの建物は人が居なくて見晴らしが良い。
完全に二人きりになるには丁度良い場所だ。
バルコニーでツムギを下ろし、柵にもたれかかった。
空を見上げると、欠けたツキが浮かんでいる満点の星空だった。
「ふぅ…ツムギ、去年の誕生日のこと、覚えてるか?」
「去年ですか?もちろんです。家族以外から祝われたのは先輩が初めてだったので…とても嬉しかったのを覚えています」
「俺だって家族以外の誕生日を祝ったのは初めてだったさ。それでなんだが…これ」
俺は懐からネックレスを出し、ツムギに渡した。
「これは…あの時のネックレスですか?何故ここに…?」
「自作だ。少し拙い部分もあるがな。去年と同じだが、今年の誕生日プレゼントだよ」
「せ、先輩…ありがとうございます…本当に、本当に嬉しいです」
声を震わせ、微笑みながらネックレスを抱きしめるツムギの顔は、あの時と違って心の底から嬉しそうだった。
去年の誕生日、あの時点でツムギは自分の寿命を知らされていた。
病院から出られない事を知っていて、それなのに『退院したら、これを付けて一緒にお出かけしたいです』という嘘をついた。
あれは俺に悟らせないための嘘だったのかもしれない。
しかし、嘘をついて生きてきた人間は嘘に敏感であるが故に、俺は気づいてしまった。
あの時の何もしてやれない無力感というのは耐え難いものだった。
金は出せた。
腕のいい医者もいた。
しかし、時間が足りなかった。
何をしても手遅れ、どれだけ調べても解決法は見つからない。
泣こうが怒ろうが、何も出来ない。
あの日々は苦しかった、ただ苦しかった。
ただ、あのはた迷惑な女神達に拾われてしまったおかげで、俺たちは再び出会うことが出来た。
「約束するよ。今度はお前を離さない。絶対にお前を守ってみせる。だから、俺の事を応援していてくれ」
「はい…はい!もちろんです!私はいつでも先輩を応援してますよ!」
一方その頃の宴会場。
「エメラ様、起きて!」
「お前もだゼノビア。こら!ディード!もう酒は終わりだ!」
「ミーナ、そろそろ起きないか。お前もだ、コルネ」
「あ、あはは…すっごい時間かかりそう…」
まともに動けるアニス、ヘイル、アメリ、メレス、その他数人で後片付けが進められていた。
ユウキ作のネックレスには特殊な魔法が掛けられていて、1のネックレス(ツムギ所持)の魔石の部分に魔力を流すともう片方、2のネックレス(ユウキ所持)の所有者が1に転送される。
とりあえず2章はおしまいです。
次からは3章で1ヶ月の時が経ちます。
あと、2章の『統一』は流石に気が早すぎたから変更します。
次の更新日は三連休中に出せたらいいな〜と。




