解剖…?
あっつ…
「…体に異常はなさそうかな。目の色も琥珀色に戻ってるし…ネム様、ユウキ君の中に入れる?」
「…ダメです。ユウキさんが私を本気で拒絶しなければこんなことにはならないはずですが…ユウキさんの中に悪魔がいることに今まで気がつけなかったのは、とても悔しいです…」
「女神でも気付けぬほど、気配を隠すのが上手いのか…ちなみに女神よ、中にいる悪魔の名前に心当たりは?」
「いえ…私は見たことがありませんし、皆から聞いた特徴に当てはまる悪魔が多すぎて判別つきません」
「…いっその事解剖でもしてみるか?」
「ちょっ、お母様さすがにそれは…」
「なるほど…私がいたら傷もすぐ治りますし、別にいいんじゃないですか?」
「ネム様まで!?」
「…人が寝てる間に何しようとしてやがる」
「わっ、起きた」
目を開くと、見慣れた自室の天井。
部屋にはメレスとネム、アンソルスが居た。
どうやら、幹部たちは獣の悪魔の後処理に駆り出されているらしい。
なんでも小型の残党がまだ街に残っているとか何とか…
「…それで、ユウキ。お主は何が起こったか覚えてるか?」
「覚えてる…?あれ、そういやなんで俺生きてんだ?」
確か獣の悪魔にぐっちゃぐちゃになるまで噛み砕かれて、それで…それで?
身体中を触ってみるが、特に怪我をしている感じはない。
目で見ても傷跡すら見つからないくらい、いつもの体だ。
「…エメラ曰く、お主は獣の悪魔に食われた、と。それから、ゼノビア姉弟は、肉塊となったお主を見た、と。それから数分後、我々の前に現れた時には完治しており、悪魔の言葉、未知の魔法を使用してそのまま気を失った…これらに記憶は?」
「…肉塊になったところまでしか覚えてねえや…どうやってこの形に戻ったのかも覚えてねえ」
「うむ、わかった。十中八九お主の中には悪魔が居る」
「悪魔って…そんなこと急に言われても困るんだが?」
「実際、余も困っている。悪魔が人に入り込むなんて、相当稀なことだからな。しかも、獣の悪魔を殺す程の力を持つ悪魔であるなら尚更、人の身に縛られるというのは自身に枷を掛けるということで、目的すら不明なのだ」
「…」
「ユウキ様〜、お昼ご飯持ってきたから開けてにゃ〜」
「ん、ありがと」
結局、様子見で1週間の自室待機が言い渡され、また暇することになってしまった。
許可無しで部屋から出ることが出来ないため、飯はミーナが持ってきてくれることになったのだ。
「…なんか多くないか?」
トレイの上に置いてある料理は一人で食べる量ではなく、二人前くらいあるように見える。
「わざわざ戻ってお昼ご飯食べに行くのも面倒だから、ここでご一緒させてもらうにゃ。それに、ユウキ様もずっと一人で部屋にいたら寂しいかにゃ〜と」
「…優しいな、お前は」
「にゃはは!ほら、早く食べないと冷めちゃうにゃ!」
「ああ、そうだな」
手を合わせ、暖かい料理に手をつけた。




