何者
夏休みに入ったけどバイトばっかりで休んだ気にならぬ…
「姉ちゃん!?エメラ!どこだ!!」
「ゼノビアは私のところにいるよ!なんにも見えないけど!」
「これは、魔法…?こんな魔法、自分は…」
何かがぶつかり合う激しい音と風が目の前で吹き荒れている。
ユウキっちと獣の悪魔が戦闘しているのかな…?
そんなことより、ここら離れなくては…
何も見えないから、何かが飛んできたとしても避けられないし、いつ巻き込まれるかわからない。
「こっちだ!こっちに来い!」
ヘイルの声だ。
隣にいるゼノビアの手を掴み、ヘイルの声が聞こえる方に走った。
「うわぁ!?」
「眩しいでありますっ!」
突然闇が晴れ、眩しい朝日に照らされて目を細めた。
そこにはヘイルとアンソルスが立っていた。
後ろを振り返ると、大きなドームがあった。
距離感をつかみにくいほどの漆黒で、不気味だ。
私達はあのドームの中に居たのか…
「うおっ!?出れんのかよこれ!」
そして最後に合流したディード。
幸い誰にも怪我は無かったが、これはどうすべきなのかな…?
未だに鳴り続ける激しい音と吹き荒れる暴風は、更に勢いを増しているような気がする。
「…もしもこの戦闘が終わりユウキが生きているとしたら、全員近づくな。今のアレは多分ユウキでは無い」
「ユウキっちじゃないって…」
確かに目の色は違ったけど、精霊さん達も本物だって言ってるし…
「ゼノビア、お主の目は色を見る魔眼であろう?ユウキの魂は何色だった?」
「…さすが魔女殿。見ただけで自分の魔眼を言い当てるとは…はい、ユウキ殿の色は濃い灰色であります。それが表す彼の魂は…」
「…自身を悪人と思い込んでいる善人、だったか。ふむ…」
ゼノビアの普段前髪で隠している片目は、色を見る魔眼と呼ばれる特殊な眼だ。
魂の色を見ることが出来て、その色で人物像を把握することができるらしい。
『ーーーー!!!ーーーーー!!!!』
突然、闇の中から獣の悪魔の叫び声が聞こえた。それと同時に風が止まり、黒のドームが消え去った。
そこには、血まみれの獣の悪魔の上に座り込んでいるユウキ(?)の姿があった。
「ククク…よぁ人間共。無事か?」
「…貴様、何者だ?」
「それには答えられないな。ただ、俺はユウキだ。ということだけは言っておこう…む?もう終わりか…それじゃあな。また会おう」
そう言ったユウキ(?)は突然膝から崩れ落ち、動かなくなってしまった。




