新米
たまには平和な回を。
療養しろ、と部屋に押し込まれ、特にやることもないからボーッとしていたのだが…
「みゃー」
「にゃはは!くすぐったいにゃー!」
猫と猫が俺の部屋でじゃれ合っている。
正直うるさい。
「はぁ…仕事行けよ。新米のアニスの方が頑張ってるぞ」
「にゃ?アニスちゃんは頑張りすぎにゃ。お仕事ってのは適度に楽しながらやるものにゃ〜」
「…ミーナ。早く来ないか」
「にゃあっ!?アメリ姉!?」
ドアの前に立っているアメリとその後ろに居るアニス。
頭に手を当て、呆れたようにため息をつくアメリの姿を見て、観念したように正座をするミーナ。
「ミーナ、お仕事、しよ?」
「う…はい…」
「休憩は大事だが、お前の場合は多すぎる。よって、今から勤務終了まで休憩なしで掃除だ」
「うぐぅ…」
「アニスちゃん、今日の勤務は終わりだ。後はミーナに任せてゆっくりしなさい」
「やったぁ」
「アニス、こっちに座っていいぞ。おいしい紅茶とお菓子があるからな」
「はーい」
「ユウキ様。うちのミーナがすみません」
「いや、別にうるさいだけだから構わんぞ」
「それでは…ほら、行くぞ」
「あうう…」
アメリ姉さんに引っ張られて連行されるミーナを見送った後、アニスが俺の対面に座った。
新しいカップを出し、紅茶を淹れる。
「いただきます」
カップを持ち、ふーふーと息を吹きかけるメイド服のアニス。
とても似合っていて可愛い。
「おいしい…これも、食べていいの?」
「おう、好きなだけ食べていいぞ」
キィ…と小さく関節音を鳴らしながら、クッキーをつまみ、口に運ぶ。
頬を緩め、美味しそうにもぐもぐと咀嚼する姿は、小動物みたいだ。
つい先日、アンソルスが義手を完成させた。
魔力を流すことで動かせる義手であり、アニスが言うにはとても便利なものらしい。
「どうだ?義手には慣れたか?」
「うん、ちゃんと、使えるよ」
「そうか…それはよかった」
義手ができた次の日に、アニスはアメリの所にメイドの仕事をしたいと頼みに行ったのだ。
お世話になってる皆に恩返しがしたいということらしい。
今ではメイド達のアイドル的存在として扱われているようだ。
…それにしても、この魔王城のメイドの服は露出は少ないものの、やはり肌が露出している部分にある白い傷が目立つ。
「…どうか、した?」
「んや、かわいいなぁって」
「えへへ…」
最初出会った頃のあの全てに怯えるということは無くなり、男が少し怖いということを覗けば、年相応の女の子だ。
夜には一人で寝てもうなされることが無くなり、今は与えられたメイドの部屋で寝ている。
しかし、時折寂しいのか夜になってから俺やミーナの部屋にこっそりと行き、一緒に寝ることがある。
年下であり、妹みたいな存在でつい甘やかしてしまう。
…まぁ、可愛いからいいか。




