爆発
ヘイル視点です
なにが、起こった。
軽い耳鳴りと、割れるように痛む頭。
胸に圧迫感…何かが私の上に乗っている。
「ユウ、キ…?」
ぐったりとして動かないユウキが乗っていた。
ああ、そうだ。
扉を開くと同時に、小屋が吹き飛んだのだ。
いったいなぜ…いや、今はそうでは無い。
「ユウキ、大丈夫か?目を覚ま…」
ユウキを抱き起こして、なにかが手に触れた。
ぬるり、とした感触。
嫌な汗が流れるのを感じた。
「…ッ!?」
真っ赤に染まった手の平。
ユウキの脇腹には、吹き飛んだ小屋の一部と思しき大きな木片が刺さっていた。
「ヘイル…ユウキ殿…大丈夫でありますか…?」
「お前は、無事だったようだな…」
「ええ、腰が少し痛みますが…って、ユウキ殿!?」
「まだ息はある。今、回復魔法は使えるか?」
「もちろんであります!」
ゼノビアの回復魔法で体力を補いながら、急いでメレスの元へ連れて行かなくてはならない。
先程の話もあって、ユウキへの警戒を解くことは出来ないが、此奴が魔王国に必要であるのは事実だ。
…それに、爆発の直前に私を庇ったのも確かに見た。
恩は返さねば。
「…ふぅ、終わったよ」
「メレス…!その、先輩は…?」
「うん、大丈夫。内臓は傷付いてないし、後は軽い打撲くらいかな。もうすぐ目を覚ますと思うよ。それと、傷の治りが異常に早いのは多分、ネム様のおかげかな?」
「ええ、その通りです。体内の魔力をいじって回復を促進しているのですよ。私の体なんですからもう少し大切に扱って欲しいものです!」
「そうですか…よかったぁ…あれっ、ヘイルとゼノビアは…?」
私たちは先程の爆発した小屋の跡地に戻ってきていた。
こんな舐めたことをしてくれた者を特定するために、だ。
「…何者かが隠蔽を図ったのか?」
「しかし、地上の小屋を壊したとしても、自分たちの目的は地下でありましたから、あまり意味は無いのではありませんか?」
「確かにその通りだが…それでは何が目的なのだ?」
ユウキのように不運にも木片が刺さるようなことがない限りはあの爆発で人は死なない。
隠蔽でもなく、私たちを殺すためでもないとしたら、一体なぜ爆破したのだろうか。
そもそも、どうやって爆破させた?
あの時、小屋が爆発したにもかかわらず、熱を感じなかった。
周りに散乱した小屋の破片も燃えた形跡は無い。
…チッ、情けないが分からない。
探索を続けていくと、壊れた机の下に空洞があるのを見つけた。
「ゼノビア、これが地下の入口だな」
「あれ…?ユウキ殿達が言っていたような臭いはしないようでありますが…」
言われてみれば…
地下室特有のカビ臭さを除けば、特に不快な臭いはしない。
縄ばしごを慎重に降りていく。
やがて、地面に降り立ち、目を疑った。
「…なにも、無い…?」




