月
幼いながらに眉目秀麗、文武両道。
大人たちからは神童と呼ばれていた。
休み時間に校庭で遊ぶ同級生たちを気にも留めず、一人で難しそうな冊子を読み、ぶつぶつと独り言をつぶやく少年は、同級生からしてみれば不気味だっただろう。
少年が泣いていた。
それを見た女はさらに少年を痛めつける。
「なに泣いているのよ!?その涙は○○のために取っておきなさい!」
少年が泣いている。
それを見た男は冷たい目で少年を見下ろした。
「はぁ…私たちの子供のはずなのになぜこんな簡単なことができないんだ」
男女の遺体の傍に座った少年が、手を赤く染めて泣いている。
駆けつけた男は目を見開いた。
「少年!大丈夫か!?何があったか言えるかい!?」
「パパとママ…死んじゃったの?」
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「いっ…つぅ…」
突然の頭痛で目を覚ました。
隣でネムとメレスがすやすやと寝息を立てているため、起こさないように外に出る。
熱を帯びた頭が、夜風で徐々に冷えていく。
一息つき、空を眺める。
…今日も月が綺麗だ。
何故だろうか。
最近、よく月を見るようになった。
狼と言えば月、みたいなところあるし、狼人になったことも関係しているのだろう。
綺麗だし、見ていて悪い気もしないから良いのだが、特に月がきれいな日の翌朝は必ずと言っていいほど寝起きが悪い。
これも狼人の特性だろうか?
そういえば、月は何かの象徴って聞いたことがあるけど、なんだっけ。
…忘れた。
とりあえず、眠気も失せたし暖を取りながら見張りでもしておこう。
コラルが近いとはいえ、用心深いに越したことは無い。
…本当に、今日はツキがキレイだなぁ。
最近気が付いたんですけど、月って本当に綺麗ですよね。




