夕飯
盗賊との戦闘後、一時間ほど進んだところで止まった。
「…今日はここらで休むか。ユーリ、お疲れ」
「ぶるる」
「よしよし、いい子だ」
顔をこすりつけてくるユーリにご褒美のニンジンを与えた。
集めてきた木の枝にライターで火をつける。
ぱちぱちと燃え上がる枝に俺たちは手をかざして冷えた手を温める。
「ふいい…あったかいね」
「だなー…早く温かい部屋で飯食って寝たい…お?野鳥か?」
空に飛んでいた鳥が近くの木の枝にとまった。
俺は創造したエアライフルを構えた。
ぱすっ
ぼとっ
「メレス、この鳥、食えるか?」
「これは…ヴァルトバードだね。この地域ではよく食べられてるらしいよ」
「うっし。これ、今日の晩飯な」
「ユウキさん、今のってエアガンってやつですか?銃声がしなかったんですけど」
「おう、この距離で実包とか散弾使ったらこれくらいの大きさの鳥は粉々になるからな。エアガンだとしても金属弾だかられっきとした猟銃だぞ」
「ずっと思ってたんだけどさ、ユウキ君が使ってる武器ってどんな道具なんだい?さっき会った盗賊みたいに頭を吹き飛ばすくらいの威力があると思いきや、この烏に目立った外傷もなく仕留めるくらいの威力だったり…」
研究者としての好奇心が抑えきれないのか、目を輝かせながら俺が持っているエアライフルを見つめている。
「これは金属の弾を高速で飛ばす、銃って道具だ。威力は飛ばしている弾と出力の違いだな。遠くの獲物を狙うときは大きな銃を、近くの獲物を狙うときは比較的小さな銃を使う。他にも連続で発射したり、一度の発砲で十数発の鉄の粒が飛んでいくのもあるぞ」
「ほうほう…他には!?」
熱心にメモを取るメレス。
「また今度な。腹減ってるからさっさと調理しちまおう」
俺は荷台から持ってきていた調理器具を出した。
「ちなみに僕は料理からっきしだからね」
「はいはーい、私もできません!」
このポンコツどもめ…
「分かった分かった、俺がやるから待っとけ」
「ユウキさん料理できるんですか?私と一緒に居た二ヵ月間で一度も料理なんてしてなかったじゃないですか」
「でもできないとも言ってないぞ」
めんどくさいし金もあったから全部外食で済ませてただけだ。
さて、まずは羽を全部むしるところからだ。
~~一時間後~~
「よし、下ごしらえはこれで十分かな」
「ふーむ、手際がいい…どこかでサバイバルでもしたことあるのかい?」
「…んー、まあそんなところだな」
羽を全部むしった後、食べられそうな部位を切り分け、塩と胡椒を擦り込んだ。
焚火の上に金網を置いて焼く。
「「…じゅるっ」」
肉からぽたぽたと油がしたたり落ち、火の勢いが少し強くなる。
…そういえば、行商人って設定だから馬車にほかの野菜も置いてあったはずだ。
玉ねぎにじゃがいも、キャベツ、ニンジン、レンズマメ…
調味料は少ししかないが、簡素な野菜スープくらいはできるだろう。
野菜と鍋を取り出し、近くの川から水を汲み、煮沸消毒。
その間に野菜の皮をむき、適当な大きさに切り、もう一つの鍋に肉の油を引き、野菜を炒めていく。
火が通ったら沸騰したお湯を入れ、調味料も少し入れ、少し煮込む。
「そろそろ肉も焼けたろ。んじゃ、いただきます」
「「いただきまーす!」」
少し硬くて血の味もする、ワイルドな味だ。
やっぱり肉は塩コショウだよな。
「おいひいれふ!」
「はふ、はふ!」
しばらくして肉を食べ終わったころ、スープも出来上がった。
馬車の中にあった木のお椀に注ぎ分ける。
「ほい。おかわりもあるぞ」
「ありがとうございます!」
「ふう…冷えた体にしみるぅ…」
自分が作った料理を美味しいといってくれるのは嬉しいもんだな。
ずずず…
うん、思ってたよりも上手くいったな。
じゃがいもはほろほろだし、にんじんも甘くて…
「お代わりください!」
「あ、僕も!」
「早いな…」
俺はネムのお椀を受け取った。




