宴会
「ふう、それで先輩、どうですか?」
「どうって?」
「この国の雰囲気ですよ。まだまだ小さな国ですが、雰囲気だけはいい自信はありますよ」
初の侵攻成功祝いの宴会中。
俺はツムギと一緒に運ばれた料理を食べながら話していた。
ツムギの頬は酒が入っているせいで少し赤く、表情もふにゃっとしている。
「雰囲気は滅茶苦茶いいと思う、街の住人たちの表情も明るいし、国の兵士たちも気のいい奴らばっかだしな」
「ですよね!」
ツムギはとてもうれしそうだ。
話を聞いていると、半年間必死に頑張ってもまだこれくらいで…と嘆いていた。
いや、普通に考えて半年でこれはすごいだろ。
「やっほームッギー!ありゃ、お取込み中?」
「あ、エメラ。先輩、紹介します。親友のエメラです」
「俺はユウキ、ツムギと同じく、違う世界から来た。よろしくな」
「よろしくね!ユウキっち!あーしはエメラ・エルドラフ。これでも戦闘担当の幹部だよん」
ユウキっち…
まぁ、嫌ではないけどな。
真っ赤な髪に、ピンク色の目。
身長は154㎝くらいか。
誰にでも分け隔てなく明るく話しかけるタイプのようだ。
「幹部で思い出したんですけど、先輩、幹部になるつもりはありませんか?」
「おお~、ユウキっち幹部になるの?」
幹部…か。
あまり柄ではないが…
「現在の魔王国では人材が圧倒的に不足してます。この国に居る、特に能力の高い人を幹部に勧誘しています。その分危険な任務が多いのですが…先輩の能力は幹部の中でも特に高く、さらに私の権能よりもはるかに強力な権能を持っています。だから…」
「誰の権能が弱いですってぇ?」
「ぴぃっ!」
ヌッとツムギの後ろから顔を出したのはゼランだった。
「私の権能で下界に持ち込めそうなものはこれくらいしか無かったんだものぉ…そんなこと言われて悲しいわぁ」
およよ…と泣くふりをするゼラン。
「そんなこと言ってないし思ってもないです!」
「うふふ、話の腰を折ってごめんなさいねぇ。続けていいわよぉ」
ゼランは楽しそうに笑うと、近くの椅子に座った。
「まぁ、手を貸すって言ったしな。いいぞ」
「そうですか…ありがとうございます!それじゃあ、どうぞ」
「?」
手渡されたのはマイクだ。
そしてツムギが向いた方向は宴会場の舞台だ。
つまりこれは…
「新幹部の挨拶…?」
「はい!」
「唐突過ぎるだろ…何も考えてないぞ」
「ちょうど、幹部も兵士もこの宴会場に集まっているので、挨拶をするなら丁度いいかなって思いまして…」
「ええー…」
何たる無茶ぶり。
ま、いっか。
「簡単なことしか言えないけどいいのか?」
「ええ。名前さえしっかり言ったら後は何でもいいですよ」
「ユウキっち頑張れ~!」
人前に出ることは慣れているからいいが、ちょっとは考える時間欲しかったかな…




