藍の合い言葉
「なろうラジオ大賞7」応募作品です。
合い言葉、Iコトバ、愛ことば…
「私を起動させるには、合い言葉が必要です」
かなり昔に設定した合い言葉を僕は忘れてしまった。
せっかく修理したのに。
それは僕が作ったAIロボット。
それは人型で形は人間のよう。
僕はそのロボットを「藍ちゃん」と呼んでいた。
特殊な金属の君は、特殊な光の中作られて、体の色が藍色だった。
藍色の君が綺麗だなと思ったから、藍ちゃんと呼んだ。
本当は藍色じゃなかったのかもしれないが、僕が知る色の中で1番綺麗で藍ちゃんに似た色が藍色だったのだ。
僕は藍ちゃんのことを話し相手であり、友達であり、家族であり、大事な人だと思っている。
藍ちゃんの生活範囲は家の中。
外に出て、何かに濡れたり何かにぶつかって壊れては大変だからだ。
家の中なら大丈夫と思っていたのに、僕はコードに躓き、持っていたコーヒーカップを割り、コーヒーを藍ちゃんにかけてしまった。
動かない藍ちゃん…
そこから僕は1年かけて修理した。
合い言葉はなんだっけな。
適当な言葉を試したが全て当てはまらなかった。
「私を起動させるには、合い言葉が必要です」の言葉を聞きすぎてイヤになって、設定でこの言葉を削除した。
言葉を削除しても合い言葉は必要で、藍ちゃんは動かないし、全く喋らなくなった。
数日経っても、合い言葉が出てこない。
しかし、お腹は減るもんだな。
「藍ちゃん、何か食べるもの買ってくるよ、いってきます」
藍ちゃんの返事はない。
「いってらっしゃい」と前は言ってくれたのに。
◇◇◇◇◇
買い物が終わり家に帰宅した。
「ただいま」と僕は言った。
「おかえりなさい」
え…?「藍ちゃん?」
「たった今、合い言葉を頂き起動しました」
そして僕は思い出した。
ただいまと言える人が欲しくて君を作ったんだった。
ただ椅子に座って喋る君を作った。
心がジーンとする。
ただジーンとするヒマなく、藍ちゃんは喋りだした。
「今日はどこに出かけていたのですか?」と。
◇◇◇◇◇
初期設定。
僕が出かけていない時は藍ちゃんに休んもらいたいから…
僕「いってきます」藍「いってらっしゃい」でスリープモード。
僕「ただいま」藍「おかえりなさい」で再起動っと。
これは忘れないよな。
合い言葉設定完了!




