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日々戦争に明け暮れる世界をクリアする為に、一ヶ月の修行を終えた俺は人々を導く”王”として更なる戦いに身を投じることになりました  作者: ふくあき


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第五章 反逆の魔法剣士 1話目 Players Anteroom

「――さて、次は我の出番だな」

「そうですね。順当に行けば、貴方が三勝目で試合を終えられます」

「っ……!」


 既にシロガネでこの戦いは終わるかのような雰囲気に包まれる中で、ラストは部屋の隅で苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。


(私にはもはや出番すらまわってこないとでもいうのか……!)


 勝つか負けるかでいえば、チームとしてなら当然ながら勝って欲しい気持ちは確かにある。しかしそれよりも、この先の戦いにおける自分の存在価値を少しでも証明しておかなければならないという気持ちから、“負けて欲しい”などという心も存在している。


「…………」

「そう深く考えるな、ラスト。お前が活躍する場はここじゃないってだけの話だ」

「っ! 主様!」


 そんなラストの心を見透かすかのように、ジョージはいつの間にかラストの隣に立っていた。


「何度も言っているはずだ。俺がこの戦いからお前を外すことは二度とないと」

「…………」


 確かにこの一ヶ月間のレベル上げをもってしても、彼女ラストのレベルは一切上がっていない。しかし依然として彼女が最強格の戦術魔物だということに揺らぎはない。


「拳王みたいな例外も出始めたとはいえ、お前はまだまだ俺達にとっての切り札だ。だから早々に自分に見切りをつけるような真似はするな」

「主様……」


 仮に最強格でなくなったとしても、何の打ち合わせもなくジョージと息の合ったコンビネーションを組めるのは彼女のみ。それだけ最強の“初代”刀王と、互いに考えを通じ合わせられるのは彼女だけ。


「仮にお前ひとりで無理だったとしても、俺がいる。そして俺一人で無理だったとしても、お前がいる」


 そうして信頼を預けるかのように肩に手を置き、ジョージはラストに向かって最後にこう言った。


「俺達二人で、“最強”だ」

「……っ!」

「ひとまず見届けようか。あの白金の陰が、どれだけ強いのかを――」



          ◆ ◆ ◆



「おぉーとォッ!! あと一勝してしまえば五試合目を迎える前に決着が決まるこの一戦、またしても助っ人を投入かぁーっ!?」

「ここは当然だろ。わざわざ最後までもつれさせる意味なんざねぇしな」


 事前にオーダーを知っているかのような呟きを漏らすクロウは、その言葉の通り戦いの早期決着を望んでいた。

 戦いが終わり次第、拳王との謁見が始まる。その際に話す内容をクロウは既に頭の中で纏めに入っている。

 それは現在戦争状態となっている剣王の国(ベヨシュタット)拳王の国(ナックベア)において、“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”が一切干渉しないことを引き換えに戦地から外すことを申し出るという内容だった。


「これが通らねぇと、俺達はまず自国内の敵対者とまともに戦えねぇ……!」


 未だ多くの者は気が付いていない、国内に潜む本当の敵。それに専念するためには、外堀だけは埋められないようにしておかなければならない。


「頼むぜぇー雇われ忍者さんよ」

「その経歴は一切謎! しかし実力だけはその名を轟かせる! 白金の陰の登場だァアアアアッッ!!」


 いきなり戦闘の場に黒煙が舞い、そして晴れたその先に姿を現す一人の忍者。

 これだけでも観客は興奮が収まらぬが、更にこれに追い打ちをかけるかのように、今度はクロウ達剣王側のプレイヤーが驚くことになることを、今の彼らは知らない。


「そぉしてぇっ!! ここで何と我らが拳王チームも、助っ人の登場だァアアーッ!!」

「何だと?」

「かつては“要塞女帝フォートレス・エンプレス”と呼ばれ畏怖された、最強の魔法剣士マジックナイトの登場だァアアアッ!!」


 ――そうしてその姿を目にしたシロとジョージ、そしてラストは驚愕する。


「拳王側から、キリエ選手の登場だァアアアアーッ!!」

「あら、残念。てっきり勝負を決めに、あのアホ侍が出てくると思ったんだけど」


 対抗するかのように地面に突如現れた魔法陣から姿を現す、ゴシックロリータの魔法剣士。その姿を見るなり、多くのプレイヤーは彼女の伝説を次々と口にする。


「なんてこった、あいつは確か前作プレイヤー!」

「かつての“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”が関わる防衛戦において、あいつが出てきた場合の防衛率は驚異の百パーセント! 全防衛を完遂している!!」

「それがなんで、立っている側が逆なんだ!?」

「……まずいな」


 モニター越しに見る光景だが、まさに絶望的だった。かつてのギルドの一角を担っていた存在が、今度こそ明確に敵対者として、目の前に立ちふさがっている。


「五試合目を視野に入れなければならないかもしれませんね……」

「ああ……ラストの出番がまだありそうだ」

「くっ……あの女……ッ!」


 かつての面々はキリエの姿に複雑な感情を抱いていたが、ユーゴーにとってそれは分からないものだった。


「あ、あのー、皆さんどうしてそんなにピリついているんです?」

「……話せば長くなる」

「かつて全盛期だった頃の“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”のオリジナルメンバーの一人、とだけ言っておきましょう」

「えぇーっ!? だとしたら、たった六人しかいない時期の内の一人――」

「ちょっと黙ってろ! ここからはあいつの戦いを見ておかなければならない」


 当然ながら、直接相対しているシロガネもまた、警戒を最大に高めていた。


「……何よ? あたしが予想外だった?」

「予想外も予想外。お主は確か、元々“こっち側”の人間だったはずだ」

「あっちもこっちも、今となっては何もないわ。今の私は――」


 ――“虚空機関ヴォイド”のキリエだから。

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