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日々戦争に明け暮れる世界をクリアする為に、一ヶ月の修行を終えた俺は人々を導く”王”として更なる戦いに身を投じることになりました  作者: ふくあき


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第四章 リベンジマッチ 2話目

「――それではそろそろ行ってきます」


 第三試合に向けて、出場を予定しているシロが扉に手をかける。

 共に勝利数は一対一。振出しに戻った今、どちらが先に三勝目に王手(リーチ)をかけるのか、彼らにとって三試合目の重要性は非常に大きいものだった。

 故に今この場で出せる戦力の中で、一番の実力を持つ男が試合に出ることを決定する。


「ボクが勝てばシロガネさんで決着がつくでしょう」

「……そうだな。しかし、油断はしない方が良いでござるよ」


 確かに彼の言う通り、ここで勝てば気持ちとしては楽になる。しかし相手もこの三試合目を落とすまいと、それなりの相手を用意するのは容易に推理できる。


「できれば、全力で挑むことをおすすめする」

「シロさんなら大丈夫だろ」


 慎重な意見をていするシロガネとは対照的に、ジョージは全幅の信頼を寄せているのかそれを一蹴する。


「なっ!? いくら何でも無責任な――」

「じゃあ聞くが、そもそもあの人よりこの世界ゲームをやり込んでいると言えるか?」

「むっ……それは――」

「そもそもレベル的にも、カンストしているのは俺とシロさんだけだ。だったらどっちかが出る他ない」


 そして今回自身が出ないことを決めている以上、ジョージではなく必然的にシロの出場が確定する。


「あの人は万能型にステータス割り振りをしているが、それでもどちらかといえば乱戦向けじゃなく一対一タイマンの勝負を想定している」


 そしてその強さを、ジョージは今までの経験を通して、身をもって知っている。


「では改めまして、行って参ります」


 そうしてシロが去っていけば、ジョージとシロガネの視界には閉じられたドアだけが映っている。


「……何か、よからぬことが起きねばいいでござるが……」


 何らかのスキルによるものではない、自分自身の純粋な直感。シロガネの内側には、それに基づいた言葉にできない不安感が膨らんでいった。



          ◆ ◆ ◆



「――第三試合はなんと!? まさかまさかの因縁か!? チェーザムでの雪辱を晴らすか、またしても敗れ去ってしまうのか!? “蹴王”ヴェルサスVS“無冠の王”シロ!! もはやこの戦いから、誰も目を離すことはできないィーッ!!」

「ハッ! まさかまさかの展開だな」

「おやおや、そちらが狙ったのではないのですか?」

「こっちもフェアに選出しているからな。まあ、シャルトリューについてはあいつ自ら漏らしたということもあるが」


 MCからは様々な煽り文句が放たれているが、既に二人の耳にそれらは届いていない。


「……さて、今更多くを語る必要はありませんね」

「ああ。その通りだ」


 互いに目の前の敵を倒すのみ――それだけに全神経を集中させている。内に秘めた力を、今か今かと何とか押しとどめている。あとは試合開始の一言で、それを炸裂させるだけ。


「――では第三試合! ラウンドワン! ――ファイッ!!」

「行きます!!」


 シロは腰元から剣を引き抜くと、それをそのまま放り投げる。


「ッ! “あれ”か!!」


 報復者アンサラーと呼ばれるそれは、ひとりでに動き出す武器。ひとたび鞘から離れれば、抜剣した者の意思に従って攻撃を開始する。


「っ、そう何度も同じ手を喰らうか!!」


 金剛脚ダイヤモンドレッグを使うだけのTPがまだ備わっていない現状、ヴェルサスはひたすらにアンサラーの剣の腹(フラー)部分を蹴ることでいなし続ける。しかしその間にも、シロは次の剣を鞘から引き抜こうとしている。


「確か前回はこれにやられたんでしたっけ?」


 魔法剣“倶利伽羅くりから”。その刃の表面に纏わりつくは炎の龍。


「そして今回、この炎龍も貴方に襲い掛かります」


 倶利伽羅をまるで指揮棒のように振るえば、それに合わせて炎の龍が野に放たれる。

 とうぜんここまで、シロの方はTPを消費することなく剣のギミックのみでヴェルサスを攻め立てる。


「チィッ、TPがまだ溜まっていない現状で、手出しはできないが……ッ!」


 それでも尚、近接職として元々備わった身体能力を活かして、ヴェルサスは剣と炎の合間を縫ってシロへと接近を試みようとしている。


「ファーストアタックは貰っていく!!」

「くっ!」


 体をひねって勢いをつけた回転蹴り。倶利伽羅で防ごうとするも、その防御の上からでもシロを数メートルほど後ずさりさせるほどの威力は備わっていた。

 そうして一瞬気を逸らしたことで炎龍はコントロールを失って消えていくが、自律する武器であるアンサラーはいまだ止まっていない。


「てめぇも消えろ!!」


 しかし回転蹴りの勢いそのままに振り向いていたヴェルサスにとって、剣一本の攻撃をいなすなど容易いことでしかない。余った勢いで今度はアンサラーを蹴り飛ばし、コロシアムの壁へと突き刺して無力化していく。


「おいおい! まさか一ヶ月前と同じ戦法って訳でもないだろ!?」


 ヴェルサスの煽りはそのまま、期待の裏返しでもあった。

 自分が負けた相手は、この程度の対策で勝てるような相手の筈がない。自分はもっと強い奴と戦っていたはずだ。


(――こんな初見殺しの数々に負ける程度の俺ではないはずだッ!!)


 そうしたヴェルサスの言葉に応えるかのように、シロはそれまで手に持っていた俱利伽羅を鞘に納めると、元々あるべき勇者の構えとして、剣と盾をそれぞれ手に持ち始める。


「――おっしゃる通り。この程度に負ける相手ならば、ここまで用意をしていませんから」


 彼の名をそのままに受け取ったかのような、純白のコートに似合う一対の聖剣と大盾がシロの手に握られる。

 今にも稲妻が解き放たれそうな電気が、刃の表面にほとばしる。そして全てを断絶するような盾が、シロの半身を隠している。


「――“イージス”と“カラドボルグ”、次はこれらと戦ってもらいましょう」


 ともに伝説。レアリティレベル140の武装でもって、シロはヴェルサスと相対していた。

 書き溜めがまだまとまっていないので次回更新は3/6予定です(´・ω・`)。

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