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高校受験に失敗したのでVtuberで才能を発揮します!  作者: 楪桔梗
第四章 ゴールデンウィーク!

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貸し切り

今日は少し説明が多いかもしれません


木曜日に初の平日配信を終えて二日がたった土曜日。


僕と来夢は当初の予定通り飛行機に乗って東京に行くことに……。


しかし空港は、過去に僕が見た光景とはだいぶ異なっていた。


というのも人が少なすぎる。


福岡や大阪などに行く飛行機には人が多いのに、東京に行く便だけ異様に少ない。というよりも僕たちしかいない。


というのもこれは僕の配信後に起こった事件で、それを知ったのは昨日の朝のニュースでだ。



———————————


金曜日の朝。

学生にとっては平日最後の朝と、明日から休みであることに喜びを見せる朝かもしれないが、僕にとっては普通の朝に過ぎない。


けどこの日だけは違っていた。


朝起きて一番最初に見たのはネットニュース。


昨日の配信で東京に行くと言ってしまい、しでかしたことで取り上げられてないか心配でトリッターを見ると、そこにあったのは土曜日全日に東京の羽田空港と成田空港の国内線全便欠便のネットニュース。


僕はこれほどまでに歓喜したことはない。


何でも、緊急でお偉いさんが来るということになったらしく、ある会社が一日間貸し切りにしたらしい。


結果、その日は国内線が飛ばないとのこと。


まだわかっていないらしいけど、僕としては羽田空港の方に来てほしい。


宮崎からは羽田空港にしか出ていない。

というよりも羽田は国内線メインなので、国内の飛行機はほとんどが羽田空港に向かう。

宮崎もその一つ。


昨日配信前までにみっちり調べたから間違いないと思う。


もしそうなれば、僕は東京に行かなくてもいい!


来夢は「飛行機がダメなら電車で行こうよ」と言い出すかもしれないけど、さっき調べたところによると飛行機で行けなくなったことで、もともと東京に行こうとしていた九州民は電車を使い東京に行くみたい。


そのせいで、ほとんどの特急電車は既に満席。新幹線のチケットも手に入らない状態。

そもそも新幹線の出ている福岡に行くまでの特急が満席なんだから新幹線のチケットが手に入ったとしても意味がない。


そう! 僕にとってこれほど素晴らしいことはない!


日曜日には行けるかもしれないけど、東京滞在の時間を減らせただけでも僕にとってはプラスでしかない。



その時はあまりもの嬉しさに、朝を食べず昼に焼き肉を食べる。などして豪勢に過ごしていた。


そのあとすぐに成田が再開されるとなったとき、僕の幸福度最長に達していた。


……あのメッセージが届くまでは……



「ただいまー。お兄ちゃん! 明日の準備で来たー?」

「おかえりー。……準備って何の?」

「なんのって、東京に行く準備。もしかしてしてないの!?」

「え、だって飛行機使えないんだよ。どうやって行くの?」

「飛行機に決まってるじゃん」

「……バカになったの? 羽田空港は明日お偉いさんが来るとかで欠便になったらしいよ。どうやって行くの」

「……まさか加奈お義姉ちゃんからのメッセージ見てないの?」

「義姉さんからのメッセージ?」


そんなの届いてたかな?


一回確認するとだいぶ前に届いていた。

それも僕が焼き肉を食べている時間に。


内容はいたってシンプル。

飛行機のチケットQRコード。

宮崎から羽田便

搭乗日は土曜日の朝。

チケットの取得日時は今日の金曜日朝10時。


明らかにこのチケットはおかしい。


羽田は本来、明日は全日貸し切り状態だったはず。

なのにこれは羽田空港のチケット。

それも貸し切り日だというのにその日のチケット。


義姉さんがそのことを知らなかったとしても、このチケットは本来手に入らないチケット。

それが今僕のスマホの中にメッセージとして届いている。


「何かの間違いじゃない?」

「私もそう思って聞いてみたけど行けば分かるってそれだけの返信しか返ってこないの。だからとりあえず明日行くわよ!」

「……」


この時、僕の気分は一気にマイナスになった。


そのあとのことはなくなく明日の準備をしたこと以外覚えていない。


本当に何が起こったか全く理解できないけどこれだけは言える。


配信がなくてよかった~。


——————————


「本当に誰もいないね」

「やっぱり何かの間違いだったんじゃないかな?」

「でも待合室には入れたんだよ。絶対何かあると思う!」

「いくら待っても意味ないと思うけどな~」


もともと今日の配信は夜からだし、今は朝。

時間は全然ある。


せっかくだし来夢が諦めるまで一緒にいよう。


そう思った時、スタッフさん数名が僕たちのもとへと寄ってきた。


「お客様。久遠保仁さまとライム様でございますでしょうか?」

「は、はい。そうですけど」

「飛行機の手配がお済です。お荷物を持ちこちらにいらしてください」


案内されるがまま、スタッフさんたちの後についていく。

大きな荷物は入り口受付で渡したので、僕たちの手元には小さなカバンしかない。


それよりも今飛行機の手配が済んでいると言われた気がするけど空耳かな?


案内された場所は搭乗口7番と書かれたゲート前。ここを通ると飛行機に乗り込むことになる。


「QRコードの拝見よろしいでしょうか?」

「はい」


義姉さんに送ってもらったQRコードを見せると通路へと案内され、すぐに飛行機になってしまった。


どうやら先ほどのスタッフの話は空耳ではなく本当みたい。


飛行機内には乗客はおらず、完全に貸し切り状態。


「お兄ちゃん。私たちってどこに座ればいいの?」


僕は飛行機に乗ったことあるが、その時は小さかったからあまり覚えてないけど確か、チケットに席番号が書かれていたはず。


「多分だけどQRコードのどこかに席番号が載ってるんじゃないかな?」


スマホを開きQRコードの画面を確認する。けれど番号なんて何処にも載っていない。


「お客様。当機はそろそろ離陸いたしますのでお席にお座りください」

「あの、何処の席に座ればいいのかわからないんですけど」

「空いているお席にどうぞ」


キャビンアテンダントさんはまるでレストランのスタッフさんのごとく、言ってきた。


その言葉を飛行機内で聞くことなんてこれが最初で最後かもしれない。むしろそうあってほしい。


「お兄ちゃん。飛行機ってレストランみたいなんだね」

「そ、そだねー」


僕はこの時、考えるのを完全にやめた。


来夢は窓側の席に行き、窓から外の景色を眺めていた。


来夢にとって小さいころに乗ったことがあるとはいえ記憶に残ってないので、これが初めての飛行機みたいなもの。


外の景色が気になるのは必然。


かくいう僕もいさしぶりすぎて外が気になってしまう。


そのあとはキャビンアテンダントさんの注意事項を聞いて、外の景色を眺めていた。


来夢に関してはしっかり写真に収めている。


そしてついに離陸の時。


ゆっくりと進んでいく飛行機は、途中で数秒停まり、いい気にスピードを上げて飛び立つ。


来夢はスピードが上がったときもずーっと外を見つめていた。そして離陸するタイミングで我を忘れ大はしゃぎ。


本来なら他のお客さんに迷惑がかかるからはしゃいだらダメだけど、今日は貸し切り状態。いくらはしゃいだところで誰にも迷惑はかからない。


「お兄ちゃん! 町が小さいよ!」

「小さいねー」

「凄い凄い! 雲が真横にあるよ!」

「何も見えないねー」

「耳がキーンってなる!」

「欠伸をすると治るんだよ」

「飛行機の飲み物って普通に買うのとあんまり変わらないね」

「まぁ100パー系ジュースの味はあんまり変わらないよねー」

「人がいないとなんかさみしいね」

「そう? 僕は楽で全然だけど」


こんな感じで来夢は離陸してからずーっとしゃべりっぱなしだ。

僕は「少し眠ってから気が付くともうすぐでつく! 早い!」ってな感じで飛行機に乗っている感じを味わいたいのに。


結局来夢は話すことをやめずに、ずーっと話しているとすぐに東京についてしまった。


「……え、速くない?」

「お兄ちゃんもそう思うよね。もう少し空の旅を味わいたかったのに」


来夢と話しているだけでついてしまった。時間にして1時間40分。


まさか飛行機に乗っている感じを味わうことができるなんて思いもしなかった。


停車した飛行機から降り、通路を歩きながら荷物受け取り場まで向かう。


正直言って羽田空港は宮崎とは比にならないほど広い。

宮崎なら搭乗口まですぐなのに、羽田空港では数分以上かかってしまう。


しかも人がまったくいない。

変な感じがする。

来夢も怖いのか、さっきまでの楽しい感じはなく、ずーっと僕の腕を握っている。

誰もいないだけでも怖いのに、無音なのがさらに拍車をかけている。


少し早歩きをしながら荷物受け取り口まで向かった。そこには数人の人がいてくれたが、客は僕たち二人だけ。


流れてくる荷物も僕たちの荷物のみ。


急いで荷物を取り、出口からロビーに出ると、そこには黒い服を着た大柄な男性が整列して並んでいた。


そして、僕たち出てくるのを見た黒服の人たちは


『久藤保仁さま、来夢さま。ようこそ東京へ!』


声をそろえながら一斉にクラッカーを鳴らしてきた。


次回、約9年ぶりの再会と社長


お楽しみに~

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