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高校受験に失敗したのでVtuberで才能を発揮します!  作者: 楪桔梗
第十七章 『1234』主催イベント! 準備の1週間

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ブース設営


「……でかい」


泊まり込み作業6日目。


一日休息を挟んだ僕たちは今、明日イベントが行われるドーム会場に来ていた。


イベントが行われる会場はかなり大きく、前に言った東京ドームほどではないものの、近くで見ると東京ドームと比べてしまうほどの大きさ。

いや、ちゃんと図ったら東京ドームよりも大きいかもしれない。


「ヤマトン。惚けてないで中に入る」

「あ、はい……」


ドームの中に入るとまず匂ったのはドーム独特のヘアーサロンパスみたいな臭い。


入り口にはたくさんのアルコール消毒液。

入ってすぐにイベント会場というわけではなく、まずは廊下を進み会場の中に入る。


廊下には縦長ベンチがいくつも用意されていて来てくれたお客さんが疲れた時の休憩スペースになりそう。


廊下を見渡した後はイベントの行われる会場へ。


「……広い!」

「だね。私は何回も見てるけど、外観を見た後に中を見ると想像以上に大きいって感じるよ」

「この会場選んだのシグレンだよね。よくこことれたね」

「確かに。私たちが初めて来たときは、本当にここか!? って感じで驚いたもんな」

「あれ、言ってなかったかな。私のMytuber友達の親戚がここ運営していて、相談したら明日明後日なら空いてるからってことで予約取ったんだよ」


獅喰蓮さんのMytuber友達。

流石人気Mytuberというべきなのか、強いつながりを持ってる。


「って、そんなこといいから会場内を見て回ろうか。もしかしたら地図と少し違う場所があるかもしれないからね」


それはそれで前日だと問題がある気が……。


僕たちは一塊になり作業している人たちの邪魔にならないように会場の中を見て回った。

当然、地図と違う場所などがあるはずもなく、明日がどんなふうになるのかを話しながら見て回った。


「よし。会場内は見て回ったし、私たちのブースに行って同人誌やグッズを先に並べようか! ここからはギャイちゃんが指示お願いね」

「了解。まずはチームを分ける。ブース前にある折り畳み机を立てて数分でブースのレイアウトを決める係と車の中にある荷物を持ってくる係」

「これ、ギャイはレイアウト係決定だね。レイアウト指示はいつもギャイにしてもらってるし」

「うん。あとヤマトンもレイアウト係に決定。素人目線も欲しい」

「オッケー。それじゃああと一人は残った方がいいかもね」

「あ、それじゃあ私が残ってもいいかな。実はシグレン達には黙ってたけど今回はコスプレ衣装を出品しようと思ってて。あ、もちろん新品のね」

「それって紅葉ちゃんが車に勝手に積み込んだやつ?」

「うん。そう!」

「分かった。じゃあモミジンもレイアウト係。ということでシグレンと楓は荷物運びお願い。台車は後ろに置いてあるから頑張って」

「はーい」


僕が入り込む余地もなく話し合いで係の組み分けが決まってしまった。


やっぱりコミケなどのイベントを経験している人たちは行動が早い。


獅喰蓮さんと楓さんは荷物を取りに行くため会場の外に出て行き、僕たちは長机と折りたたみいすを広げてレイアウトの話し合いを始めた。


「紅葉さん。服っていくらで売るんですか?」

「えっと、一着一着私の手作りなので、安いやつで5万くらいです」

「それって安いんですか?」


コスプレ衣装の相場なんて調べたことないからよくわからない。

ただ、普通の服なら安くて1000円も行かないことを考えると高い気もするし、一着一着が手作りと考えると安い気もする。


「難しい。普通のコスプレ衣装オーダーメイドならそのくらいする。ただ今回は人気コスプレイヤーのモミジン力作と考えると2~3万くらい安い」

「さらに言うと同じ種類は一着しかないから早い者勝ちで売り切れごめんです」

「うん、そうなるとかなり安い」

「答えがそんなに変わるくらいですか?」

「うん。だってその衣装は世界で一着しか世界に出回っていないんだから」

「因みに私の作ったコスプレ衣装にはギャイちゃんのイラストが載ってるので偽物を作ってもすぐに分かります」

「な、なるほど……」


そう聞くと僕もかなり安い気がしてきた。

もう少し値段を釣り上げても絶対に売れる気がする。


「それで、私の衣装だけどマネキンに着せて展示してもいいかな。それだとコスプレ衣装がどんなのかわかると思うから!」

「確かにいいかも。となるとマネキンはブースの端において見てもらった方がいい。そっちの方が見やすいし私たちが動いてもあまり邪魔にならない」

「マネキンに着せるのは分かったんですけど、もし買われたときはどうするんですか? マネキンごと渡すわけにもいきませんよね」

「ヤマトンの言う通り。私基本ブースにいるけど売り物のコスプレ衣装をマネキンから脱がせられる自信ない」


僕もブースにいる時間は少ないけど数万もする服を触るなんてとてもできない。

この問題を解決しないことにはコスプレ衣装を売ることができない。


僕とギャイ先生がコスプレ衣装販売に難色を示していると、紅葉さんは不敵に笑い待ってましたと言わんばかりの表情を浮かべる。


「その疑念は想定内だよ! 私がいないときにコスプレ衣装が買われたときには整理券みたいなのを渡してくれない? もう用意してるから。そしてマネキンの顔に『売り切れ!!』って張り紙を貼って!」

「つまり既に対策済み」

「うん!」

「ならわかった。モミジンの言った通りにする。ヤマトンもわかった?」

「はい!」


これで急に出てきた衣装の問題は解決した。

ここからはもともと販売する予定だった同人誌やイラスト、グッズの話になる。


「とりあえず決まっていることは今回の面は3つの同人誌。その中でも新作2つがメイン。残りの1つはコミケの売れ残りと思ってもらって構わない」

「今回も大量に刷ったけど前には何冊出すの?」

「1種類20冊予定。あとはいつも通り後ろに置いて前が少なくなったら追加で出す感じ。これはグッズとイラストも同じで」

「オッケー。あとはどういう風に置くかだね」

「うん。どうやって新作2つを売るか」


やはり一番の問題点はそこになった。

新作を売るためにはどうすればいいか。

2作だけなら普通に真ん中に置けばいいけど今回はコミケの売れ残りもあるとのこと。


そうなると話はだいぶ変わって真ん中に2作置くともう1作の置き場所に悩む。

別の場所に置くと少し見栄えが悪くなる。

かと言って新作のどちらか横に置くと、これも少し見栄えが悪い。


新作のどちらかを真ん中に置き、開いている片方に旧作を置くという手もあるけど、少しだけ違和感が出てしまう。


紅葉さんやギャイ先生がその案を出さないのは多分僕と同じことを考えているから。


「……もういっそのこと旧作を真ん中にして新作で挟みませんか?」


流石にこれ以上時間をかけてしまうと3人でしている意味がないので妥協案を出す。


「…………やっぱり難しい。真ん中はそれなりに目立つから新作を置きたいけど、今回は新作2つだから……」

「うーん。……だったらこういうのはどうですか? 新作は猛烈に『新作アピール』するんです。で、旧作はそこまでのアピールはしない、そうすればお客さんの目にはアピールの強い方が写ります。何より、両方本で埋まっているよりも片側が開いている方が取りやすいと思うんです!」

「た、確かに……!?」

「流石ヤマト様! お客のことまで考えるなんて!


ただ、これにも問題点はあるけど今は言わないでおこう。

もし、その問題点をしてしまいそうになったら止めればいいだけだしね。


「あとはグッズだけどこれは実際に見てみないと分からない。イラストはスタンド網があるからそれにかけて、お客さんに見せる」

「グッズによってはスタンド網にかけることもあるんですか?」

「そうなる可能性もおおいにある」

「分かりました」

「おーい! これ重いんだけど何が入ってるの!?」


ちょうど話し合いが終わったタイミングで台車を押す楓さんが戻ってきた。


「あ、あれ私のマネキンと衣装」

「マネキンって重いんですか?」

「1体ならそこまでないですけど、あの中には衣装販売用に加え私が着る用に着せるマネキンも入ってますから、かなり重いと思います」

「……どおりで車が重かったわけ」

「おーい! 手伝ってー!」


することがなくなった僕たちは楓さんから道具をすべて受け取り、早速レイアウトを始めた。

販売用コスプレに関しては衣装に触るのは嫌だったので、僕とギャイ先生はマネキンの組み立て、紅葉さんが衣装を着せることに。


組み立てが終わったとは話し合った通り同人誌を真ん中に置き、イラストをスタンド網にかけ、獅喰蓮さんが一応多めに受け取ったグッズを並べて、ブースの設営を終えた。



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