表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校受験に失敗したのでVtuberで才能を発揮します!  作者: 楪桔梗
第十六章 予定の詰まった八月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

167/372

収録!

「トカゲさん。もう少しゾンビの気持ちを理解して」

「は、はい~!」

「メガノさんはアドリブでダジャレを入れる癖があるみたいだけど、もう少し分かりやすいやつの方がいいと思うわ。少なくともこの場にいる全員が理解できるものを試してみなさい」

「分かりました!」

「ラノさんはゾンビになったときに声が大きすぎるわ。もう少し声を抑えて本物感を出してみて」

「や、やってみます!」

「つばささんはせっかく『です』っていう語尾があるんだから、もう少しその語尾を強めて緊張感を伝えることできない?」

「できます!」

「トープさん。いくら人間としてのセリフが少ないと言っても、ゾンビとしてのセリフがたくさんあるんだから、気を抜いたらダメよ。そうね、セリフが少ないのに納得いっていないならアドリブでセリフを入れてみたら?」

「そ、その手がありました!」

「ゾーナさんに言えることは1つ。ラスボスとしてなかなかいいわよ。流石ゾンビね。しっかり役になり切れているわ」

「ヤマト様の前です。下手な演技はできません!」


現在、一通り通し終わった後に母さんが演技指導を行っている。


僕はそれを少し離れたところから音楽を聴き、楽譜を見ながら横目で眺めていた。


母さんのナレーションと僕のセリフは既に取り終え、一発合格。

最初は6人とも基準としては合格だったんだけど、それに母さんが待ったをかけて持った力を発揮できなかった6人は取り直すことに。


僕が楽曲を覚えないといけない関係上、母さんの提案はすぐに通った。


皆さん母さんの演技指導を受けられてなんか嬉しそう。


そこから母さんもスタッフの中に混じり、それぞれの収録を聞きながら変なところ、悪いところには口を出し、良かったところはしっかりと褒めて飴と鞭を使い分けていた。


僕が『ハロウィンイベント』だけでなく『クリスマスイベント』でも歌わないといけない曲を覚えたころには収録も終盤に差し掛かっており、全員のレベルが格段に上がっているのを確認できた。


「……オッケー! トカゲさん、よかったわよ。特に饒舌でしゃべるところはよく頑張ったわね」

「あ、ありがとう……ございます!」


トカゲさんに至っては、最初は小さな声で少し聞き取りづらいところもあったけど、今では普通の大きさで話すことができている。


「よし。これで全員のセリフ収録終了だね。ヤマト君はどう? 行けそう?」

「はい、問題ないです」

「よし! それじゃあ早速レコーディングと行こうか! 一応12時まで後1時間はあるけど、みんな一発で取り終えられるように頑張って。撫子さん、何かアドバイスとかあればお願いします」

「まだ聞いてないからどんな曲かは詳しくは分からないけど、私からは1つ。歌うときはただ音程に合わせたりするんじゃなくて、曲に(いる役に)なり切りなさい」

『はい!』


母さんのアドバイスは少し難しいけど、母さんのアドバイスを受けたゾーナさんたちは一発で理解することができたみたい。


「それでは収録していきますね。廊下を出て周りの扉にそれぞれの名前が書かれた紙が貼られていますので、その部屋に入って収録してください。撫子さんはこの控室で待機お願いします。パソコンからそれぞれのレコーディング様子を見ることができますので、ぜひ拝見しながら待っててください。それでは」


秋月さんが部屋に出ていった後、僕たちはそれぞれ準備を済ませてから収録部屋から出ていく。


僕の部屋は収録部屋から少し離れた場所。

中に入るとすでにマイクが建てられていて、目の前には新曲の歌詞が。


少し離れたところに椅子があり、その上にヘッドホンが置かれている。


一先ずヘッドホンを耳に当て、マイクの前で指示があるのを待つ。


『はい、それじゃあレコーディングを始めていきます』

「お願いします」

『肩の力を抜いて気を軽くして歌ってねぇ』


あまり緊張しない方だけど、流石に母さんが聞いていると思うと少し緊張してしまう。


今までは来夢の目の前だけだったからなぁ……。

あと、この部屋の中のにおい。どこかで嗅いだことあるにおいだと思ったけど、中学の頃の視聴覚室を思い出す。


癖になるんだよなぁ。


『それでは行きまーす』


おっと。

そろそろ集中していかないとね。




気持ちを切り替え、僕の歌わないといけない部分はしっかり歌い、他のメンバーが歌う部分は頭の中で歌いながら、入りだしのタイミングを計りながら歌った。


『はいオッケーでーす。お疲れさまでした。あとは控室でお待ちくださーい』

「ありがとうございました」


結果は一発合格。

全く緊張しなかったと言えば嘘になるけど、いつも家で歌う時と変わりない気持ちで歌うことができた。


自分の中でも高得点を与えることができる出来だったと思う。


控室に戻ると室内には誰もいなかった。


てっきり母さんがいるものかと思っていたけど……トイレかな?


仕方ないので秋月さんの言っていたパソコンのまで他の皆さんの状況を見ようとすると、ラノさんの収録部屋になぜか母さんが写り込んでいて話をしていた。


しばらくすると部屋を出て、次はゾーナさんの部屋。その次はつばささんの部屋。

そして控室に戻ってきた。


「あら、ヤマト。終わったのね」

「うん。母さんは何をしていたの?」

「少しアドバイスをね。……ほらラノさんはさっきまで少し音程が高かったけど2音ほど下げ見たらって言ったらよくなったわ。ゾーナさんは少しテンポが速かったからヤマトと一緒に居る時間で話しながら歌ってみてって言ったらいいスピード。つばささんは室内のにおいに集中しすぎていたから深呼吸させたらにおいにも慣れたみたいね」

「……」


母さんは楽しそうにそれぞれの成長を見ているけど、最初から見ていない僕からしたら何のことかさっぱり。


とりあえず母さんのアドバイスでよくなった、ということは分かった。


それから50分経った頃に全員のレコーディングが終わり、午前中の収録が終了した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ