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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
記念SS系

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アスカと町のお友達


「ん~、今日もいい天気!」


 私はアスカ、アルバの町に住む十三歳の普通の冒険者。今は住んでいる宿のお手伝いをしている。


「アスカちゃん、ご苦労様。ジュース飲むでしょ?」


「ありがとうございます、ミーシャさん」


 午前の仕事であるシーツの洗濯を終えて、食堂へ戻ると宿の女将のミーシャさんにジュースを貰う。


「ん~、このいっぱいで生き返る~」


「アスカ、そのおじさんっぽい仕草はやめた方が良いわよ」


「そうだよ、おねえちゃん。おねえちゃん目当てのお客さんも目が覚めちゃうよ」


「私目当てのお客さんなんていないから大丈夫」


「もう~、ほんとのことなのに……」


 そんな風に私を買ってくれているのが、宿の一人娘のエレンちゃん。私のことをお姉ちゃんと慕ってくれる可愛い妹だ。血はつながってないけどね。そして、私に仕草を注意してくれたのがエステルさん。こちらはエレンちゃんと正反対で、長い髪にキリッとした目つきを持ち、背も高いお姉さんだ。まあ、お姉さんと言ってもまだ十五歳だからそこまで歳は離れてないけどね。だけど、掃除や洗濯に料理までマルチに活躍してくれるから、心の中では頼れるお姉さんだと思っている。


「あらあら、二人もお仕事が終わったのね。お疲れ様」


「あっ、すみません。ミーシャさん」


「お母さん、ありがと~」


 ミーシャさんがエステルさんたちにも順番にジュースを振舞う。本当にいいお母さんだなぁ。


「おっ、みんな揃ってるな」


 そんなことを考えながらジュースを飲んでいると、厨房からライギルさんがやって来た。ライギルさんはこの宿の料理人兼ミーシャさんの夫だ。料理の研究にも熱心で、日夜新しい料理を開拓している。


「あら、あなた。この時間に食堂へ来るなんて珍しいわね」


「いや~、実はな。料理を作っていたんだが、食材が足りなくなりそうなんだ」


「食材が足りないなんて、ライギルさんにしては珍しいですね」


「ひょっとしてお父さん、また隠れて料理の研究してたんじゃ……」


「ち、違うぞ。あの時はたまたま時間が余ってたんだ」


「ほんとかなぁ?」


 あっ、またエレンちゃんが冷たい目でライギルさんを見てる。この前、新しいオーブンを導入した時から、エレンちゃんの視線が時々ああなるんだよね。実の娘にあんな目で見られてかわいそうなライギルさん。まあ、原因はライギルさんにもあるから、しょうがないか。


「本当に誤解だ。今日はそもそも仕入れの量がいつもより少なかったんだ。夕方の部と被らない食材で誰かに不足分を買ってきて欲しいんだよ」


「困ったわね。お昼の部まで後一時間でしょう? 市場に行って帰ってくるだけでも結構かかるんじゃないかしら?」


「うっ、それはそうなんだが……」


「私、行ってきましょうか?」


「アスカちゃん大丈夫? あまり時間もないけど」


「はい。ちょっとずるになっちゃいますけど、間に合うように帰ってきます」


 私は一度部屋へ戻ってマジックバッグを持ってくると、買い物リストを預かる。


「あれ? 足りないのってこんなにあるんですか?」


 リストには食材の他にもいくつか調味料が載っていた。


「いや~、アスカが行くならマジックバッグだろ? ついでに……いててて」


「あなた! 迷惑をかけているんだから反省しなさい!!」


「わ、悪かったよ、アスカ。別にリストの下の方は買ってこなくてもいいからな」


「いえ、時間が余ったら買って来ますね」


「ごめんなさいアスカちゃん。気を付けて行ってきてね」


「はい」


 エステルさんたちに見送られながら宿を出る。



「さて、とりあえず目的の物を買うために市場へ急がないと。フライ!」


 私は風の魔法で空へと飛び上がると、一直線に市場を目指す。後は人気のないところへ降りたら市場はすぐだ。


「そして、次はフォローの魔法でと……」


 フライの魔法が空を飛べるなら、フォローは身体の調子を整えて動きを良くする火の魔法だ。これで小路から一気に市場の前まで移動する。


「ふぅ、出だしは順調。後は買い物をするだけだね」


 早速、リストの上から必要なものを探していく。一番重要な足りない果物はすぐに見つかったので先に買ってマジックバッグへ入れておく。


「おじさん、ウルロジください!」


「おっ、アスカちゃん。今日は珍しい時間に会うねぇ。いくつだい?」


「えっと、四個です」


 私は果物屋のおじさんにウルロジを頼む。ウルロジとはマンゴーに似た食べ物で、市場で買える果物の中ではそれなりに安い上に、美味しいから私も大好きな果物だ。

 マンゴーと違うところといえば、皮が分厚いから食べる時は食感の違う皮の部分と果肉を切り分けることかな?


「ほいよ、ウルロジ四個ね。大銅貨四枚だよ」


「四枚ですね。銀貨でも良いですか?」


「ああ、もちろんさ」


「じゃあ、これで。ありがとう、おじさん」


「またな、アスカちゃん!」


 一つ目の目的の品を手に入れ、次のお店へと向かう。


「えっと、次はカーグに……お野菜か。じゃあ、あっちだね」


 上から順番にメモに載っている商品を購入していく。ただ、追加の食材というだけあって、三軒ほど店を回ると目的のものは揃った。



「うん、これでひとまず必要なものは揃ったね。後は調味料とかか……それならあそこだね!」


 私は豊富に調味料を扱っているお店を思い浮かべ店へ向かった。


「いらっしゃいませ~。あっ、アスカ!」


「こんにちは、セレナちゃん。見ていって良い?」


「セレナでいいってば。どうぞ、どうぞ」


 ここは最近知り合った、セレナちゃんのお父さんが経営している輸入食料品店だ。ひと月の営業日は少ないけど、他の大陸から輸入した調味料を扱っている。

 営業日が少ないのは、大きい商会じゃないから直接買い付けに行っているからだ。その分、こういう物が欲しいとか要望も汲んでくれるからライギルさんも使っていて、以前お使いに来た時にセレナちゃんとも知り合った。


「それで、今日は何を買いに来たの?」


「えっとね、ここにリストがあるんだけど……」


 私はライギルさんから渡されたリストをセレナちゃんに見せる。


「ああ、ここに載ってるのなら今は在庫にあるわよ。取るわね」


「ありがとう、セレナちゃん」


 セレナちゃんはリストとにらめっこしながら、棚にある商品を取っていく。


「買いてあるのはこれだけね。アスカが欲しいものはないの?」


「う~ん、他の大陸のものだよね。珍しいのはある?」


 さすがに日本にあったものはないだろうけど、似たようなものはないかなと思って希望を伝えてみる。


「珍しいものねぇ~。こういうのはどう? スモールロッドって言う香辛料よ」


「スモールロッド?」


 セレナちゃんが出してきたのは名前の通り、ロッドを縮めたようなかわいい香辛料だった。私は一つだけ手に取り香りを嗅いでみる。


「いい香り~。スパイシーな匂いの中に甘さも感じるね」


「でしょ? 肉料理とかに使うだけじゃなくて防腐作用まであるんだって!」


「すごい! でもお高いんでしょう?」


「それが何と! 今はこの百グラム一ビンで銀貨四枚です!」


「えぇ~、お安い!」


「セレナ、アスカちゃんまで巻き込んで何をやっているんだい?」


「あっ、おじさん」


 私たちが通販番組のような三文芝居をしていると、他のお客さんの相手をしていたセレナちゃんのお父さんが声をかけて来た。


「パパ、今アスカにスモールロッドを見せてたの。こっちじゃまだあまり認知されてないからいい機会だと思って」


「スモールロッドか……まあ、機会としてはいいかもしれないな。ライギルなら生かせそうだ」


「おじさんは他に使い方知りませんか?」


 さすがに海を渡るのは危険だから、セレナちゃんは買い付けの時はお留守番だ。帰ってきてから商品の情報をおじさんに教えてもらってはいるけど、おじさんしか知らないこともあるかもしれない。


「う~ん、スモールロッドなら干し肉みたいな料理にも使われていたな。ほら、防腐作用があるって言ってただろう? それを生かしたもので向こうでは色々使われているらしい」


「なるほど!」


 これは良いことを聞いた。ちょっと高いのは気になるけど、燻製肉を作っている肉屋のおじさんの役に立てるかもしれない。味のバリエーションが増えるのは嬉しいし、私は自分用にスモールロッドといくつかの香辛料を買うことにした。


「アスカ、本当にそんなに買って大丈夫なの?」


「大丈夫。最近は細工の収入も入ってきてるし、美味しいものを食べたいから。今後ともセレナちゃんのお父さんには頑張って欲しいしね」


「アスカったら口が上手いんだから。はい」


「ありがとう」


 他にも宿で使えそうな調味料と一緒に包んでもらい、セレナちゃんから受け取る。


「こちらこそ。アスカも暇があったら遊びましょう。もうすぐまたパパが船に乗っちゃうから暇になるの」


「うん。その時は予定を開けるよ」


 セレナちゃんのお父さんのお店は仕入れに二か月はかかる。さすがにその間に在庫は切れてしまうので、売り切れ次第セレナちゃんは暇になってしまうのだ。


「アスカちゃん、ありがとう。ライギルにもよろしく」


「はい、おじさん。また珍しいもの待ってます」


「またね~」


 私は二人と別れると宿へと戻った。



「ただいま戻りました~」


「アスカちゃんお帰り。どうだった?」


「探し物は全部ありました。それと他にもいくつか面白そうなものを買ってます」


「本当か? 明日にでも見せてくれ」


「は~い。それじゃあ、調理場に行きましょう」


 私はライギルさんと一緒に調理場へと向かい、買って来たものを出していく。


「おっ、このウルロジはなかなか良い熟し具合だな。調味料まで……悪いな。後でミーシャに使った金額を貰ってくれ」


「分かりました。ライギルさんはこれから頑張ってくださいね」


「おう! アスカの分はちょっとおまけしておくな」


「そんな~、別にいいですよ。でも、目立たないようにしてくださいね」


「ははは、エレンに言っておく」


 ライギルさんに頼まれたものを渡すと部屋へと戻る。


「セレナちゃんと約束したし、どこへ遊びに行こうかなぁ」


 私は次にセレナちゃんとどこへ行くか、行き先を楽しみに考えたのだった。




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