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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
終章 世界へ羽ばたく

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新しい味


「で、話と全く関係ないこの調味料を三本も奪って来たって言うのかい?」


「き、聞き捨てなりませんね。ちゃんとレシピを書いて渡すのでと譲ってもらったんですよ」


 私は醤油が欲しくなって、会長にお願いしてその場で一本銀貨一枚で売ってもらったのだ。ただし、まだ流通ではなくどう使うかの商品研究段階なので、レシピ等の一部公開を求められたがそれは問題ない。


「だって、うちには料理好きな人が三人もいるもんね~」


「三人? ライギルさんとエステルと後は誰だ?」


「何言ってるのノヴァ。リュートがいるでしょ?」


「僕は別にそこまで料理に熱心じゃないよ?」


「でも、野営中にも作れるような料理は色々試してるよね? ライギルさんたちはあくまで街での消費に貢献するから、それじゃ冒険者相手に売る店がなくなっちゃうからよろしくね。あの調味料私好きなんだ~」


 はいとまずは醤油を一本渡す。それにしても誰だか知らないけど、作り方を知ってるのか研究の成果か知らないけど、ありがとうございます。どうしても洋風の味付けばっかりだったし、これで和食が広まるといいなぁ。


「アスカと食べたあの料理は美味しかったけど、どういうのに合うのかってまだよく分かってないんだけど……」


「なら、アルバに帰ったらすぐにみんなで研究会開こうね!」


「なんか、アスカがこれまでにないぐらいのやる気だな」


「当然だよ! だって、この調味料はむか~しよく使ってたんだ。でも、特定の地域でしか買えなかったし、作り方も分かんないからもう諦めてたの」


「そりゃ、力が入るわけだ。アスカに食べ物だからね」


「帰ったらすぐにでも使い方を教えるからね。といっても私は料理できないから、レシピは教えられないけど」


「はぁ~、分かったよ。でも、この量で足りるかな?」


「研究に使うから大丈夫じゃないの?」


「アスカはあの二人が新しい調味料で騒がないと思ってるの? 絶対に次はいつだって言うと思うよ」


「結構味が濃いからそんなに使わないと思うけどなぁ」


「そうだといいんだけど……」


「それで、目的の話は出来たのかい?」


「はい! 来週の式典の日に来てくれるみたいです」


「それって誰でも行けんのか?」


「私が許可したら多分ね」


「へぇ~、それじゃあたしも行ってみようかね。どんなものになるか興味あるしね」


「ぜひ来てください。式典って言ってもそんなに信者の人がいるわけじゃないから、出席者も少ないんです」


「ちなみに今来てくれるのはどのぐらいなの?」


「ドーマン商会の人が二人とラーナちゃんと街の人が数人かな? レディトの人も来ようとしてくれたんだけど、定期馬車も高くなっちゃって、難しいんだって」


「へ~、僕も行こうかな」


「無理しなくてもいいよ。フィアルさんも来ないしね」


「そうなのか? あの人のことだから行きそうだけどな」


「フィアルはああ見えて、シェルレーネ教の教えに忠実でね。よっぽどのことがないと他の宗教行事には行かないよ」


「そうなのか。なら俺もやめとくか、孤児院もシェルレーネ教の補助が出てるし、その下の聖霊様って言ってもあんまりいい顔されないしな」


「事情があるなら別にいいよ。リュートはどうする?」


「僕は出るよ。時間とか分かる?」


「うん。五日後の十時だよ」


「分かった。遅れないようにする」


「よろしくね」


 式典の話をして食事も済ます。今日は以前に言っていたマスターさんの息子さんが新しく開いたお店だ。マスターさんの料理は結構特徴的というか、だしとか味もコクがあったんだけど、息子さんの方は食べてみたらより大衆的な味だった。

 悪い意味じゃなくて、地方の料理を住んでいる土地向けにアレンジした感じで、食べやすかったのだ。


「僕的にはありだね。調味料とかはちゃんと調べないと分からないけど、基本の物が多くて馴染みやすいし揃えやすいよ。これなら野営にも使いやすいと思う」


「私は味でいうならマスターさんの店かなぁ。やっぱり、本格的な味がしてあっちの方が好みかも」


「俺はどっちでもいいぜ。あっちは癖の強い料理はそのままだから食えない料理もあるしな」


「それに関してはあたしも同意見だね。こっちはさっと行って食べるなら向いてるね。ただ、それならおっさんの店の方が旨いとは思うけどね」


「あ~、それはそうかも。こっちは炒め物とか色々な調理法で出て来ますけど、あっちはスープとか煮込み料理中心ですから出てくるのも早いですし、コクがありますね」


「ま、その辺は好みだろうけど入りやすくはなったね」


「雰囲気はマスターさんの店が一番ですけどね」


「まあね。普段行くならここかおっさんの店で、くつろぎたいならあそこかね。急かされることもないし」


 そう。リニューアルしたおじさんの店もマスターさんの息子さんの店も結構混む。お酒を頼んでしばらく滞在する客がいる中、ただ料理を食べる人間は混んでいるし、落ち着いて食べるって感じではないのだ。人気店ならではの問題かな。


「アルナ的にはどうだった?」


《ピィ》


 アルナも食事は落ち着いているのがいいらしく、マスターさんの店が好みみたいだった。


「さて、明日も早いし寝るとするか。んじゃね」


 宿に戻ってきた私たちは二部屋に分かれて眠る。明日は依頼を受けてアルバに戻る日だ。



《ピィ》


「うん……おはようアルナ。起こしてくれてありがとね」


 アルナに起こしてもらって朝食を取る。やっぱり、街が変わるとパンが変わるのは何とかして欲しいなぁ。といっても小麦の品質にもよるから簡単にはいかないけどね。


「アスカ、今日の依頼はどうする?」


「ギルドで見ますけど、どうでしょうね。護衛依頼があればいいんですけど……」


 食事も終えたし早速みんなでギルドへ向かって依頼を探す。


「護衛依頼は……あった! でも、ちょっと安いかなぁ一人銀貨一枚と大銅貨五枚かぁ」


 街道でもそこそこ魔物が出るから、この金額だとなぁ。四人だからせめて銀貨八枚は欲しい。他の依頼は明日出発か、どうしよう。


「アスカどうだい?」


「ジャネットさん、これなんですけど……」


「ちょっと安いけど、今日受けられるのはこれぐらいか。仕方ないかねぇ。依頼料は安いけど支払いに問題のある商会じゃないし」


 依頼を受けずにというわけにもいかないので、結局この依頼を受けることにした。


「いや~、助かりましたよ。今日出発できないと商品が痛むところでした」


「ならもうちょっと依頼料を上げてくれてもよかったんだけどねぇ」


「うちもそうしたいんですが、会長がこれ以上は出せないというので」


「商品が傷んでもかい?」


「ええ、多少なら利益は変わらないからということです。売るこっちは大変ですけどね」


 よくよく話を聞いてみると、なんだかんだで私たちのようなパーティーが受けてくれるので、そこまで出発が遅くなることはないらしい。Cランクの人も増えてきたし、依頼も余ることが少ないから何とかやって行けるみたいだ。

 結局、護衛依頼中にはオーガ二体とオーク種四体に出くわした。どちらもレディトを出発してアルバとの中間地点前に出たもので、それ以降は何も出なかった。



「無事到着出来ました。ありがとうございます」


「こっちも仕事だからね」


「きちんとギルドには報告しておきますよ」


「頼んだよ」


 こうして今回の式典出席依頼のためのレディト行きは無事に終わった。


「さて、街に戻ってきたし早速、新しい調味料を配らないとね」


 私はリュートを連れて宿へ帰る。


「ただいま~」


「あっ、おねえちゃんにリュートさん。お疲れ様」


「あら、二人で帰ってくるなんて珍しいわね」


「エステルさん。今日はライギルさんとエステルさんの二人にお土産ですよ」


「あら、悪いわね」


「エステル、アスカのお土産って調味料だから」


「へぇ? 何か変わったものなの?」


「うん。お醤油って言って、珍しい輸入物の調味料なんだよ」


「何ですって!? すぐに試したいんだけど、現物はあるの?」


「はい! 厨房に行きましょう」


 私は身重のミーシャさんに変わって宿のホールを仕切っているエレンちゃんに断りを入れて、厨房に向かう。


「お、アスカか。どうした? また肉でも持ち帰ったのか?」


「ううん。今日はまだないんだけど、これを見て欲しいの」


 私はバッグから醤油を取り出す。


「何だこの黒いやつは? 酒か何かか?」


「調味料の一種でお醤油って言うの。このまま使っても美味しいし、砂糖とか他の調味料と混ぜても美味しいんだよ」


「何!? ちょっと味見させてくれ!」


「いいですよ。エステルさんもどうぞ」


 私は小皿を三つ用意して、エステルさんとライギルさんだけでなくリュートにも味見してもらう。


「少量だがしょっぱいな」


「確かに。でも、煮物とかにも十分使えそうな味ね」


「はい。だしがちょっと難しいですけど、照り焼きとかも美味しいですよ」


 私は入手の経緯とレシピが必要なことを説明する。


「ふむ。これならいくらでもとは言わないがすぐに思いつく。エステルはどうだ?」


「私も今まで使ってこなかったり、避けていた食材も使えると思います」


「僕はそこまで詳しくないから二人が作ってくれた物を元に簡単にするぐらいかな」


「その方が一般の人には良いだろうから、リュートも頑張ってね。それじゃ、まずは二人に一本ずつ渡しておきますから頑張ってくださいね」


「任せておけ」


「きっと美味しい料理を考えて見せるわ」


 二人ともそういうとすぐに話し合いになったので、私たちはそっと厨房を出た。出る時にちょっと声をかける。


「頑張りすぎてまたミーシャさんに怒られないようにお願いしますね」


「……気を付ける。時期が時期だしな」


「ええ。夜遅くなる前には帰るわね」


 二人の言葉を信じて私たちは疲れた体を休めるためにそれぞれ部屋に戻った。


「エミール、アルナ。二人が無理しないように見張っててくれる?」


《ピィ》


《ピッ》


 私が見てると言いたいところだけど、自分も細工で忙しい時は時間を忘れるので、二羽にも頼むことにする。

 美味しい料理は食べたいけど、ミーシャさんも妊娠中で宿に出てこれない日もあるし、負担をかけたくないからね。



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