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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
終章 世界へ羽ばたく

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出席依頼


 マスターさんの新店で料理を堪能した次の日、私は時間通りにドーマン商会を訪れていた。


「こんにちは~。この時間に待ち合わせているんですけど……」


「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


 いつも通される部屋より一つ奥の部屋に通される。部屋へ入るとすでにセーマン会長とトーマス店長が待っていた。


「待たせちゃいました?」


「いえ、お連れの方は?」


「ちょっとお店で待ってもらってます」


「そうでしたか、では早速」


 メイドさんらしき人がお茶と手に取りやすいお菓子を置いてくれると退出した。


「では、今回のお話なのですが実はですね……」


 私はこの前ムルムルに勧められた聖霊の登録について話す。


「なるほど。今後は信仰の普及にも勤められるわけですな」


「はい。中央神殿の方でも受け付けてもらえるみたいですが、せっかくなのでアルバの教会にはご神体を置こうと思って。それのお披露目と聖霊としての登録を記念して、来週に簡単な式典が行われるんです」


「それはうちの商会にとっても喜ばしいですな。トーマス、日程の調整は任せるぞ」


「はい。うちからは会長お一人で?」


「いや、一人というのはよろしくないな。せっかくだし各地を回っている御者も出させよう。信仰を広めることを考えるならあいつが最適だ。わしはそこまで自由に動けんからな。アスカ様、ぜひうちにも神殿に提出された教義書の写しと、アラシェル様の像をお預けください。必ず、お役に立って見せましょう」


「私は出て頂けるだけでも嬉しいんですけど、そこまでしてもらっていいんですか?」


「ええ。うちの商会もアスカ様と取引するようになって、業績も安定して伸びておりますし、ぜひお願いしますよ。もちろん、アラシェル様のことだけでなく細工や魔道具の相談でも構いませんがね」


「ありがとうございます! 式典の出席もどれだけ人が呼べるか心配だったんですよ。それと魔道具のことで一つ相談してもいいですか?」


「何なりと、トーマス。準備を」


「はっ」


 トーマスさんがメモではなく何かの用紙を用意している。商売のことだと書きやすいフォーマットがあるんだろう。


「相談というのは魔道具の製造なんです。結構手間のかかる魔道具でして」


「ちなみにどのような効果を持っている魔道具なのですか?」


「オークメイジの魔石を使用したもので、箱の中身の温度を周囲より二十五度ぐらい下げるというものなんです」


「なるほど、保存用の魔道具ですね。オークメイジの魔石はそこそこの値段で取引していますが、そんなに手間がかかるのですか?」


「ちょっと見てもらえますか?」


 私は自分用の携帯型コールドボックスを出して、神殿に納品する魔石を取り付け即席で完成させる。


「これが現物ですか? これは……銀ですか?」


「はい。ちなみに中身の板は費用も考えて銅板にしてます。それでも結構な金額になりまして……」


「確かにそうでしょう。フレーム部分もしっかり作られていて丈夫ですし、周囲の素材が全部銀ではかなりの手間でしょう」


「それで、これはどのように使うので?」


「室内だとただ中に入れたものを冷やすだけですが、地下室に置いたら凍らせたデザートとかを出すことも出来ます」


「地下室ですか?」


「はい。地上だと気温が高くて夏は冷やすので精一杯ですが、地下室に置けば凍らせるぐらいに冷やせるんです。もちろん魔力の消費も高くなるので、一般人には難しいですが」


「ほう? 貴族や裕福な商人向けの商品ですか、アスカ様にしては珍しいですね」


「元々は宿の人たちのために作ったんで、そういう意識はなかったんです。でも、素材の関係で安く作れないんですよね」


「まあ、鉄ではすぐに錆びるでしょうし、木などでは腐食が頻繁に起こるでしょうね」


 トーマスさんもセーマンさんもさすがは商人だけあって、知識も豊富だ。これが中々コストダウン出来ない作りということも分かってくれたみたいだ。


「それと材料に使う銀なんですが、私も細工に使いますし、個人でこれを作るだけの量を手に入れるのが大変なんです。そこで、こちらの商会でコールドボックスを作ってもらえないかなって思いまして……」


「確かにうちの抱えている魔道具師に作らせることはできるでしょう。費用は掛かりますが貴族相手にも売れる商品ですし。ですが、アスカ様が個人で作られてもかなりの利益が出るのでは?」


「それはそうなんですけど、もうすぐ旅に出る予定ですし、最近作って欲しいという要望が結構来てるんです。今は知り合いからなので待ってもらったりできますけど、その内これを作るために時間を取られそうで……」


「まあ、氷菓子と言えば冬の物ということで、それが毎日食べられるとなれば一気に人気が出るでしょうな」


「で、ですよね! だから、私が作ってるって噂が広まる前に何とかしたいんですよ」


「分かりました。この魔道具についてはうちで責任を持って作らせてもらいましょう。トーマス、魔導具師のリストの上から四名の名前を出しておけ。その中から優秀且つ、まともな者を選んで私が直接話をする」


「会長自らですか?」


「これは必ず、この国……いや世界中で売れるだろう。その辺の二流にやらせるわけにはいかん。それと工房の準備だ。細工師も確保しておけよ。貴族相手にそのまま売るわけにはいかん。相手の家紋から領地の特産まで要望に応えられる奴を選んでおけ」


「はっ! 期待に応えられるものをピックアップします」


「そ、そこまで力を入れて頂かなくても……」


「いえいえ、あの魔石は冒険者が取ってくる中でもちょっと水を温めたりと利用自体は多いのですが、ここまで素晴らしい利用方法はありませんでした。きっと広まりますよ。うちの商会に話をしていただけて幸いです。販売価格は小さい方で金貨二十枚、それ以上については応相談として一台当たり、価格の二割を納めさせて頂きますよ」


「で、でも、作るのに費用で五割は持っていかれますし、輸送料も重くて高いのでは?」


「それを考えても、十分こちらも商売出来ますから。他にこの魔石を利用したものは何かありますかな?」


「後はお風呂ぐらいですかね~」


 何気なく私は言ってみる。しかし、その言葉を聞いた二人はすごくびっくりしていた。


「風呂っ!? まさか熱湯をあの魔石で作れるのですか?」


「熱湯といっても四十度ぐらいです。冬はちょっと温いかもしれないですけど、問題ないですかね。それがどうかしました?」


「いえ、お風呂を作るには火の魔石を使うのが常識でして。知っての通り火の魔石は使い捨ての火種の魔道具から始まり、本当に多くの物に使われていてとても高いのです。それがちょっと水を温める程度と思われているオークメイジの魔石で賄えるなら、かなりのコストダウンですよ」


「ああ。しかし、有用だと知られれば今後は値上がりがあるだろうな。すぐに魔石を手配しよう。失礼」


 セーマンさんは立ち上がるとすぐに部屋を出て行って、商会員に指示を出している。本当に商人さんはこういう時、動きが早いなぁ。


「お待たせいたしました。それでお風呂の件ですが、魔石はともかくとしてどのような作りになっていますか?」


「それはですね。グラントリルの石材を持ってきてもらって……」


 私はコールドボックスと同じく、お風呂についても説明する。


「なるほど。あの石材であればかなりの値が致しますな。しかし、貴族相手の商売と考えればそれも納得でしょう。一般家庭ではあまり魔力がありませんので、複数の魔道具は難しいですから、こちらの取引相手は貴族に絞りましょう。それにしても細工師がこちらにも必要になるな。募集をかけるか……」


「では、細工の町に依頼を出しましょうか?」


「まて、トーマス。あそこに依頼をしてもろくな者が来ない。ギルドが渋っているのか、質がそもそもよくないか分からんが、他のところから連れてこい」


「それでは時間がかかりますが……」


「う~む、困ったな。普段細工物を納めてもらっている者に作ってもらうのも難しいしな」


「それなら二人ほど心当たりがあります。ただ、二人とも普段は金属の細工をしていないのでどうなるかは分かりませんけど……」


「いや、アスカ様が気になるほどの人物であれば声をかけさせてもらいます。人材はいくらいても困りませんからね」


 私が紹介したのはこの前ムルムルがお土産に買った家具屋さんと、自然石を使ったブレスレットなどを売っているお兄さんだ。なぜこの二人かというと、家具屋のお兄さんは豊富な種類の細工をしているからで、自然石の方のお兄さんは貴族ならきっとその内、露天風呂みたいな自然を再現することを言い出すのではないかと思ったからだ。特別感を大事にする貴族なら豪華な浴槽だと飽きると言う考えだ。


「では、この件もこちらで対処いたします」


「よろしくお願いします」


 これで、旅の最中に大量の発注を受けて足止めを喰らうことはなくなった。満足して部屋を出ようとすると呼び止められた。


「ああ、お連れの方もお呼びいたしましたので、是非こちらに座っていてください」


 書類の束が片付けられると、再びメイドさんがやって来て飲み物を新しくしてくれる。そして、リュートとアルナもやって来た。


「アスカ、話は終わったの?」


「うん。最近忙しくなってたから、解消できるようにお願いしてたの」


《ピィ》


 アルナもこれでまた遊べると元気いっぱいだ。


「さあ、お待たせしました。こちらが我が商会の料理です」


 話に夢中になっていたけど、どうやらもうお昼頃らしい。今日この部屋を選んだのは一度、料理を振舞いたかったからとのことだ。


「では並べさせていただきますね」


 持って来られた料理は特に変わったものではなかった。宿とか他の店でも見られるもので、見た目は普通だ。


「ん、あれ?」


 一口食べて違和感がある。この色はデミグラスソースだと思ってたんだけど、この味は……。


「おしょうゆ?」


「おおっ! さすがはアスカ様。こちらの調味料をご存じでしたか。最近西の国から流れてきた物で、今後商会で取り扱おうと思っているのですが、ぜひ意見を聞きたいと思いまして」


「これは絶対に売れます。というか私も買いたいです、どこに売ってますか?」


「い、今はまだ試験的に購入しておりまして店舗では扱っていません。この商会ではなく弟のやっている食料品の商会でやろうかと思ってまして……」


「そのままでも、色々な物と混ぜてもすごく使い易いのでぜひお願いします!」


 和食っぽいのは今まであんまりなかったからこの機会を逃してはいけないと、押しに押しておいた。これで旅の前には購入できるだろう。



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― 新着の感想 ―
今まで食に関してはあまり驚かなかったアスカがメチャクチャ食い付いて来て、セーマン会長もびっくりだろうね。
[気になる点] >「おしょうゆ?」 >「そのままでも色んなものと混ぜてもすごく使い易いのでぜひお願いします!」 >和食っぽいのは今まであんまりなかったからこの機会を逃してはいけないと、押しに押しておい…
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