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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
終章 世界へ羽ばたく

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ムルムルへのお土産


 ムルムルを見送った次の日から、私はカレン様とテルン様のための細工を頑張った。今できる全部を使って作ってみたのだ。それは満足のいく物だったんだけど……。


「疲れた~、まさかあれほど疲れるなんて」


 服は集中力を高めるための魔道具のワンピース。そこに銀という魔力と相性の良い金属を使ったのだ。最初のネックレスの時はまだ余裕があったけど、バーナン鳥の置物を作っていた時がまずかった。

 置物のデザインは小さい木の枝に止まっている小鳥と、ラネーとネプトの間に子どもを入れた構図だ。あまり大きくしても邪魔かなと思ったので、十センチ四方ぐらいのサイズにしたんだけど、細かくなっちゃって……。


「また、がぶ飲みしてしまった」


 途中で作業が止まるのも気持ち悪いし、かといってこのままだとMP切れで作業にならない。そこですぐに飲んだのだ。


「ポーションは自分で作れないからジェーンさんのお店で買ったけど、高いんだよね」


 基本、街で手に入るマジックポーションと言えば初級だ。それでも、100近く回復するものが多いから十分なんだけど、ジェーンさんの店のは300近く回復する。


「まあ、その分金貨が必要だったりとさらにお高いんだけどね」


 材料から高いのに失敗作も出るんだもんね。納得はしてるけど、またお金がかかっちゃった。まあ、ムルムルの依頼が終わればお金も入ってくるし、それをあてにしよう。


「明日はレディトに行く日だし、先に準備しちゃおうかな?」


 パサッと服を着替えて食料を買いに行く。最近は季節も春めいて来て、ちょっとだけど暖かくなってきた。


「そんなこと言っても、ここじゃ春は一月から三月だから思ってるより寒いんだよね」


 だから、七~九月の秋は収穫の見込みと実際に収穫量が決まるからすごく大事な季節だ。


「おねえちゃ~ん、アルゼイン建築から手紙来てたよ~」


「本当? 部屋で読むから持ってきてもらっていい?」


「分かった~」


 エレンちゃんから手紙をもらって読む。内容はというと、ようやくグラントリルの業者からお風呂に使える大きな岩の手配が出来るとのことだ。早ければ来週にもアルバに届くらしい。


「さすがに大きいし、ひと月が早いのか遅いのか」


 もう二月だ。だけど、連絡から手配に配送とそう考えたら早いのかもしれない。


「まさか魔石の方が先に来ちゃうなんてね」


 依頼用の魔石が先に届いたので、用意していた私の携帯型コールドボックスに装着して試してみた。二つを使った時はかなり冷えたから、四つもあれば今宿で使っている倍以上の大きさにも耐えられるだろう。


「フレームや銀板、銅板の加工も終わったから後は組み上げてみるだけだね」


 組み上げる日はアルゼイン建築の人にも立ち会ってもらう。あれを組み終わった状態で運ぶのはさすがに無理があるから、組み立て方やフレームの構造を覚えてもらって、お風呂を作りに行く時に一緒に組み立ててもらうのだ。


「これまでは岩の目途が立たなかったから先延ばしにしてたけど、予定を組まないとね」


 来週のいつ来るかまでは分からないし、週末になるのかな? でも、ムルムルも楽しみにしてたし、出来るだけ急いであげたいよね。


《チッ》


「ごめん、起きちゃった? 疲れてるよね」


 数日前になんとミネルが二回目の出産をしたのだ。生まれてきた子はまた二羽で、今度どうなるかは分からないけど、とりあえずは元気な子どもたちだ。ただ、しょうがないんだけどちょっとにぎやかだ。ミネルも魔力を消費して疲れているし、結構気を使っている。

 今も子どもの相手はレダがしていて、ミネルはちょっと眠りにこっちへ来ている。前まで使っていた巣箱はライギルさんのお家に置いてあって、音が響かないところへ置いて、そこで雛を育てているんだ。


「アルナたちはお姉さん、お兄さんになるんだからちゃんと面倒見てあげるんだよ」


《ピィ》


《ピッ》


 二羽とも自分以外の子どもは初めてなので、興味津々だ。だけど、本当に雛はか弱いし、親に懐くまでは会わせない方が良いと思って、まだろくに接触できていないからか、毎日そわそわしている。

 まあ、そわそわしながらも街に出て水やりをしているエミールと違って、アルナは部屋でくつろいだり裏庭で遊んだりしてるけどね。


「それにしてもこういうのは重なるもんなんだね」


「そうだね。まさか、ミーシャさんもだなんて」


 今まで休みなく毎日働いていたのが、エステルさんや孤児院の子たちの頑張りのおかげでライギルさんにも余裕が出来た。

 そうして今、ミーシャさんは妊娠中だ。結構お腹も膨らんでいて、四月が予定月だ。何とか出発までに顔を見ておきたいなぁ。


「わたしもどうしようかな~」


「エレンちゃん、どうしたの?」


「だって、今までは一人っ子だったでしょ? 確かに弟か妹が出来るのは嬉しいけど、弟だったら家を継ぐわけじゃない? なら、わたしはどうなるのかなって」


「エレンちゃんが継ぐのは変なの?」


「普通は男の子がいたらその子が継ぐよ。わたしが継いでも料理できる人は必要だし、探してはいたんだけどね~」


「宿のことなら詳しいんだから、そのまま継ぐのは?」


「弟だったら、その子がかわいそうだよ」


「でもそうなったら、エレンちゃんはどうするの?」


「うう~ん。おじいちゃんのお店にお邪魔してみようかな?」


「そういえば、他の国でお店を開いてるんだったね。じゃあ、この街を出るの?」


「まだ分かんないけどね。もし、男の子でも宿なんて嫌だ~なんて言うかもしれないしね」


 なんてエレンちゃんはおどけてるけど、生まれた子が十歳になる頃にはエレンちゃんは二十三歳。この世界じゃ立派な晩婚だ。

 相手の人も宿の主人になれるなら待ってくれるかもしれないけど、それが生まれた子の返事次第なら難しいだろう。妊娠が発覚した時から嬉しがってたけど、将来のことも考えてたんだね。


「エレンも大変ね。ミーシャさんが抜けただけじゃなくて、宿の将来まで考えて」


「そういうエステルさんはどうなの? お店を開くんだよね」


「物件は見つけているんだけど費用がね。それに保証人が必要だし」


「保証人? 部屋を借りるのは出来たんですよね?」


「ええ。そっちはライギルさんが雇用契約書を見せてね。だけど、店となると数か月は材料費とかを抜いて家賃を払えるぐらいのお金が必要なの。部屋を借りるのより、保証人の条件ももっと難しいのよ」


「お父さんじゃ駄目なの?」


「ライギルさんだと食堂もやってるから同業者じゃない? 支店として出すならいけるかもしれないけど、個人の店としては保証人にはなれないわ」


「同業者じゃ駄目なんですか?」


「だって、保証人になるってことは新しい店は人気が出るから、今の自分の店の客が減りますってことよ。それで、自分の店も新しい店も利益出しますなんて、無理でしょ。出来たとしてもそれを信じてくれないわよ。こっちには実績がないんだから」


 ちょっと諦め顔で言うエステルさん。確かに宿に来てくれる人が全員両方にはいかないよね。


「じゃあ、まだまだかかるってことですか?」


「そうね。さっきも言ったけど、支店なら何とかなると思うんだけど、私みたいな実績のない人間に任せてくれる人なんていないわよ」


「エステルさんの料理だって美味しいんですけどね」


「それを説明できないのよ。口では言えても、見てもらえる当てがなくっちゃね」


「やっぱり自分の店じゃなくちゃ嫌ですか?」


「できればってところね。最低限、私のこだわりを認めてもらえたらとは思ってるけど、中々ね……」


「大変そうですね」


「好きなことだから、諦めたくないのよ。アスカだってだから旅に出るんでしょ?」


「まあ、そうですけど。私は生きてる間に一度、世界を見たいってだけですし。いい場所が見つかったらそこに住むと思いますしね」


「でも、その為に冒険者になってお金も稼いでるんでしょ。それはすごいと思うわよ」


「うんうん。もっと楽に稼げる方法もあるのにおねえちゃんはそれをしないしね~」


「もっと楽に儲けられるの? エレンちゃん、今からでもそれ間に合う?」


「えっ!? いや、おねえちゃんって色々してるからそう思ったダケダヨ~」


 最後の方はなんだか変な感じだったけど、やり方とかじゃないみたいだ。残念、旅に出る前の資金はいくらあっても困らなかったのにな。


「アスカこそ、何かすごい発注があるんでしょ? 街のみんなが噂してるわよ」


「すごいというかサイズが大きいだけですよ。お風呂とかのでっかい版ですよ」


「ああ、それでアルゼイン建築の人が来てたのね」


「そうです。グラントリルってところから材料を持ってきてもらうんですよ」


「あれって向こうの大陸でしょ? お金は大丈夫なの?」


「材料費は向こう持ちなんで平気です」


「おねえちゃんすごい! そんなのあるんだ」


「相手はムルムルというか神殿だからね。下手な物は作れないし」


「ところでどうして細工師のアスカがお風呂の話をしてるの?」


「そりゃあ、魔石を使った魔道具を……」


 あれ? 別にそれぐらい私じゃなくても出来るよね? ん~、まあ個人風呂ぐらいのサイズはあんまり実績もないし、私が作るのも変じゃない……のかな? う~ん、深く考えるのはよそう。



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