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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと冬と旅立ちの準備

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それぞれの欲しいもの


 ムルムルは今回は四日間の滞在で、今からお土産を探したいのだという。エスリンさんにはハンドクリームを送ることになったけど、テルンさんとカレン様の物が決まらないので、二人で考える。


「カレン様はラネーがらみなんだよね。こういうのはどうかな?」


 私は今度おじさんの店に卸す予定のバーナン鳥のネックレスを取り出す。もちろん、カレン様用には市販品と違う細工も施すつもりだ。


「へ~、ラネーの羽を模してるのね。人気は?」


「そこそこ。何も知らない子も買っていくけど、教会関係者の人も買っていってくれるから」


 なので簡単にはリメイクも出来ないんだよね。教会関係者が揃えようとした時にデザインが変わってたら、不揃いになっちゃうから。


「へ~、これを元にねぇ。良い案だと思うわ。アスカに前に作ってもらった髪飾りあったでしょ? カレンったら気に入ったからって週の半分以上は付けてるのよ。きっと、これを元に作ったやつも気に入ると思うわ」


「なら、カレン様の分はそれでよしとして、テルンさんかぁ。大人な人だし、中々思いつかないんだよね」


「そうなのよ。神殿でも立場は確立してるし、巫女としても最年長でしょ? なかなか欲しがるような物があると思わないのよね。プレゼントも寄付という名目で結構届くしね」


「やっぱり人気あるんだね」


「そりゃあ、巫女といっても結婚できるもの。聖王国は国を持ってるから、巫女……といってもあの国じゃ聖女だけど、国内の王族とか貴族と結婚するけど、国を持たないシェルレーネ教は世界中で信仰されてるからね。その辺の王族や貴族に商人と申し込みがすごいのよ」


「ムルムルもすごかったりするの?」


「私は庶民派だからそんなには来ないわよ。精々がこの国の子爵ぐらいまでね。テルン様は元々子爵の出だから家柄もきっちりしてるし、下位とは言え貴族。マナーもよくて、何より貴族というものを理解してるわ。それで余計に集中してるのよ」


「カレン様はどうなの?」


「カレンはね~、表に出てこないでしょ? 情報が少な過ぎてみんな申し込むまで行かないのよ。美少女で神殿が隠しているとか、巫女でありながら外に出せるような性格ではないから閉じ込めてるっていう噂まであるのよ」


「そんな噂が立ってもいいの?」


「良くはないんだけど、カレン自体が男嫌いでね。その噂があるから自分には申し込みが来ないんだって、否定させないのよ。教会としてはちょっと困るんだけど、かといってカレンを外に出したらねぇ……」


「大変になるの?」


「シスコン、庇護欲、サドと多くの病人が追い求めるでしょうね」


「そういえば前はムルムルもカレンさんって言ってたよね」


「最近は来客が男だと私の後ろに隠れるもんだからね。成り行きというかなんというか……」


 結局その後も雑談交じりにテルンさんへのお土産を考えてたんだけど、これというものは浮かばなかった。明日は買い物に行けるというので、行った先で考えようということで落ち着いたので、ひとまずはお昼だ。


「お昼はここで食べられるわ。今回、一緒に付いて来てる人が料理を作ってくれるのよ」


「楽しみだなぁ~。だって神殿の料理が食べられるんでしょ?」


「ま、まあそうだけど、同じ国だし変わったものは出ないと思うけど……」


「いやいや、南と北だけでも随分違うし、期待してるよ!」


「期待されてもね。作るのは私じゃないし、もう出来てるし」


 そして運ばれてきた食事はというと……。


「うわ~い。サラダにオーク肉を使ったスープだ~」


「アスカ、現実を見なさい。こういうものよ」


「なんでぇ~、これじゃ普通の食事じゃない」


「じゃあ、この町特産の食材は何よ。アスカは答えられるんでしょうね」


「もちろんだよ! え~っと……う~んと……」


 何かあったかなぁ? 思いつくと言えば、湖の北側にある牧場か湖の魚だと思うけど、固有種の話なんて聞いたことないしなぁ。


「そういうことよ。特産品がないなら変わった料理を作るより、いつもの料理の方が安心できるのよ。私が旅に出た話は手紙に書いたわよね。砂漠地帯なんだけど、こっちで見かけないスパイスが多くて、最初は一日目でダウンよ。それ以来、あっちに行く時はこうして誰かに付いて来てもらってるのよ」


「あ~、分かる。ああいうのって他の国で食べる時はその国の人に合わせてくれてるから、本場に行くとびっくりするんだよね」


「そうそう。神殿で出たことがあるからって、すっごい期待で注文したんだけど、私が甘かったわ。その所為もあって、そうそう変わった料理は出ないわよ」


「まあ、これはこれで美味しいからいいや。でも、野菜も新鮮だよね。朝早くに着いたの?」


「先に文で知らせておいたのよ。だから、この野菜も今日の朝市で買ってきてもらったのよ」


「へ~、通りで。でも、このスープ美味しいね。なんだか食べなれた気がするけど」


「そうなの? 一応レディトの宿で買った最近人気のものだけどね」


「それって、マスターのお店のやつだね。通りでなじみがあると思った」


「これってレディトの人気店の味なんでしょ? そのお店に行ったことあったの?」


「うん。ジャネットさんの紹介でよく行ってるよ」


「これも駄目なのね。念のために保険でお土産として買っておいたんだけど、アスカに食べ物系はよしておけばよかったわ」


「ううん。美味しいから好きだよ。この味」


「まあそうね。これもお土産に買っておこうかしら。エスリンは元よりみんなも喜ぶと思うわ」


「そうしたら。ちょうどこのスープに合うパンとかも知ってるから後でレシピも渡すよ。あんまり料理できないからちゃんとしたレシピじゃないけどね」


「いいの? じゃあそれももらっとくわ」


「そうだ! あげると言ったら忘れてたよ。ご飯食べたら見せたい物があるの」


「見せたい物って何なの?」


「まずはご飯食べてからね」


 ちなみにラネーたちはというと神殿関係者と食事をしている。今回私に初めて会う人もいるので、ただの街娘と一緒に食事は難しいとのことだ。

 一応前の主人なんだけどなってムルムルに言ったら、すっごく面倒なことになるけど良いの? って言われたので遠慮しておいた。



「ラネーのこともそうだけど、私がミネルたちの飼い主だって言ってないんだよね」


 食事も終えて、雑談しているとふと気になったので、ムルムルに聞いてみた。


「ええ。私の友人でこの町のバーナン鳥たちと面識があるから、ラネーが帰ってきたのを伝えてもらっただけの存在よ。ラネーとネプトを連れて帰った時も面倒ごとにならないように、私がこの町で出会ってついて来たって言ってあるだけだしね」


 元々、バーナン鳥自体が魔物でありながら町に住む益鳥扱いだから、個人に飼われるって感覚が薄いんだって。それがシェルレーネ様でもない神様を祭ってる私が飼ってるのは割と面倒らしい。


「だから、ネプトを連れてくるのは無理だったの。里帰りって言っても、会いたい人物もいないだろうって言われちゃうとね。その先の説明は大変だから」


「ネプトってラネーの番の子だよね。でも、私も実はあの時が初対面なんだ。ご飯をあげたことはあるかもしれないけど」


「それでも、生まれた町ぐらいはまた見せてあげたかったんだけどね。あれだけ人気出ちゃうとね」


「人気者なんだ」


「家族揃ってね。今はラネーが一番かな? 子どもが後をついて来るのがツボみたいなのよ」


「へ~、グッズとかあるの?」


「グッズ? そういうのはないわね。街にはあるかもしれないけど」


「それなら、テルンさんのお土産は一家勢揃いの置物なんてどう? もし気に入らなくてもどこかに飾れるでしょ?」


「気に入らないなんてことはないと思うけど、良い案ね。それでお願いできるかしら?」


「いいよ。そうそう、さっき話してた見せたい物なんだけど、これだよ!」


 じゃ~んと私はそれまで下げていたバッグをムルムルに突き出す。


「わっ、かわいい~。それに丁寧な細工ね。テルン様へのプレゼントでこういうの見たけど、結構高いんじゃない?」


「それがなんと! 私の手作りなのでタダで~す」


「ただって、材料はどうしたのよ?」


「自分で獲ってきました!」


「とって?」


「外の革はガンドンでちょっと重いけど、硬くて傷もつきにくいし、温度変化にも強いの。内側はサンドリザードの革で、新しい技術が使われてて、凸凹がないんだよ」


「へ~、確かに中はすべすべね。ざらっとしてるところも滑り止めみたいな感じで嫌な気はしないし。で、アスカが倒した魔物なのこれ?」


「そうだよ! さすがに革の加工とかは人に頼んだけど、デザインも縫合も私がやったんだよ」


「えっと、これを買うと相当高いわよ?」


「でも、タダだよ?」


「はぁ~、分かったわ。ありがたくいただきます。街へ行く時にでもつけていくわね」


「うん。そうしてくれると私も嬉しいよ」


「にしてもよく作り込まれてるわね。ちょっとした小物を入れる場所にお財布が入りそうなところまで」


「何度もリサーチしたからね」


 仕事の休憩中にエステルさんとエレンちゃんに聞きまくったからね。代わりに今度、似たような物を作ってあげるんだ。



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