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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと冬と旅立ちの準備

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帰還の旅路


 昨日良く寝た私たちは、気持ちよく目覚めた。


「ふわぁ~」


「なんか、この村に着いてからよく疲れが取れる気がするね」


「そ、そうですね」


 ひょっとしてこれもシルフィード様の力だろうか?


「今日はちょっとゆっくりできるからゆっくり飯も食えるしね」


 そう言って二人で下りると、シャスさんが来ていた。


「あれ? どうしたんですか?」


「お前なぁ。どうしたもこうしたもあるか。宿に来たら誰もいなかったから帰ったんだよ。出発の時間も聞いてなかったし、こうして朝早くから来たんだぞ」


「ご、ごめんなさい。完全に忘れてました!」


 すやすやとシルフィード様の元で寝てから、すっかり頭からなくなっていたみたいだ。


「ほら、細かい傷も直したし新品同様だ」


「あっ、ありがとうございます。いくらですか?」


「良いぜそんなの。お前からはかなりもらってるからな。それよりいい細工を作るんだってな? 俺に合いそうな細工を作ってくれ。気合が入るようなの頼むぞ」


「別に構いませんけど……」


「じゃあ、俺は眠いから帰るな」


 それだけ言ってシャスさんは帰ってしまった。お詫びもかねていい物を渡すことにしよう。


「話は終わったの? それじゃ、朝ご飯ね。出発はいつ頃?」


 多分今は六時ぐらいだ。日も登ってすぐだから、まだ一時間は先の出発だ。


「後一時間ぐらい後ですね」


「来る時は日の出より早く出たって聞いてたけど、いつもこっちからは遅いのね」


「まあ、こっちから夜明け前に出たら、散々に魔物から絡まれるだろうからね。夜型の奴に出会わないことを考えたら仕方ないさ。最悪、レディト近くまでくれば対して強くない奴が相手になるわけだしね」


 草原の入り口近くまで戻って来れれば、出るとしてもオーガぐらいだ。ウルフとかガーキャットたちみたいに集団戦法も苦手だし、力押しで来るので対処はしやすい。こっち側は狩りとして襲ってくるから、後ろに回り込まれたりして、馬車が危ないんだよね。


「そういうことだったの。さすがは冒険者ね」


 それからはゆっくりして、みんなが揃うのを待つ。日も登って、そろそろいいんじゃないかということで村長の家にいる御者さんを呼びに行く。


「やあ、みなさんお揃いで。もう準備はよろしいのですか?」


「ああ、何とか今日中には着いておきたいからな」


「では参りましょうか」


 家の横に付けていた馬を馬車につけて、準備も万端。私たちは村を出発した。



「じゃあ、今度は俺たちが先頭だな。獲物をかっさらっても文句は言うなよ?」


「いいですよ。私たちも助かりますし」


 私たちは護衛の経験があまりない。ジャネットさんは豊富だけどね。だから、どうしても周りにいるのは戦える人という考えの元で動くことが多くなってしまう。そういう動きを護衛向きに慣らしていくのに、彼らが先頭を行くのは参考になる。


「ん~、しばらくは安全そうですね~」


 先頭を行くのは一番軽装の人だ。恐らく、パーティーの中では斥候役をしているのだろう。魔法も使えるのか短杖と剣を持っている。残りの二人は左右に分かれているけど、馬車からはちょっと離れている。気になってジャネットさんに聞いてみた。


「あの方がいいんだよ。馬車を守るなら遠いと思うかもしれないけど、あんまり近いと襲われた時にすぐに接近されちまうからね。そうなると自分を守ることはできても、馬や荷物に損害が出やすくなる」


「そういうことだったんですね。私はあんまり護衛依頼を受けませんから」


「そういや、この話はリュートたちにしたと思ったけど、その時はアスカはいなかったねぇ」


 みんなは私が細工をしている間にもたまに依頼を受けているようで、こういう依頼に関しては経験に差が出ちゃったな。

 後ろを振り返ると、確かにリュートもノヴァもちょっと左右に離れてついて来ている。そうして一時間半ほど進むと、前がピタッと止まった。


「よしよし、反応あったよ~」


「どの辺りだ?」


「昨日と違って草原の方から、数は……そこそこかな」


 私も気になったので、センサーで数を確認する。五体でサイズはそこそこだ。でも、感じたことのないサイズだな。なんか後ろと前でサイズが違うし。


「アスカどうした?」


「ん~、なんか見たことない感じなんですよね」


「大体、敵意を持つ魔物は見たから、ガンドンと一緒で草食の魔物かもね」


「それなら納得です」


「何言ってんのか知らんが、俺たちは前に出るぞ」


「はい」


 ベンガルが前に出て私たちが馬車の護衛に専念する。


「来たぞ!」


「あれはシャディッシュか! 何でこっちに?」


「追われてるみたいだね~。後ろは……ローグウルフかな」


「シャディッシュは馬車に向かわなければいい! まずはローグウルフだ!」


「了~解」


 シャディッシュは前を通り過ぎるだけで、馬車には目もくれない。見た感じは角がないけどヤギかなぁ。ローグウルフから逃げ切れたと思ったのか足を止めた。


「さあこい!」


 向こうではベンガルのみんながローグウルフと戦っている。まあ、三対三だし大丈夫だと思う。それよりも……。


「ほら、怖がらないで~。こっちおいで~」


 結局、アルバの北西にある牧場には行ったことないし、ヤギさんなら大歓迎だよ。私はリラ草を混ぜた薬草入りの飲料を使い捨ての器に入れて、そっと置いてみる。これで来てくれるといいけどなぁ。

 器を置いてしばらくすると、シャディッシュたちはちょっとだけこっちに近づいて来て器を見る。どうやら興味を持ってもらえたようだ。


「後ちょっと、そこだよ」


「戦闘中にのんびりしたもんだね」


「他に魔物がいたら私も注意しますよ」


「それ分かってるのアスカだけだよ」


「ま、魔物がもういないなら俺も休もう」


「ちょっとだけだよ。戦闘はもうすぐ終わるんだから」


 一応、抜かれる時のことを考えて、ジャネットさんとリュートが馬車の前を守る。


「あっ、舐めた」


 二頭いたシャディッシュの内、一頭が私の用意した飲料を舐めた。ちょっと間があって問題ないと思ったのか、もう一頭を呼び寄せて飲ませている。親子なのか夫婦なのか相手を気遣っているのが分かる。お互いちょっと飲むと相手に変わって、やがて飲み終わった。


「はぁ~、いいもの見ちゃった。今日はよく眠れそう」


《ピィ》


 アルナがいつもよく寝てると指摘してくる。もう、そこはアルナも一緒でしょ!


「おい、終わったぞ! って何やってるんだ?」


「シャディッシュがかわいかったので飲み物あげてました」


「おいおい、余裕だな」


「みなさんを信頼してますから」


 この依頼自体、良く受けてるって言ってたし、最低でも月一は草原に来てるから安心できるしね。


「そんでそいつらどうするんだ?」


「へっ?」


 振り返るとシャディッシュたちが私のところに入れ物を持ってやって来ていた。


「お代わりかな? もうちょっとだけあるから待っててね」


 再び器に飲み物を補充すると美味しそうに二頭で飲んだ。


「ごめんね~、もうないんだ」


《ウェェェ》


 がっくりとその場で鳴くシャディッシュたち。


「う~ん。これは私の手作りだし、他じゃちょっとね。せめて美味しい水があればいいんだけど……」


 それなら代わりになるかもしれない。でも、そんなところを都合よく知らないしなぁ。それに水場は草食動物も肉食動物も来るところだ。そんな場所があったら危険もいっぱいだよね。


「あっ、でもあそこなら!」


 私は昨日着ていた服を取り出すと、二頭の前に出してある匂いを覚えさせる。きっと大丈夫だよね。


「その匂いのするところに行ってごらん。きっと美味しい食事に会えるよ」


 私の言葉にもう一度二頭はウェェェと鳴くと、私たちが来た方へと去っていった。元気でね!

 ローグウルフも片付いたし、再び道を進む私たち。異変が訪れたのは森から離れて草原を進んだ時だった。


 ドドドドと草原から大きい音が近づいてくる。な、何!?


「この音は……グラドンセだ! みんな走る用意をしろ!」


「ぐ、グラドンセ?」


「いいから用意しろよ。そんで、手が空いたら仕留めろ!」


「は、はぁ」


 言われるがままに走る用意だけして音の方を見る。すると、何十頭もの大き目のシカがこっちに走ってくる。あれがグラドンセだろうか?


「奴らは危険が迫った時やその辺の草を食べ終わるとああやって大移動するんだ。群れから離れた奴を倒せば儲けもんだぞ」


「とはいえ、あの大群に突っ込んだら間違いなくお陀仏だろうけどね」


「そこは冒険者としての腕だな」


 目の前を大移動するグラドンセの群れ。途中でところどころ群れから離れたりしているのも見える。あれを仕留めろってことなのかな?


「えいっ!」


 弓を取り出すと、魔力を込めて一直線に届くように矢を放つと、見事に群れの流れの間を縫って、一頭の頭に突き刺さった。


「ま、まじかよ。こっからあれを狙ったのか?」


「ははは、まぐれですよ。ラッキーです」


 そういうことにしてないと、また変な噂が流れちゃうからね。アルバは拠点だし諦めたけど、まだレディトで無名のまま活動するのは諦めてないんだから!


「んで、どうだ?」


「あたしとアスカが二頭。ノヴァとリュートが二人で一頭」


「うらやましいぜ。こっちははぐれが来たが突っ込んでこようとしやがって、結局その一頭だけだ」


「あれ危なかったですよね」


「全くだ。せっかくの群れだったのによ」


「でも、数百頭もいましたけど、普段どこにあれだけいたんでしょうかね?」


「まあ、この草原もあの山脈を越えればまだ広がってるからな。あいつらはあっち側も住処にしてるんだろう」


 そういえば、この草原って王都側まで伸びてるんだっけ? 地図で見た時、結構広いなって思ったもんね。



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