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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと変わりつつある環境

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帰郷


 当初の予定よりたくさんの出来事があったワインツ村の滞在も今日でおしまいだ。夜明けとともに村の人と見張りを交代して、午前中は寝て過ごした。それから、午後にロビン君やヘレンさんと別れの挨拶を交わす。


「こんにちは」


「あっ、先生。今日はどうしたんですか?」


「うん、今日が最後の日だし挨拶をと思ってね。それと、ロビン君にはちょっとまだ教えたいことがあったから」


「僕にですか?」


「あら、ロビンはアスカちゃんにお世話になりっぱなしね」


「姉さんこそ、家具まで作ってもらってるでしょ」


「それで、アスカちゃんどうしたの?」


「はい。この季節に生える薬草があるんですけど、あんまり村の人は採ってないみたいだったので、その見分け方をと」


「そんな薬草があるんですか?」


「うん。それに唐辛子も見ておきたいしね」


 私もアルバの市場では見かけたこともないし、ひょっとしたらワインツ村の特産に出来るかもしれないしね。この村の生産高なら量は知れてるだろうけど、大量に使うものでもないから大丈夫だと思う。


「まずは村の中にある唐辛子だね」


「じゃあ、案内しますね」


 私はロビン君について行って件の畑を見る。


「あった! あれだよ。ちょっと知ってる形とは違うけど間違いないと思う。あれを熟すまで待つと赤くなるんだよ。それを干して使うと辛いんだ」


「そうなんですね。じゃあ、今度姉から話してもらいます」


「それじゃあ、今度は薬草の方だね。こっちは私が得意だからそのまま教えるね。ロビン君は採取用のナイフとか持ってる?」


「持ってませんけど、弓が壊れた時用のナイフは持ってます」


「なら最初はそれでいいかな。それじゃあ、出発!」


 森の入り口からちょっと南に行ったところに向かう。ここはちょっとだけ残ってるってヒューイさんが言ってたんだ。ただ、物があまりよくなさそうだから採らなかったって言っていた。


「あ~、確かにこれは採らないか」


 実際に現地に行くと、ちょっと下向きのサナイト草があった。多分これはCランクになるかどうかのものだろう。物が悪すぎて束で買取になるかもしれない。でも、練習ならこれでも十分だ。


「これがその薬草なんですか?」


「うん。本当はもっと上向いてて元気なんだけど、この辺は人もよく通るし、日当たりも悪いからあまり育たないみたいだね。これがサナイト草っていって、万能薬の材料になるんだ。秋から冬にかけてしか育たない薬草だよ」


「万能薬は見たことがあります。たまにですけど、森で毒になる人がいていくつか在庫を持ってます」


「でしょ? これを町へ売りに行けば結構なお金になるんだよ。もちろん、採り方にもよるけどね。えっと、これがまだましかな? こうやって、根元近くを持って……あっ、力を入れちゃだめだよ。それでこの採取用のナイフで、えいっ!」


 私はさっと刃を入れてサナイト草を採る。まあ、これはCランクだと思うけど。


「こうやってナイフを使う時は優しく持って一気にスパッと切るの。手でつかむ時はこう優しく持って根元を折ってね」


 私は素手での採取方法も教えておく。ロビン君には必要ないだろうけど、ナイフを持ってない人でも、この辺りなら来ることがあるかもしれないからね。


「一度やってみていいですか?」


「もちろん。見ておいてあげる」


 私が場所を空けてロビン君と場所を交代する。そして、ロビン君は自分のナイフを取り出し採取に挑む。


「やっ!」


 掛け声とともにサナイト草を採取するロビン君。うう~ん、ノヴァよりはましだけど、ちょっと荒いかな。


「どうですか?」


「う~ん。ちょっと荒いかも。勢いよくと言ったけど、力が入り過ぎてるかな?」


「分かりました。こうですか?」


 もう一度採取に挑むロビン君。今度はちょっと慎重になり過ぎてるかな。


「うう~ん。今度はゆっくりになってるかな。力だけを抜くようにして見て」


 それから何度か試してみて、ようやくある程度の形になってきた。


「うんうん。いい感じだよ。多分採り慣れてきたら自然と力が抜けるから頑張ってね」


「はい! 先生ありがとうございます。必ず、これを生かせるように精進します」


「よろしい! な~んてね。でも、採取をするのは良いけどワインツ村って商人とか来ないんでしょ?」


「そうですね。基本、アルバからも寄らないといけないので、村の方から発注しない限り来ません」


「ちなみにその頻度って?」


「年に一度あるかないかです」


「やっぱり田舎の村じゃそうなっちゃうか……。それだと定期的にアルバに来るしかないね」


「でも、僕は商売とかできませんよ?」


「それはギルドに登録すれば大丈夫。ただ、最初はお金がかかっちゃうけど」


「どのぐらいかかりますか?」


「確か銀貨一枚だったかな? 私も結構前に登録したからうろ覚えだけど。後、一年に一度は必ず依頼を受けないと駄目だよ。だから、サナイト草を売るにしても、ある程度は町へ来た方がいいかも」


「分かりました。月に一度ぐらいは町へ買い付けに行くので、その時に一緒に行けるよう話してみます」


「後は……そうだね。薬草の保管方法を聞いておくといいかも」


「保管方法ですか?」


「うん。さっきもロビン君が言ってたけど、月に一回ぐらいしか町へ行かないんでしょ? 私は遅くても三日以内には買取に出してるし、それまでもマジックバッグっていって温度変化の少ないものに入れてるけど、採ったらそのまま置いておくんだよね?」


「多分そうなると思います」


「それだと、品質が落ちちゃったりするかもしれないから、ある程度までの加工を村でやっておいて納品するようにすれば買取価格も保てると思う」


「本当ですか! それは助かります。前日に採った分だけ持って行こうかと思ってたんです」


「うん。ただ、そうなっちゃうと薬草そのものではないから、ギルドで買取というより依頼をもらってその人に納品って形になると思う。だから、そういう人を捜さないといけないかもね」


「どうしましょう。町に知り合いなんていません……」


「一応、当てはあるから今度町へ来た時に宿に寄ってくれない?」


「ありがとうございます。先生は村の神様ですよ!」


「もう、変なこと言わないでよね。私、ロビン君と同い年だよ」


「でも、僕と違って色々なことを知ってます」


「ま、まぁ、冒険者としてならちょっと長いかもしれないけど……。とにかく、変な話を流さないでよね」


「分かってます」


「それじゃあ、そろそろ出発の時間だから村に戻ろうか」


「はい!」


 こうして長かったワインツ村での滞在を終えて、私たちはアルバへの帰路についた。



「それにしても、なんだかんだで忙しかったわね」


「そうですね。戦ったのは最初の一日だけでしたけど、結局ずっと弓を持ってましたし」


「俺たちとしちゃ、それなりにサナイト草も取れたし、滞在費も浮いたからよかったけどな」


「でも、当初の予定だと魔物も倒さなかったし、ほとんど現地についてから出てきた収入よね」


「そうだな。そうだ、アスカにも渡しとくよ。ウルフの売却分だ」


 私は銀貨四枚を受け取る。


「思ったより多いですね」


「まあ、肉と皮だからな。肉はさすがに安かったが、それでもある程度まとまった量だし牙は残ってるからな。ギルドへ戻ればもうちょっと儲かるぞ」


「村だと牙は要らないんですか?」


「ああ。牙を加工できる奴がいないってことでな。それにウルフだと魔力矢だろ? あの村には魔力の高い奴がいないから使い道がないだろう」


「そういえば、そうですね。でも、捜せば誰か使えるんじゃないですか?」


「アスカもギルドに登録するのに金がかかるって知ってるだろ? 一人頭銀貨一枚だ。それで誰も使えなかったらどうするんだよ。腕のいい奴っていっても五人ぐらい連れてきたらそれだけで銀貨五枚だ。滞在費も考えれば魔力を調べるだけで金貨一枚ぐらいはかかるかもな」


「そんなにかかりますか?」


「宿代に入門料と結構移動にも村人はお金がかかるのよ。さすがに定期的に町へ買い付けに来る人たちはどこかのギルドで登録はしてるでしょうけどね」


「登録だけでも簡単にできるといいんですけどね~」


「無理よ。そんなことになったらあの水晶の魔道具がいくらあっても足りないもの」


「ああいったステータスを確認できるような魔道具って他にはないんですか?」


「冒険者ギルド以外では見たことないわね。あれも正確にはギルドで作れるものではないらしいし」


「村は大変ですね」


「まあ、どれだけ狩ったとしても買い取ってくれる商人が来るかどうかだからな。ワインツ村には商人は行かないだろうし、あそこがアルバと港町の間にあればまだ良かったんだがな」


「上手く行かないもんなんですね~」


《チッ》


「ん? ミネルどうしたの、釣り? さすがにこの時間からは無理かな」


 村では自然を満喫して大人しくしていたミネル一家は釣りにはまったようで、湖を通るたびにじっと見ている。


「普段から外へ連れていったりはしないのか?」


「普段は細工で宿にいますからね。あんまり外へでないんです。そうだ! 今度からリンネたちが外に行く時について行く?」


《ピィ?》


 湖ばかり見ていて話を聞いていなかったアルナにも、もう一度説明する。


「うんうん。それなら定期的にここにも来れるし、フィーナちゃんも助かると思う。今度言っておくね」


 お土産に魚を持たせてもらわなくても、フィーナちゃんの台所事情も潤うし、いい考えかも。


「あっ、でも獲り過ぎないようにね」


 ちゃんと言いつけておかないとね。たくさん獲ったところで食べきれないんだから。自分たちで食べられない分、余計にね。


「でも、アスカと一緒に初めて依頼を受けたけど、Cランクの壁は厚いんだな。もっと簡単になれるかと思ってたよ」


「そうですか? 結構簡単になれると思いますけど」


 話を聞いてる限りだけどね。私の時はマディーナさんが試験官だったし、一緒に受けた人は再試験だったしね。Cランクはギルドでも中堅だから、私は中堅です! って言えるぐらいの実力は欲しいけどね。


「そういえば、帰ったら昇格試験の試験官かぁ。頑張らないと」


「またやるの?」


「ジュールさんに頼んでちょっと遅らせてもらったんです。代わりに一日でいっぱい受けるんですけど」


「大変だな。頑張れよ」


「応援に来てくれたら頑張っちゃいますよ」


「それなら私たちは行かない方がよさそうね」


「だな」


「なんでなんですか!」


 そんな話をしながら私たちはアルバへ戻ったのだった。



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