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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと変わりつつある環境

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祭りの前に


「よ~し、出掛ける準備は完了だ!」


 今日は祭りの準備も含めワインツ村に行く日だ。あれから小屋に塗料を塗ったり、乾いたのを確認したりして、無事にサンダーバードの引っ越しは済んだ。今は宿に一家、孤児院に一家だ。


「Dランク試験については帰ってきてからにしてもらったし」


 試験官については一週間後にしてもらった。日を空けることで昇格日を遅らせ、本当に受けたい人だけにしたのだ。


「鳥たちには一週間交代で宿と孤児院を行き来することも伝えたし、ちょっと落ち着いたかな?」


 週の始めに入れ替わり、その間に小屋や屋上の掃除をすることになった。また、この間に宿にも変化があった。厨房に三人目が入ったのだ。入ったのは来年孤児院を出るガナッシュ君だ。前からパンの販売の時に皿洗いなどもしてくれていたのだけど、今回めでたく厨房に配属されたのだ。


「エステルさんがいれば良いかなって思ってたけど、そういえばエステルさんって前から自分の店を持ちたいって言ってたもんね。ライギルさんも休みが取れるようになったんだから、良いことだよ」


 現在、たまにライギルさんは休むようになったけど、それもエステルさんがいるからだ。彼女が独立してしまったら、また元通りになってしまう。それを危惧したエレンちゃんの提案だったんだって!


「今まで子どもの身で毎日働いていたエレンちゃんならではだよね」


 条件で言えばミーシャさんもそうなのだけど、いかんせん彼女は宿の娘として当然のように受け入れてきたので、そういうところは強く思わなかったみたいだ。今宿で働いているのは、エステルさんと昼の間、パンを売る売り子が二人、それに今回ガナッシュ君が加わり、四人になった。それぞれ食事付きで、給料はエステルさんが大銅貨四枚、売り子が大銅貨一枚、ガナッシュ君が大銅貨二枚だ。


「一日当たり従業員に銀貨一枚近くか。私が来た時より給料で出ていくようになったんだなぁ」


 そう思うと感慨深い。私が手伝い始めた頃はみんな休みなく働いてたもんね。今じゃ、エレンちゃんが週に二回、ミーシャさんたちが一回休むようになったからすごい進歩だ。と言っても雨の日以外、基本休みのないこの世界じゃまだまだ少数派だけどね。


「それじゃしゅっぱ~つ」


《チッ 》


「ん、ミネルたちも行く? 別に危ないところでもないし良いよ」


 自然に囲まれていると言っても、魔物はせいぜい、オーク二、三体が最大戦力だ。みんなで行っても大丈夫だろう。本当はリンネたちも連れていきたいんだけど、子どもたちの送り迎えもあるし、今回はお留守番だ。


「細工も思ったよりはかどったし、ノヴァには悪いけど良い休日だったなぁ」


 先週も本当はみんなで集まって依頼を受ける予定だったんだけど、ノヴァが親方さんのところで木材の運搬をする護衛に付いてるから休みになった。


「でも、まさか置いてけぼりを食うなんてね」


 それで、依頼はなしになったんだけど、リュートとジャネットさんは二人で王都への護衛依頼を受けてさっさと行ってしまったのだ。

 実はアルバから王都への護衛依頼は結構ある。港町からアルバまでは魔物という魔物も出ないので、御者を一名増員したり、Dランクの冒険者を雇ったりする。増員した御者にはアルバで折り返しついでに、休暇を与えたりしているらしい。これは商会の御者になったミスティさんに聞いたんだ。

 それで、アルバからはそのまま王都まで護衛依頼を出すのだ。レディトで積み替えとかがある場合はまた違うらしいけど。これまではレディトから護衛が多かったんだけど、最近はアルバの東も危ないからね。


「まあ、王都には行きたくないし別に良いけどね。ジャネットさんは前からよく誘われてたみたいだし」


 ジャネットさんたちと一緒に依頼を受けたファニーさんのパーティーは三人だ。護衛依頼を受けるには心もとない。なので、ジャネットさんや他の人を加えて、人数調整をよくしているんだって。

 ソロの人を入れるのは良いけど、問題が起きることもあるから出来るだけ知り合いに頼むらしい。


「私が行ったら六人になっちゃうし多いよね。おっと、そろそろ待ち合わせの時間だ。みんな行くよ~」


《チッ》


《ピィ》


 みんなも私の肩につかまったりして、準備もOKだ。ちなみにティタはディースさんのところだ。研究も順調に進んでいて、最近は何とかヴェゼルスシープとウルフ系の挨拶ぐらいは分かるようになったって言ってた。それでやる気も高まっているらしい。


「おはようございま~す」


 ギルドに入って挨拶をする。ベレッタさんたちは……もう来ているみたいだ。


「おはよう、アスカ。今日はみんな一緒なのか?」


「はい。大した魔物もいないですし、自然の多いところでたまには過ごさせてあげたいので」


「そう。ゲインさんには指名依頼にしてもらってるから、受付しましょう」


 ベレッタさんにうながされて、依頼を受注する。


「ああ、臨時のパーティーで頼む。悪いけどアスカはこっちに入ってもらうぞ」


「はい」


 依頼はヒューイさんのパーティーへの指名依頼だから、私は臨時のメンバーとして登録してもらう。


「それじゃ、依頼はワインツ村での祭り期間の護衛と、飾り矢の納品ね。矢の方が銀貨一枚、護衛の方は銀貨三枚で明日から三日間ね。頑張って」


「はい!」


 私たちは依頼を受けていざ、ワインツ村に向かう。道すがら湖の横を通る時にヒューイさんが話しかけてきた。


「こんないい天気の日には、のんびり釣りでもしていたいもんだな」


「そうですね~」


「二人とも今は依頼を受けに行くんだから、先ずは村での確認が先よ」


 そういうベレッタさんもチラリと湖を見る。この中で一番釣りが上手いのはベレッタさんなので、実は一番やりたいのかもしれない。


《チィ 》


《ピィ 》


 するとその言葉に反応して、子どもの二羽が湖の方へ飛び立ってしまう。


「二人とも~帰っておいで~」


 そんな言葉をかけるも早速獲物を仕留めにかかる。まずはアルナがエアカッターで細長いキリのような刃を作ると水中にブスリ。そして浮いてきた魚を風で飛ばしたら、すかさずエミールが氷で固めて水際にプカリと新鮮冷凍魚が流れ着く。


「はぁ~、やっちゃったか。ほら、今日は釣りしないから、帰っておいで」


 アルナはともかくエミールもつまらなそうに帰ってくる。エミールは普通の釣りも好きだけど、親のレダと同じことができるようになって嬉しかったみたいだ。


「アルナたち、釣り上手いのね」


「いや、あれを釣りっていっちゃ駄目だろ。確かに鮮やかだったが……」


「最初はミネルがやってたんですけど、今はみんなでやるようになっちゃって。たくさんとれるのはいいんですけどね」


「というか、小鳥がそんなことするんだな」


「普通はしないと思いますよ。仕留めたところでなかなか持ち上げられませんし」


 ミネルたちは雑食だけど、さすがに魚一匹となると量が多いしね。


「で、この魚はどうするの? さすがに町には戻れないけど……」


「ワインツ村で宿を経営している人が知り合いなので、その人にあげます」


「何だ、アスカはあの村で泊まったことがあったのか?」


「はい。二回だけですけどね」


「私たちは泊まりは初めてだわ。長居する用事もないから」


「まあ、そうですよね。何かの産地とかでもないですし」


 私はヴェゼルスシープを捜しに行っただけだし、明確な目的がないと行かないよね。それから二時間半ほど歩き続けて村に着いた。先にご飯でもよかったんだけど、落ち着いて食べられる村まで行くことにしたのだ。


「はぁ~、ようやく着いたな」


「うん? お前たち見かけない顔だな。何の用だ?」


「私たちは祭りの間の村の警備と矢を持ってきたんです」


「そうか、毎年すまんな。宿は開いてるから受付をしてくれ。俺は村長を呼んでくる」


「よろしくお願いします」


 入り口で番をしていた人は近くの人に声をかけると、どこかへ行ってしまった。多分村長さんを呼びに行ってくれたんだろう。


「それじゃ、アスカ。宿まで案内を頼む」


「それにしても私たちは初めてなのに、毎年ってあの人言ってたわね」


「依頼はゲインさんを通じて受けたから、知り合いにお使いを頼んだと思われてるんじゃないか?」


「そうかもね」


 私は二人を宿まで案内する。


「はいは~い。次は誰かしら? あれ、お客さん?」


「ああ、俺たちは護衛の依頼を受けた冒険者だ」


「そうだったの。ごめんなさい、この時期に村に来るのは祭りで帰省する人がほとんどだから」


「ヘレンさんこんにちは。お久し振りです」


「あら、アスカちゃん。どうしたの今日は?」


「こちらのヒューイさんたちと一緒に護衛の依頼と矢を持ってきました!」


「そうだったの。じゃあ、いつもの武器屋さんから矢を預かってきたのね?」


「いえ、今回はそれも依頼に入っていて、私が作りました。ちょっと自信作なんですよ」


「へぇ~、いつも同じデザインだから楽しみね。それじゃ、ちょっと待っててね。村長さんを呼んでくるから」


「村長さんなら……」


 私がそういいかけたところで、ドアが開き別の人が入ってきた。


「おお、あんたたちが今回の護衛かね?」


「はい、そうですけど……」


「村長、話を聞いてたんですか?」


「ああ、今日の見張り当番からの。ヘレン、ちょっとここを借りるぞ」


「暇なので私も聞いていいですか?」


「いいぞ。こちらの方々は以前も依頼を受けてくださってるから、失礼のないようにな」


 こうして依頼内容を確認するため、私たちは食堂のテーブルについた。



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