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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと変わりつつある環境

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How much?


 ベレッタさんに魔道具を渡した私だったけど、肝心の価格が分からないため、ゲインさんの武器屋にお邪魔した。この店はリュートの魔槍事件の時に訪れた店で、普段は魔力を通しやすいウルフの矢などの買い付けに使っている店だ。


「これがその魔道具か。これはグリーンスライムの魔石だな。しかし、大きいな。こんなの腕に付けて邪魔じゃないか?」


 どうやらゲインさんも盾になるような魔道具は見たことがないようで、どう扱うか分からないようだ。


「こうやって……腕に巻いたら、発動! どうです? 盾になるんですよ」


「なるほどな。魔力は必要だが壊れにくく、重量も軽い。ベレッタみたいな非力な剣士なんかにはうってつけだな」


 見たことがなくてもさすがは武器屋の主人だ。盾を展開しただけで、どういったものか特性を把握したみたいだ。


「ええ。でも私には少し大きいので、もう一つの方にしたんです。ところが、この盾を買うとなると値段がわからなくて……」


 私の代わりにベレッタさんが説明してくれる。


「なるほどな。魔石の価値が……金貨一枚半ってところだな。んで、使われてる金属は……銀か。結構しっかりした作りだな。魔石も取り替え可能で自分好みに仕上げられるところはさすがだな」


「でしょう? もっといい装備になったとしても、使い続けられるように考えたんですよ」


「まあ、普通はそんな汎用性を捨てて、新しく買ってもらえるように作るんだがな」


 ゲインさんから遠回しに商売が下手だと言われてしまった。でも、そっちの方が大事にしてくれると思うんだ。


「んで、バンドも調節ができる。まあ、これを必要とする層には十分な太さだな。ネックなのはグリーンスライムの魔石ってところだな。風の魔力持ちでないと使えんところか……」


「査定的にはやっぱりマイナスですか?」


「まあ、多少はな。だが大きくは問題がないぞ。風の魔力持ちは総じて、その魔力で素早く動くやつが多い。パワー型の剣士なんて珍しいぐらいにな。だから、これがもっとでっかい盾なら安くなるが、大勢いるスピードタイプの奴らが欲する造りだから、下がるほどじゃない。あえて言うなら、これでウィンドウルフの魔石だったら、もっと高くなるってだけだ。その場合はこれだけのサイズの魔石を用意するのが大変だろうがな」


「そうね。ウィンドウルフの魔石はどんどん値上がってるっていうわ。最近じゃ、金貨三枚近くになったらしいわ」


「そんなに高くなってるんですか!?」


「あれはお前のテントの所為だぞ。あの、バリアテントの材料になるってんで、どんどん値上がってるんだ。おかげでうちの店の武器にも使っているのが減った」


「きちんと冒険者ショップには納品してるんですけど……」


「今は予約待ちの商品だからな」


「予約なんてあるんですか?」


「ええ。だって、あれだけの機能があって金貨五枚でしょう? Cランク以上のパーティーなら絶対に一つは欲しいもの。欲を言えば一パーティーに二つは欲しいわね。でも、冒険者ショップの方が絶対に急かすなって言って、数も絞られてるのよ」


「も、もうちょっと作った方がいいのかなぁ……」


 店のお姉さんには出来た時でいいからって、ふんわりと言われてるから毎月、五個ぐらいにしてたんだよね。テント自体は向こうで用意してもらえるから、魔石への付与作業だけで完成するので、負担は少ないし十個ぐらいは納めようかな?


「真似して似たようなのを売る商店もあるけど、効果が駄目なんだよな」


「つまらない品質のものを流通させるぐらいなら手を引いて欲しいわよね」


「類似品じゃ駄目なんですか?」


「駄目よ。オーガの一撃に耐えられるのが正規品なら、類似品はぎりぎりオークの攻撃に耐えるぐらいだもの。そんな中途半端な性能じゃ、冒険者にとってはない方がましってものよ。商人たちは最悪それでもいいかもしれないけどね」


「それで、価格は金貨一枚ほどしか変わんないからな。処分も大変だし」


「処分ですか?」


 それだけ品薄なら中古でも言い値で売れそうなのに。


「ええ。出来の悪いコピー品扱いになるから、買った価格では売れないわね。正規品ならむしろ値上がるぐらいだけど、守りの力が弱いから使える回数も少ないんじゃないかって言われてるわね。実際に破損報告もあるみたいだし」


「それより、この盾の査定は良いのか?」


「そうでした! いくらぐらいが妥当ですか?」


「そうだな……金貨四枚! と言いたいが、昨今の値上がり幅を考えれば金貨五枚だな」


「ちょっと高くないですか?」


「ああ。ベレッタの言う通り、ちょっと査定は高い。だが、それこそがこれの価値だ。魔道具として守りを重視してある。その上で、長く使えるように中央部は銀で出来ている。バンドもまだ流通量の少ないサンドリザードのだろ? 見る奴が見れば最先端の技術がつまった魔道具だ。そんな魔道具をいち早く試せる……。冒険者としてはうずくだろう?」


「そういう見方なんですね。それなら、確かにその値段でも構わないですね」


「それに、細工師として活動しているアスカだからだろう。武骨な作りじゃなくて、肌に合うように作られてて付け心地もいい。ベレッタもそうだが、これを欲しがる女性冒険者も結構いるだろう。この細工の細やかさも他とは違う。しばらくは注目の的だな」


 基本冒険者たちの装備は実用性だ。だけど、Cランクぐらいからはその中で、自分の気に入った物を選ぶ人も少なくない。あくまでも、機能性が損なわれない前提ではあるけど。


「疑問もなくなったことだし、それじゃアスカ。払うわね」


 そう言ってベレッタさんが金貨五枚を渡してくる。


「あ、ありがとうございます。でも、良いんですか? 結構高いですよ」


「確かにね。だけど、これでまたヒューイと冒険できるわけだし、損はないわ」


「それじゃ、今度冒険者ショップにテントを納品する時に、お二人の分が予約できるように言っておきますね」


「本当? じゃあ、頼めるかしら?」


「ちょうど、一つだけ余ったテントもあるので、そっちにしておきますから!」


「いいの? でも、そんな変わったのじゃなくてもいいわよ」


「いいえ、ちょっと品質が悪くて使わなくなったものですから」


「それじゃお言葉に甘えさせてもらうわね」


「んで、この魔道具はいつ卸すんだ?」


「えっ!?」


「はっ!?」


 別にベレッタさんに作ったものだから、卸すつもりのない私の言葉と当たり前だろというゲインさんの声がこだました。


「いや、こんな便利な魔道具、すぐに人気が出るぞ。それの販売数の目安が知りたかったんじゃないのか?」


「普通に値段が知りたかっただけです。ベレッタさん用に作っただけなので量産は……」


「しないのか? 今だったら物は揃えてやるぞ。一個分につき取り分は金貨二枚でどうだ!」


「どうだと言われても……売れます本当に?」


「絶対売れる! ベレッタが使ってるならなおさらだ。こいつ、かなりハイペースでランクアップしてるからな。女性冒険者の注目の的なんだぞ」


 それは売れそうだ。ゲインさんの勢いにも負け、月に三つ程納品することにした。材料は早速、明日にでも宿に届けてくれるらしい。


「うんうん。アスカが来るようになってからうちは右肩上がりだからな。よろしく頼むぞ!」


「ははは。細工もやってるのでほどほどにお願いしますね」


「そういえばアスカは細工が出来るのに矢は自分で作らないのか?」


「あ~、それはですね」


「もしかして、矢が作れないのか?」


「そんなわけないだろう。アスカは俺が教えて二十分でマスターしたぞ」


「ならなんで? 買ったらそこそこするわよね?」


「まあそうなんですけど、矢って消耗品じゃないですか。一本でも結構時間かかるんですよね」


 実際に十本ぐらいは宿で作ったことがある。魔道具を使えば一本二分ぐらいで、自力なら五、六分で出来なくもない。だけど、絶望的に面白くないのだ。ある程度の大きさの牙を尖らせて、木に取り付けて矢羽根を付ける。

 この繰り返しの作業がつまらないのだ。羽に細工でもすれば気も紛れるけど、所詮消耗品だ。一度きりのただの矢に細工をするわけにもいかない。それならその時間を使って新しい細工でもしようというものだ。


「そういうこった。俺の店なら数は揃ってるし、品質もまあまあ。自分で作るぐらいなら他のことに時間を使うさ。お前らと違って金銭的にも余裕あるからなアスカは」


「なるほどね。ただの冒険者なら作る暇があるけど、アスカみたいな副業持ちならその時間で他の物を作った方が儲かるものね」


「俺たちじゃ、精々釣りをして食費を浮かせる程度だもんな」


「お前らにゃ、収穫祭の護衛ぐらいが向いてるだろうな」


「収穫祭?」


「ああ、この時期になるとワインツ村で行うんだ。今年の実りの感謝と来年の豊穣を祈ってな。確か、三日ぐらいで銀貨六枚だったかな?」


「悪くないな」


 そうかな? 三日拘束だけど、事前の移動も考えると最低四日必要だ。レディトまでの片道の護衛なら一日でそれぐらいは出ると思うけど……。


「ほら見ろ。アスカがどこがいい依頼だって顔してるぞ」


「えっ、良くないのか?」


「だって、銀貨六枚ぐらいだったらレディトまでの護衛依頼で一日あれば稼げますよ。多分、魔物もちょっとは出るでしょうし」


「やれやれ、ヒューイがこれじゃベレッタは苦労するな。まあ、危険が少ないから悪くはないんだ。ただ、拘束日数が多いからみんなあまり受けないんだよ。あの村は行き止まりの村だしな」


「でも、私はお祭りって行ったことないから受けてみたいかも」


 報酬はともかくとして、こっちの世界でお祭りはまだ経験してないからちょっと気になるな。


「まさかアスカの方が食いつくとはな。それなら、依頼が出てるから受けたらどうだ。受けるならついでに頼みたいこともあるしな」


「頼みたいこと?」


「実はな。収穫祭の中で豊穣祈願の的当てが行われるんだ。当然、出し物だから矢も特別製でな。飾りっ気のあるやつを頼まれるんだが、どうにも苦手でな。行くついでに矢を作って納品してくれないか?もちろん報酬は出す」


 なんだかんだお祭りに興味が出た私はゲインさんの依頼を受けることにした。と言っても、肝心のお祭りは来週らしい。逆に助かった。今週は小屋の作成に試験に新しい細工とやることも多かったからね。

 ついでに盾の効果も見たいのでベレッタさんたちにも受けてもらった。というか、久し振りに私と一緒に依頼を受けたかったんだって。私もベレッタさんたちとまた一緒に行動出来て嬉しい。



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