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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと変わりつつある環境

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未来話 アスとアスカ & 宗教都市アルバ

この話は確定していない未来の話なので、本編とは関係ありません。はず…。

旅に出てからにしようとすると忘れそうなのでここに置いておきます。

ただのダジャレがどうしてこうなってしまったのか…。本編読了後に目を通されることをお勧めします。

 

 アスとアスカ


 アスカたちがアルバを旅立って一年ほど。フェゼル王国(アスカたちのいる国※アルバなど)内のある町ではちょっとした騒ぎになっていた。


「お前があれを作ってないのは分かってる。だが、貴族や商人たちから是非とも本人の物を欲しいと言ってきてるんだ、アス」


「そうは言うけどよ、ディッシュの旦那。俺の腕はその辺の町の家具屋だぞ。貴族様に納品できるような物は作れねぇよ」


「そんなもの納品してしまえば分からんよ。だから、お前の名前で家具を作ってくれ。なぁに、最悪そのアス滑車だけでもいい。ガワは用意するから」


「それぐらいなら今受けている仕事の合間に出来るが……」


 俺の名はアス。このフェゼル王国で商人ギルドに所属して家具などを作っている。最近、町でというか国で噂になっているものがある。とはいっても何の変哲もないもので、ようは小さい滑車だ。アス滑車と名付けられたその滑車はこれまでと違い、大きな物を動かすのではなく、日常の小さい物を動かすのに使われている。


 なんでそんなものが噂になるのかといえば、これまで滑車は重たいものを動かすのにだけ使われていたからだ。小さいものには使わないのかって? それぐらい小さければ別にそんな物がなくとも動かせるということだ。

 それがアス滑車なるものが出回るようになった。なるほど、これなら子どもでも老人でも簡単に動かせる。日常生活でもかなり役に立つ。メンテナンスも油さえ差せば、しばらく持つのもいい。


「しっかし、誰がこんな名前を付けたんだか……」


「そう言うな。いい儲け話じゃないか。誰だか知らんが、商人ギルドに登録している家具職人のアスはお前ひとりなんだから」


「だが、変な話だぜ。確かに商人ギルドに申請された登録商品の開発者の情報は、国以降の情報を知ることが出来ない。だからみんな自分の名前を使ってアピールするってのによ」


「だからこそお前に頼んでるんだよ。よろしくな!」


「アス滑車だけだぞ。俺は細かい物はともかく、でかいのは苦手なんだ」


「ああ」


 ディッシュの旦那はああいうが、俺は絶対表立って名前は出さないようにしないとな。若い頃は細工の町で修業をして、何とか地方の町に店を持つことが出来た。

 しかし、細工もそうだが家具も見る奴が見れば一発で品質が分かる。特に貴族ともなれば真贋はともかく、その価値が一目で分かるだろう。適当な物を納品したところで、信用はされないだろう。

 旦那はこの町では中々の商人だが、それゆえ他の町には疎いところがある。今後の付き合いも考えないとな。


「とはいえ、報酬も出るんだし作っていかないとな」


「おう! アス、いるか~」


「なんだ、大工のブルスか。どうしたんだ?」


「いや、お前がえらい発明をしたって聞いてな」


「残念だがそりゃ俺じゃない。大体、そんなことが出来るならこんな町で商売してないさ」


「なんだ、やっぱりでたらめかよ。まあいいや、お前細かいのを作るの得意だったよな?」


「まあ、そこは自信があるが……」


「実はよ。仕事で使う釘とかアス滑車が不足しててな。作ってくれないか?」


「サイズは?」


「釘がこんぐらいのとこんぐらいで、滑車はこのサイズだ」


「これならすぐに作れる。といっても本業もあるから二日待ってくれ。数もいるんだろ?」


「助かったぜ! うちは家具もタンスとか大きいのしか作らんから、細かいのを作るのが苦手でな。また、頼むぜ!」


「そりゃこっちも助かるが、ついでに他にも宣伝しておいてくれ。仕事の無い日も結構あるんだ」


「任せろ! 片っ端から話してやるぜ!」


 そう言ってブルスと別れて早、一ヵ月。


「あいつはどこまで話をしたんだ! これじゃ本業を断るしかない」


 ブルスは本当に色々な店に話をしたらしく、隣町からも依頼が来ていた。依頼品は同じ、釘とアス滑車だ。金はそこそこだが、これじゃ肝心の家具が作れん。


「それにこいつらおんなじ大工だろ。なんで規格がこうも違うんだよ!」


 俺が手を離せない理由はここにあった。各大工によってメインで使う釘の長さや太さがまちまちなのだ。それを毎回、新規の仕事の時は型を作るところから始める。いくらやっても終わらないはずだ。


「それも一回、二百本程度だ。型を探すのも疲れてきた」


「お~う。アスいるか~。新しい発注だぞ」


「ブルスか。一体どこまで話をしたんだ? こっちは大忙しだ」


「良かったじゃねぇか!」


「良くない! おかげで本業が手つかずだ。それで、釘は前のと一緒だな?」


「それがな。次は昔作った家の補修なんだが、俺の親父の代に作ったやつで規格が違うんだ。もうちょっと長くて細いんだよ」


「はぁっ!? 嘘だろ。同じ店だろう?」


「いやぁ、俺と親父じゃ使いやすいサイズが違っててな。俺が親方になる時に変えたんだよ」


 馬鹿かこいつらは。こうやって、補修の度に先代のはこのサイズ。今はこのサイズと作っているのか? そりゃ時間が足りなくなるわけだ。


「そうそう。ベントの家の補修も同じ理由で発注したいんだとよ。頼むぞ」


「お前のと同じサイズか?」


「んなわけないだろ?」


 ブチッ


 こいつらのわがままにはもううんざりだ。


「いいか! お前らの仕事は雑過ぎる! きちんと統一したサイズを使え。ちょっと使い易いだなんだで一々変えるな」


「なんだよそんなことぐらいで……」


「そんなことぐらいだと! お前らのせいで釘の型だけでいくつあると思っている! もうやめだ。今後は五つの基本サイズを決めて、それしか作らんからな!!」


「それじゃ、今度の仕事はどうするんだよ?」


「その中で近いサイズに合わせろ! お前らの話を聞いていたら際限がない」


 怒りのままにブルスに言い放つと、渋々ながらも納得して帰っていった。そして、その怒りの日から二年後。




「なぁ、本当に店を畳んじまうのか?」


「お前らの所為だぞ。あれから俺は家具なんぞ作る暇もなかった。宣伝のおかげでいくらやっても切りがない」


 結局、ブルスの紹介から他の大工や家具屋に伝わり、さらにそれが広がって俺は家具どころではなくなり、滑車や釘などを作り続けていた。


「おい、看板を下ろしてくれ」


「はいよ~」


 業者がアス家具店の看板を下ろす。


「何も店を閉めなくてもよ」


「何を言っているんだブルス。店は閉めん。おい、その看板だ。慎重にやってくれよ!」


「はい!」


「閉めないって看板は?」


「読んでみろ」


「アス家具・建具部品店?」


「そうだ。お前らの所為で家具を作るどころじゃないから、その家具なんかの細かい部品を生産する工房だ。開店に合わせて弟子も二人雇った」


「なんだ。そういうことかよ。お前もディッシュみたいに捕まるかと思ったぞ」


「あんなへまはせん!」


 ディッシュは案の定、低品質な家具を俺のアス滑車を使って納品し、貴族から大激怒を受けて廃業した。噂じゃ、貴族への詐欺行為で鉱山暮らしらしい。全く、堅実な商売をしないからだ。俺はというと、部品を渡しただけと追及は逃れられた。ちゃんとアス滑車の発明者は別人だとも言ったしな。


「まあ、何にせよめでたいな。景気付けにまた話をしといてやるよ」


「いらん! せっかく休みを取るために弟子を雇ったのにふいにする気か? 妻からしつこく言われているんだぞ。次の休みは何時かと」


「けっ、色気づきやがって」




 そしてさらに数十年の月日が流れた。


「まさかこんな日が来るとはな」


 俺ことアスはあれからさらに店を大きくし、今では十人の弟子と孫弟子三十人を抱え、複数の店を持つようになった。そして今日は商人ギルドに呼ばれたと思ったら、とんでもないことを言われた。


「アス様。貴方のおかげでこの王国で使われるほとんどの釘や滑車などの建築資材の単位が統一出来ました。今後、商人ギルドではこれらをアス規格として、釘は1号、2号、3号……という形で。滑車は1系、2系、3系……という呼称を使うことにします。その他の物についても策定出来次第、公開していきます。いやぁ、素晴らしい仕事ですよ。きっと、歴史に残る偉業になりますよ」


「光栄なことだ。だが、一文だけ追加で書いておいてくれ」


「何でしょうか?」


「俺がアス規格を作ったが、アス滑車は俺じゃないとな」


 こうして俺の作ったものがフェゼル王国の共通規格として広まった。これにより、つぶれた大工や家具屋の家や家具のメンテが簡単になり、新規建設の単価も下がっていった。


「本当にアス滑車を考えたやつに感謝だぜ。今やアス規格の方が有名なぐらいだしな!」


「あなたはいつもそればっかり、たまには旅行に連れていってくださいな」


「そうは言うが大変な事なんだぞ!」


「はいはい」


 また、今日も新しい部品が出来上がる。もちろんうちの銘を入れて。俺は貴族の家具なんぞ作れる腕はないが、今や俺の店の部品を使って貴族が生活している。全く、奇妙なものだ。





 宗教都市アルバ


 ここは宗教都市アルバ。ほんの百年ほど前までは王都への中継都市レディトと港町に挟まれた普通の町だった。そんな町も今では二つの宗教の教会を抱え、巫女が常駐している。二つの宗教といっても建物は一つだけ。

 中央側にはシェルレーネ教の、左側にはアラシェル教の祭壇がある。何でも何代も前のシェルレーネ教の巫女とアラシェル教の巫女が友人でこうなったらしい。おかげでこの周辺都市の両教徒が訪れる宗教都市になった。


「はぁ、一の巫女様とティタ様はまだ戻られないのかしら」


 一の巫女様はこの教会近くの孤児院で育ったアラシェル様の巫女の末裔で、ティタ様は数十年前からこの教会に住む特殊なゴーレムだ。人語を理解するばかりではなく、魔物の言葉も話され魔物使いがよく魔物と話をしたいとやってくる。


「どうされました。ティピア様」


「エレイン様。いえ、お二人がまだ帰られないのかと……」


「二の巫女であるティピア様がいらっしゃれば問題ないでしょう?」


「魔物使いたちには申し訳ありませんが、魔物の言葉を橋渡しする以外の業務は問題ありません」


「でもすごいですわ。ティピア様もある程度魔物の言葉が理解できるのでしょう?」


「簡単なものだけです。それもウルフ種とサンダーバードたちだけですよ。分かるのもご先祖様の研究のおかげですし……」


「それでもご立派です。聖霊でいらっしゃるアラシェル様もきっと見守っておられますわ」


「そちらはそろそろ作物の作付時期で忙しそうですわね」


 シェルレーネ教は水の司る。だから、この時期には各村やら町で雨乞いの儀式を執り行っている。もちろん水不足の際には、人を派遣して水を作り出すこともしている。


「ええ。おかげさまで。ですが、そちらは魔物使いの方を始め、商人や一部冒険者もいらっしゃっているでしょう?」


「まあ。周辺の商人には信徒の方もおられますし、魔物使いもティタ様を通して話が出来るということでにぎわってはいるのですが……」


「どうかなさいました?」


「大変恐縮ですが、最近お祈りをするスペースが足りなくなってきておりまして……」


「それは大変ですね。司祭様に掛け合ってみましょうか?」


「ですが、そんなことをすれば聖霊であるアラシェル様の威光が増すと言われませんか?」


「……掛け合うだけはしてみます」


「すみません」


「いえ、シェルレーネ様とも仲の良いアラシェル様の信徒たちのためですもの。とはいえ、難しそうですが」


「新たに教会を建てようにも場所の問題もありまして。ここから近いのもあれですが、離れると余計な噂をされそうで……」


「ままなりませんわね」


「仕方ありません。根気よくです。うちの家訓でもありますの」


 そうやって話をしていると、鳥たちがやって来た。彼らは私の従魔たちだ。私は巫女であるとともに、魔物使いの家系でもある。威張れるほど強い従魔はいないけれど。

 ヴィルン鳥やバーナン鳥、それにヴェセルスシープにサンダーバード。珍しくはあるけれど、戦闘力は乏しいものばかりだ。しかも、魔力の高い種族ばかりでMPを持っていかれるため、自分ではろくに魔法を使う機会もない。Cランク冒険者になる前に魔法を使っていた時期の方が強かった気がする。


《リィ》


「はいはい。散歩ね。宿の子たちとは行かないの?」


《リィ!》


 今日はどうやら私と行きたいらしい。言葉が分かる分、こういう時は希望をかなえてあげないといけないのが玉に瑕だ。知らんぷりも出来ないし。


「た、大変です!」


 その時、大慌てで兵士がやって来た。たしか彼は東門の門番をしていた人だ。


「どうされました?」


「ま、町の近くにハイロックリザードと大量のサンドリザードが現れました!」


「まぁ!?」


「何ということ……。伝承の魔物が現れたなんて」


 かつて、百年ほど前にこの町に現れたハイロックリザードたちは当時のアルバの冒険者によって討伐された。しかし、被害も受け冒険者の中には死者も出たという記録がある。それに備えてレディトとアルバではサンドリザードに対応する訓練を行ってきたけれど、まさかこんな時に来るとは!


「せめて、ティタ様がいらっしゃったら……」


 ティタ様はその時に一緒に戦ったらしく、記録も残っている。きっと、何か対策を講じれたはずだ。


「いないものは仕方ありません。シスターたちの中で回復魔法や攻撃魔法を使えるものを集めてください。シェルレーネ教は支援いたします」


「私たちアラシェル教も行きます。非戦闘員はギルドと協力して避難指示を!」


「「はっ!」」


 素早く指示を出した私たちは、少数の戦える信徒を引き連れて現地へと向かおうとする。


《リィ》


「あなたたちは危ないからここにいなさい」


《リィ!》


「ついて行く? 馬鹿言わないで。どうやって戦うのよ。儀式? 私は見せてもらったことないけど……」


 一の巫女様が年に一度、護衛を連れて儀式を行うのは知っている。だけど、私はまだついて行ったことがなかった。何でもあまり人に見せられないものらしい。しかも、なぜか当日は悪天候に見舞われるらしく、いつもずぶ濡れになるらしいのだ。


「とにかく危ないから邪魔は駄目よ」


《リィ》


 ここで問答をしている間にも誰かの身に危険が迫っているかもしれない。私は諦めて、邪魔にならないようにと言い聞かせて現地に向かった。子どものサンダーバードが付いて来なかったのはよかったわ。

 でも、従魔の子たちだけでなく、街で放し飼いになっているサンダーバードたちまで付いてくるなんて……。



《ギャオォォォ》


「あれがハイロックリザードなのね。大きいわ。それにまだ目立った傷もないみたいね」


「これは長期戦になりそうね」


「おおっ! 巫女様たちが来て下さったぞ」


「みんな、絶対に後ろへ通すなよ」


「「おおーっ!」」


 すでに報告を受けた冒険者たちが数十人集まって、対峙している。しかし、サンドリザードはともかく、ハイロックリザードには中々、傷も与えられないようだ。


「なんて硬さだ!」


「それに魔法抵抗も高くて、魔法が通らないわ」


 ガガガッ


「また土魔法だ! みんな気をつけろ!」


「アースウォール!」


 冒険者たちは決め手を欠いたまま、戦いが続く。私たちは負傷者を回復させたり、補助したりと大忙しだ。


《リィ!》


「何? 今は忙しいの! えっ!? 今から儀式をするからそこに立てって? それどころじゃ……」


 なおも主張してくるサンダーバードたちの真剣な目つきに私は諦めて儀式に入る。いつもは踊るだけで、実際に儀式へ参加したことはないけれど、多分大丈夫なはずだ。


《リィ》


「先にマジックポーションを飲め? 分かったわよ!」


 半分やけになりつつマジックポーションを飲む。近くのシスターたちには申し訳ないけれど、しばらく彼女たちに頑張ってもらわないと。


「何を描いてるの? 陣?」


《リィ》


 サンダーバードたちはくちばしを器用に使って陣を描いている様だ。だけど、こんな陣は見たことがない。


「ここで踊れば良いのね?」


 中央の円に立って踊り出す。みんなの視線が気になるけれど、今はそれどころではない。二分程踊った後、サンダーバードたちが話しかけてきた。


《リィ リィ》


「冒険者たちを下がらせろ? 分かった!」


 さっきから魔力の流れを感じる。この子たちが何をしようとしているか分からないけど、きっと何かあるはずだ。


「皆さん下がってください!」


「何? こっちは今、戦線維持がやっとで……」


「いいから早く!」


「わ、分かった! おい、みんないったん引くぞ!」


「「おおっ!」」


 心なしか冒険者たちは何かを期待している様だ。失敗したらごめんなさい。さらに踊りを続け、冒険者たちが引いたところで、サンダーバードたちが一斉に鳴いた。私もその声に合わせて唱える。えっ!? これって魔法なの?


《リィ!!》


「ら、ライトニングボルト!」


 言霊とともにすぐに変化が訪れた。晴れていた空には雨雲が現れ、雷が鳴り出す。ハイロックリザードたちも何が起こったのだと、動きが止まる。そして次の瞬間―――。


 ピカッ!


 まばゆい光とともにハイロックリザードに雷が落ちた。


《ギャオォォォォ》


 凄まじい光によって、ハイロックリザードが悲鳴を上げる。


「今のは二の巫女様が?」


「わ、私というかこの子たちが……」


「ライトニングボルト……実在したのか」


「文献にしか載ってない伝説の魔法だもんね」


 口々に冒険者たちが騒ぐ。どうやらこの魔法のことを知っているらしい。


《ギャオォォ》


 その時、再びハイロックリザードが立ち上がり、サンドリザードたちを従えてこっちに向かってきた。


「ま、まずい。まだ奴は生きてる!」


 倒したと思っていた人たちはすぐに姿勢を整えられず、サンドリザードの攻撃を受ける。刹那――。


《ミェ~》


 横から突進してきたヴェセルスシープによってサンドリザードは吹き飛んだ。


「ラグゼ! ミセルまで」


 二匹とも私の従魔だけど、どうしてここに? 門の方を見るとサンダーバードの子どもたちがいた。その前には他のヴェセルスシープたちもいる。


「あの子たちったら……。でも、危険よ下がって!」


《ミエェ~》


 ヴェセルスシープは一声鳴くと、上空の雷雲から光が落ちる。


「あれは……ライトニング?」


 光の中級魔法だ。でも、MP消費が高くて連発出来ないはずなのに、ヴェセルスシープたちはさっきから連続で使用している。


「あの雷雲のおかげで打ち放題みたいね」


「エレイン様、ありがとうございます」


 びっくりして、倒れ込んでいた私をエレイン様が起こしてくれる。その間もヴェセルスシープたちとサンダーバードによって次々に雷が落ち、大量にいたサンドリザードは数を大きく減らし、ハイロックリザードも随分弱っている。


「これは……勝てる、勝てるぞ!」


 冒険者たちも活気づき、雷に打たれないように次々とサンドリザードを倒していく。そして、とうとう……。


「これで終わりだ!」


 一人の冒険者が剣をハイロックリザードに突き立て離れると、そこに何本もの雷が落ちていく。


《ギャオォォォォ……》


 度重なる雷撃を受け、ついにハイロックリザードは倒れた。こうして、再びアルバに訪れた危機を私たちは乗り越えた。この出来事がきっかけで、アルバではヴェセルスシープを神獣、サンダーバードを神鳥として祭るようになった。

 また、どちらも私の従魔だったことから、併せてアラシェル教を象徴する動物となった。そして……。



「もうすぐ完成ですね。ちょっと寂しいですわ」


「でも、お隣ですから遠慮なく来てください」


「ティピア様こそ、こちらへいらしてくださいね。特にバーナン鳥のレグズ様と一緒に」


「そうですね。あの子も貴女を気に入っていますし、また来ます」


 後ひと月もすればこの町に新たな教会が完成する。アラシェル神を祭るその教会の場所はシェルレーネ教の教会の真横だ。先日の出来事がきっかけでますます信徒が増え、とうとう新築したのだ。

 町を救ったとして、シェルレーネ教からも街の人たちからも寄付金を頂いて完成した新たな教会は、シンプルながら避難所としての機能も備えた頑強な作りだ。


「ですが、少し外見が寂しいですわね。よろしかったのですか?」


「はい。偉大なる初代巫女様からも貴族のような派手な暮らしは不要。堅実に生きなさいとのお言葉が遺されていますので」


「それでは来年建つ新しい教会に負けてしまいますわよ?」


「新しい教会?」


「はい。先日シェルレーネ様より神託が降りまして。内容がですね、『仲間外れはよくないわ。直ちに横にグリディアの教会も建てなさい』だったのよ」


「相変わらず、よくそちらは分からない神託ですね。他教の神様を祭る神殿を建てろだなんて……」


「仕方ありません。今後も幾度となく受ける神託ですし。しかし、アラシェル様は神託をされないのですね?」


「はい。巫女に就任する時にお会いしますが、『堅実にまじめにねっ!』とかわいい姿で申されるぐらいですね」


「かわいい姿ですか?」


「ええ。私たちに顔を見せる時はいつもその姿なのです。教会に普段安置されている像とは全く違いますよ」


「その姿は分かりますか?」


「今度、初代様の作られた像を建築記念に公開する予定ですので、ぜひご覧ください」


 こうして宗教都市アルバは三つの神を信仰する町として、発展していくのだった。




昼休みに唐突に思いついた話がここまで長くなるとは…。

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― 新着の感想 ―
アスカが残した様々な発明や従魔の奇跡を通して、世界中でほんのりと「アスカが生きた証」が人々に受け継がれていく。 こういう心が暖かくなるエピローグが大好きです。
[一言] >「俺がアス規格を作ったが、アス滑車は俺じゃないとな」  英語でアスって、尻なんですよね。  それの滑車とか規格とか、どんなものか想像するだけで勝手に半笑いに……(口モゴモゴ) >「新…
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