儀式!?
サンダーバードたちが、滅びた村の人たちと行っていた儀式がしたいということで、町の西側に来た私とディースさん。何でも広い土地がいるとのことだ。来る途中は七羽のサンダーバードを連れていたので滅茶苦茶目立ってしまった。
「うう、恥ずかしいよ~」
「仕方ないわよ」
湖の近くの草原にやってくるとピタッとサンダーバードたちが止まって一本の木を指さす。
「あれにぎしきをする」
「へっ? あれに!?」
儀式って何だろう? 正直、指さした木はそこそこ大きくて、あの草原にはないぐらいに背も高いんだけどな。
「で、本当にここで着替えるんですか?」
「話を聞く限り、村の巫女の人と一緒にしてたんでしょ。それなりの格好をしないと!」
何だか乗せられている気がするな。巫女の服があるなんて言わなきゃよかった。恥ずかしさを頑張って隠して、茂みで着替える。
「お、終わりました」
「わっ! 本当に似合ってるわ。本物の巫女みたいね」
「えへへ、そうですか?」
くるんと一回転なんてしたりして。普段は誰にも見せないから、ほとんど褒めてもらったことないしね。
「サンダーバードのうごきまねる」
「は~い」
円を描くように大人のサンダーバード四羽と中央に私で踊りを踊る。私の動きが変なせいでおかしく見えないかな?
「アスカちゃん、踊り上手いのね。どこかで練習した?」
「あっ、ムルムルにちょっと……」
「ムルムル? ひょっとして水の巫女の?」
「はい。お友達なんです」
「それでなのね。中々上手だと思うわ」
そして、二分程踊るとサンダーバードたちが何やら鳴き出す。
《リィリィリィ》
少しずつ鳴き声が大きくなっていき、それに呼応するように天気が怪しくなってきた。
「な、なに?」
「ど、どうしたの!?」
サンダーバードたちが鳴くにつれ、どんどん天候が悪化している。そして、真上には黒い雲が渦巻いていく。
「ひょ、ひょっとして……」
「まさかと思うけど、これをこの子たちが……」
タイミングといい、声に応じて変化しているのといい、間違いないだろう。そして雨も降ってきた。
「振り始めとしてはきつ過ぎないかな? 大雨なんだけど……」
《リィ!》
サンダーバードたちが声を揃えて大声で鳴く。すると私の身体から大量のMPが減る感覚があった。
「こ、これって、魔法を使ってる!?」
そして、私とサンダーバードの魔力が空に上がると、次の瞬間ー。
閃光の後に雷鳴が遅れて鳴り、目の前にある木に雷が落ちた。
「う、嘘でしょ……。天候を操るなんて……」
「ま、まさかこれがサンダーバードの由来?」
私たちはただの愛くるしい鳥だと思っていたサンダーバードのすごすぎる特技を目にした。確かに雨雲を呼び寄せて雷を起こすなんて、たとえ魔力がある鳥でも一羽じゃ出来ない。だからって―――。
「誰も見てないよね……」
「こ、これは簡単に書ける内容じゃないわね」
まだ私たちは茫然としている。でも、木に当たったのが嬉しいのか、サンダーバードたちはやんややんやの状態である。
「あたったら、いいことがおきる」
てことは外れたら悪いことが起きるの? 何という儀式だ。それにしても……ステータス!
MP:100/1150(1360)
う、うそでしょ。今日は朝一に魔力供給で210ほど持って行かれてたけど、あの一瞬で900近くのMPを持って行ったの!?
私もサンダーバードたちも魔力300ぐらいだというから、一回の魔法で4000以上のMPを使ったことになる。どんな大魔法ですか……。
「アスカちゃんどうしたの?」
「MP……900近く持って行かれてます」
「まあ、ライトニングボルトを使ったんだものね……」
「ディースさんはさっきの魔法を知ってるんですか?」
「ええ。伝説の魔法の一つよ。かつてSランクの冒険者が使ったと言われるね。ただし、本人曰く『二度と使わん』と言ったぐらい、消費と威力が見合わなかったらしいわ。文献で読んだだけだけど、まさか天候すら操る魔法だなんてね」
「サンダーバードたちが普段から魔法を使っていたのって、これを使うためだったんですね」
「魔力が強い魔物がライトの魔法しか使わないって聞いて、疑問に思っていたけど、まさかこんな隠し玉があるなんて。予想外だわ」
ちなみにさっきから驚きっぱなしの私たちだけど、無情にも雨は降り続いている。それが気にならないぐらいにはびっくりしているのだ。
「ねぇ、ティタ。ちなみにさっきの魔法は何羽から出来るの?」
「きいてみる」
《リィ》
ティタ先生にお願いして、サンダーバードたちのご機嫌をうかがいつつ聞いてみた。ちなみに本屋のおばあさんから貰った魔物図鑑には草原最弱の魔物。特に有用な素材になるようなものはないと書かれている。多分、草原最強だと思うんですけど……。
「ぎりぎり三わからできる。でも、こどもだとできない。おとなだけつかえる」
そっか、簡単には使えなさそうで良かった。それにしても唯一の攻撃手段がこんな大魔法だなんて驚いたなぁ。本当に人が見てなくてよかったよ。
数分後にようやく雨が止み、火魔法で服を乾かして着替える。
「なんだか疲れましたね」
「本当に。今でも夢じゃないかと思うくらいね。私、この子たちとうまくやって行けるかしら?」
《リィ?》
どうしたのと子どものサンダーバードがディースさんに近寄ってくる。割と気に入られてると思うんだけどな。儀式についてくるのもいいって言ってたし。
とりあえず、儀式も無事に終えたし、宿に一度帰ることにした。途中で門番さんに『急に雨に降られて大変だったな』って言われたけど、そういう本人も濡れてたし、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「やっと帰ってきたわね」
「そうですね……。というかこの庭も結構濡れちゃってますね」
どうやら、さっきの雲はアルバの街中にも雨を降らせたみたいで、そこそこ降ったみたいだ。
「さて、いよいよ従魔の話ね。アスカちゃん、ティタから説明してもらっていい?」
「はい。ティタ、お願いね」
ティタから街で暮らすのと、研究のために従魔になって欲しい旨を伝える。説明を終えるとトトトトと子どものサンダーバードが一羽、ディースさんに近づいていく。
「いいの?」
《リィ!》
ディースさんの回りを回りながら鳴く。どうやら踊り自体が好きなようだ。
「それじゃあ、契約するわね」
パァッとサンダーバードが光ると、続いて大人のサンダーバードも二羽光った。
「ふふっ、やっぱり家族愛が強いのね。あなたと契約したら、お父さんたちとも繋がったみたい」
はぇ~、これが群れとか複数体との契約か。私は今まで単独契約ばかりだったから初めて見たよ。
「アスカちゃん。早速で悪いんだけど、ギルドまでついてきてくれるかしら? すぐに登録したいの」
「分かりました!」
無事に従魔に出来たので、ギルドへ行く事になったんだけど……。
「結局、君たちもついてくるんだね」
《リィ!》
仲間外れにしないでと、もう一家族もついてきたのだ。奇しくもまた、街の人に見られてしまっている。
「あの、ディースさん。今回はディースさんが先頭を歩いているのに、何で私ばっかり見られているんですか?」
「そりゃあ、アスカちゃんが魔物使いっていうのは周知の事実だもの。きっと、アスカちゃんの従魔だと思われているわね」
「そんなぁ~」
結構恥ずかしいんだよこれ。サンダーバードたちは私がついてきてるか振り返って見てくるし。
「さ、着いたわね。すいません! 従魔の登録を……」
「何だ、ディースじゃないか。ギルドに来てどうしたんだ?」
「あら、ベルンたちもいたのね。久し振りね」
「こんにちは! ディースさんの知り合いですか?」
「ええ、前までいたパーティーのみんなよ」
「ディースさん、パーティー抜けちゃったんですか?」
「そりゃそうだろ。魔法使いディースと言えば、この町でも有数の実力者だったが、今や流行らねぇ魔物使いだからな。従魔もいないし、一緒には動けねぇよ」
「そうね。でも、今日は念願の従魔の登録に来たのよ」
「そうなの? おめでとうディース」
「ありがとう、マナ」
マナという人も同じパーティーの人なんだろう。こっちは見るからにレンジャーって格好だ。ただ、大荷物を背負ってるけど。
「で、どんな魔物なんです?」
「リュクスも興味あるの?」
「この辺には他に魔物使いがいませんから。今はアスカさんがいますけどね」
「この子たちよ」
ディースさんがひょいっと子どものサンダーバードを抱える。
「何だそいつは、鳥か?」
「サンダーバードよ。ほら、レディトの向こうにある山に住んでるでしょ」
「ああ、あいつらか。すぐに逃げるし、ろくに金にもならないから忘れてたぜ」
「私も近くでみるの初めてかも。さわっていい?」
「う~ん。人見知りするし、聞いてからね」
「ディースともあろうものが従魔のご機嫌伺いかよ……」
「ベルン。そう言わないの。この子たちもちゃんと生きてるのよ。こっちの都合で連れ回すのだから、無理強いはよくないわ」
「へいへい」
「みんな、どうかな?」
ディースさんが聞くと、親鳥がちょいっと前に出てきた。どうやら自分ならいいということらしい。
「この子ならいいみたいよ」
「そっちのかわいい子は?」
「この子は子どもだから、知らない人には触らせてくれないみたいね。その子はこの子の親鳥なの」
「へぇ~。子ども思いなんだね」
「そうなの。とても家族の絆が強いのよ」
「じゃ、失礼して」
マナさんが親鳥に触れる。くすぐったいのか最初はちょっと翼をバタつかせたけど、すぐに落ち着いた。
「山で見た時はすぐ逃げちゃったけど、割りと人に懐いてるね」
「従魔だし、アスカちゃんで少しは慣れてるからだと思うわ。私も最初は引かれたもの」
「そうなんだ。まあ、ディースは新人さんだもんね」
「そうね。これから頑張って追い付かないとね」
誰にだろう? ディースさん、目標にしてる人でもいるのかな?
「それで、ディースは従魔登録するの? しないの?」
目の前には青筋を立てたホルンさんがいた。そういえば声をかけたままだったっけ。




