番外編 ヴォードの依頼
俺の名はヴォード、Bランクの戦士だ。Bランクになったのは一年前、それからパーティーを組み直して、現在は六人のパーティー”白影”のリーダーだ。
「リ~ダ~、何か楽して儲かる依頼はないの?」
「あるわけないだろ。それより、いい奴はいないのか?」
「それっスけど、本当にあの二人を首にしてよかったんスか?」
「前に話した通りだ。重戦士は金食い虫だし、レンジャーはすでにいる。候補の職でいいのがそれしかなかったんだ、うちには必要ねぇ。大体うちは六人の内、レンジャーが一人にポーターが一人だ。これ以上、戦力として当てに出来ん奴はいらん」
「それを言われると辛いっス。自分も戦闘は罠かナイフだけっスから」
「罠もただじゃない。重戦士はもっての他だ。属性武器に全身鎧、そしてあの行軍速度だ。食料も必要だし、野営も多くなる。お前ら耐えられるか?」
「そう言われると嫌ですが、戦士でもよかったのでは?」
「あいつが戦士になっても避けられるわけないだろ? なら、うちじゃいらん。せめて、ジャネットが来てくれたらな」
「あの人強いっスからね~」
ジャネットは確かに若くて腕が立つ。だが、それだけじゃない。まず人を使うのがうまい。周りもよく見ているし、前衛と後衛のつなぎもできる。そしてあの面倒見の良さだ。強くなりたいが野心はないからサブリーダーにぴったりなんだ。正直あいつさえいれば、たとえ俺がこいつらに無茶を言おうと出て行くことはない。そう言えるぐらいのやつだ。俺が今25歳だ、引退まであと5年ぐらいはあるだろうがその間、あいつさえいれば間違いなくパーティー運営できるぐらいのやつだ。
「そういえば知ってる?ジャネットさん、どこかのパーティーに入ってるらしいわよ」
「そうみたいっスね。最近じゃ、レディトであんまり見ないし、アルバが拠点になったみたいっスね」
「それにこの前のハイロックリザード騒ぎの時は、向こうのギルドマスターと功を競ったんですって」
「私も聞きました。一級素材を優先的に買えたらしいですね。参加したかったです」
「サンドリザードとは比べ物にならないんでしょ? 私は魔法使いだから大して関係ないけど」
「馬鹿を言うな。あれは魔法使いにこそ有用なんだぞ。軽くて丈夫で、魔法もかけられる。本来はAランク冒険者の装備なんだからな」
「でも、高いんでしょ? 魔導書も高いし、中々手が出ないのよね」
「魔導書と言っても、絶対役に立つかは分からんだろ? あれは長年使えるものだぞ。俺だって欲しかったんだ」
「リーダーがそういうならよっぽどね」
「そういえば、前にユスティウスさんが見せびらかしてたっスね。マントを羽織ってめっちゃいい笑顔だったっス」
「あの人、魔力も上がったらしいわよ」
「嘘だろ。そんなんで上がるなら苦労しねぇよ」
「でも、実際上がったっていってたし。本人のやる気なんじゃないの?」
「やる気はめっちゃあったっスね」
しかし、こいつらも色々考えるようになってきたな。たまには息抜きに依頼でも受けるか。そう思い受付に行く。
「変わった依頼ですか?」
「ああ、難しくなくていい。なんかないか?」
「ありますよ~。それもとっておきのが」
そう言って出してきたのは探索依頼だ。しかも、初回の日付は三十年以上前。どこから発掘したんだこんな依頼……。
「さすがにこんなのはな。誰も受けないんだろ?」
「それがですねぇ。こっちの遺跡の探索はもう決まっちゃったんですよ」
「こんな依頼を受ける変わり者がいたとはな」
「でも、ジャネットさんも賛成してましたよ?」
あいつが? あの、強くなるために依頼を選んでいたあいつがこんな依頼を受けたのか!
「実際、数日後にはやって来て受けるはずです」
「そうか……」
ちょっとは面白くなりそうだ。この依頼を受けるればあいつらのいい気分転換になるだろう。こうして、俺はジャネット達に賭けを持ち掛けて、滅びた村に旅立った。
「ねぇ~、本当にこんな先に村があるの?」
「ある。遺跡だって俺は見たことがある。それに依頼は三十年も前のだが、話はきちんとしていた。まずはエヴァーシ村に行って話を聞く」
「あの村って何もないから嫌いなのよね」
「まあ、僻地の村ってあんなもんっスよ」
「ポーター君も頑張ってね」
「はい!」
「全く、ポーターの癖にマジックバッグひとつなんだから、探索ではしっかりしろよ」
ポーターが欲しいというので雇ったが、まさか持ち物がマジックバッグの小がひとつとは。Dランクだから仕方ないのかもしれないが、それでも二つぐらいは持っているものだ。もしくは体力がバカ高いとかな。
「情報はこんなものか。明日から現地に出発だ」
「了解」
村で得られた情報と言えば、依頼票に書いてあることと変わらず、新しい発見はなかった。考えてみれば古い村の話、三十年前の情報より今の人間の方が詳しいことの方がおかしいのであり、別に寄らなくてもよかったな。
「ポーター君それなに?」
「円盤っていって、この村で流行ってるそうっス。エンゲツリンとかいう武器もあるんですが、僕にはちょっと高くて……」
「へ~、面白そうね。やることもないし、これで遊びましょう」
「はい!」
「のんきな奴らだ」
「だが、あんなものをいつこの村の奴らが作ったんだろうな。リーダーは見たことあるか?」
「いや。だが、俺には使いづらそうだ」
「今から新しい武器とは私には難しいですね」
「そういうことだ。ポーターのあいつにはちょうどかもしれんがな。大して体もでかくないし、あれならそこまで邪魔にもならんだろう」
長い付き合いになるかもしれんし、武器型のエンゲツリンを三つぐらい買っておくか。サイズも色々あり四十センチぐらいのは銀貨二枚程度だ。三つもあればしばらく使えるだろうし、戦力になるならまあいいだろう。
「これで伸びたら儲けものだ」
ジャネットもあの様子じゃ抜けそうにないし、戦闘中に周りを見れそうな奴はいてもらわないと困る。俺はそういうのは苦手だからな。そして、エンゲツリンを買っていてよかったと思う場面に出くわした。
「もう、またなの! 今日二回目の襲撃よ」
そういうのは魔法使いのエディンシアだ。滅びた村の位置も確認して野営していたところへ襲撃があったのだ。
「慣れろ、草原じゃこのぐらいは当たり前だ」
「本当に村があるんでしょうね! はぁ……怒るのも疲れてきたわ」
「でも、僕は新しく買ってもらった武器が自分に合っててよかったです」
「……そう。で、戦えそうなの?」
「はい、ローグウルフを一匹仕留めました。ゴブリン以外じゃ初の戦果です」
「へぇ~、やるじゃないの。ちょっと見せてよ。どうせ周りの確認に行かないといけないんだし」
「良いんですか?」
「ああ、見廻りついでに行ってこい」
やれやれ、治まったか。あれが無けりゃまた小言だ。早くこう言うのを任せられる奴が出て欲しいもんだ。
翌日、ようやく村に着いた。しかし、着いた先は廃村も廃村。これなら遺跡の方がまだましだった。
「ねぇ、ヴォードさん。ほんとにお宝あるっスか?」
「さあな。三十年も前の依頼だし、その間に誰か来たかもしれないしな」
「ウチは野営場所を探すんで、誰か付いて来て欲しいっス」
「なら、お前付いてやれ。捜索を進めておく」
「分かりました」
捜索って言っても、家屋はほぼ朽ちていて探す気にならないほどの廃墟だ。探し始めたが案の定、何もない。変な祭壇跡のような謎の物が共通しているだけのただの村だ。
「何の変哲もない村だな。こりゃ、探すだけ損だ」
「一応、一日は調べるんでしょ?」
「依頼書にも一日以上の調査と書いてあるからな。調べんわけにはいかん。だが、日が落ちるまでだ。無駄な時間は少ない方がいい」
こうして、昼休憩を取りながら村を調べていく。大きい家の跡も数か所あったが、どこも崩壊がひどく手を付けられない。
「そっちはどうですか?」
「駄目っス。これ以上触ったら崩れるっスね」
「いっそのこと潰しちまってから探すか?」
「それでもいいっスけど、埃や塵だらけになるんで時間かかるっス」
「どうせ何もありゃしないんだ。やってみるか」
「じゃあ、行くわよ。ロックランス!」
地属性の下級魔法で簡単に家が崩れる。村ということでやわな作りもあるが、相当古い建物のようだ。他の家を調べた後に改めて調べてみる。
「どうだ?」
「カスみたいな魔石の欠片ぐらいっスね。これじゃ売れないっス」
「しょうがない。ここで一泊して帰るか」
「リーダー、賭けに負けちゃうけと良いの?」
「引き分けだ。まだ、Dランクの頃に実はあそこに入ったことがあるんだよ。あっちは家どころか小屋の跡しかない。依頼書に書いてあるように先に何かがある可能性はゼロだ」
「言ってあげなくてよかったんですか?」
「言ったって誰かが受けなきゃ、証明できんからな。あんなクズ依頼でも誰かが消化してやったらギルドは喜ぶだろう。最悪、ギルドの誰かが行かなきゃならんようになる前にな」
まあ、事前の情報が大事ってことだと付け加える。しかし、ところどころ埃の少ない場所もあるな。この辺を根城にしている魔物がいるかもしれん。建物もないよりはましか……。
「テントはあっちだったな。壁はあるか?」
「はい。一応まともな物が。ただ、安心できる強度はないですが……」
「魔物がいちいち壊そうとは思わんさ。今日こそうるさいのは遠慮したいからな」
こうして、何とか襲撃の無い一夜を過ごした俺たちは翌日朝早く、レディトに向けて出発した。俺としては魔物の素材が手に入るからもう一日でもと言ったら、すぐに全員から却下された。全く、もう少し襲撃にも耐性が必要だな。
新たな課題を解決できる依頼をレディトに帰ったら探さないとなと思い帰路に着いた。




