パラメータって何?
何だかパラメータの説明を聞きに来たのに、試験官として働いてくれみたいなことをジュールさんに言われてしまった私。
「私じゃ試験官なんて無理ですよ~」
「おお、アスカも話が分かって来たな。実は明日、DランクとCランクの昇格試験があるんだが、適当な試験官がいなくてな。特に一人は水魔法を使うんだが、火魔法を使う魔物が周辺にほぼいないだろ? ちょうどいいから経験させてやりたかったんだよ」
「いやぁ、明日は細工がですね……」
「そうか。商会の方には話を通してやるから納期を教えてくれ。何なら商人ギルドに掛け合ってもいいぞ」
「いや、そこまで忙しいわけじゃ……」
「それなら大丈夫だな? 昼過ぎに始める予定だから待ってるぞ。十四時にいればいいから」
「は、はぁ」
思いもよらないところで、予定が出来てしまった。
「まあ、試験官って言ってもちゃんとした仕事だから、依頼料も出るぞ。それにいい経験にもなるしな」
「それはそうかもしれないですけど……」
「さあ、俺の問題ごとも片付いたし、次だな。次は魔力だ。これは俺よりアスカの方が身に染みて分かってると思うが、魔法って言うのはLVが上がるほど効率的かつ、威力も上がっていく。それとは別に魔力が威力に上乗せされる。ここで重要なのは魔法のコントロールに関しては魔力は関係するものの、一定以上は影響を及ぼさないことが分かっている」
「そうなんですか?」
魔法なんて使ってるところを見たことないのに、さすがはギルドマスターというところだろうか。
「具体的に言えば、LV2以下の初級魔法は80以上、LV4以下の中級魔法は170以上、LV6以下の上級魔法は320以上魔力があってもコントロールに影響を及ぼさないことが分かっている。つまり、LV2までの魔法を使う場合は魔力が80の奴と200の奴ではコントロールに関しては同等だということだ。もちろん一般論で全員が同じようにはならないがな」
「それを補うのが魔力操作のスキルなんですね」
「そうだ。魔力操作さえあれば、威力や範囲や方向を魔力が低くてもコントロールできる。Cランク以上の冒険者の中で、魔力数値よりスキルが重視される要因の一つだな。大魔法しか使えない奴よりも調節が効く魔法使いの方が勝手が良く、戦いでも役に立つからな。どうしても上級の魔法は範囲が広いものが多くて、味方も巻き込む可能性が高く、いざというところで使えないことも多い」
「それなら、手数や継戦能力を重視するってことですね」
「ああ。一発逆転でその場を切り抜けることが出来るのは魅力的だが、それだけの調整が出来れば一発に賭けなくても逃げられるからな。冒険者が誤解しがちなのは相手を倒すことが重要だと思うことだ。実際には生きて帰ることが一番大事なんだ。クラウスだって生きて帰ってきたからこそ、解体場の責任者として働けるんだ。倒したところで、死ねば素材の価値は0だからな」
「ホルンさんにも聞いたことがあります。Aランクの魔法使いは結構魔力がバラバラだって」
「そうだな。もちろんランクが高いから、魔力も高い傾向にあるが、低いと200台の奴もいる。Bランクでも300の奴がいるのにだ。逆にBランク以上はそういう魔法を器用に使う才能の方が大事なんだ。敵が止まってるわけじゃないからな。詠唱に時間がかかったり、効率的に動けない奴は大体ここで止まる。うちのギルドにも一人いる」
「ハミルさんですか?」
「そういう時は名前は伏せてやれよ。本人も気にしてるんだから。あいつもCランクなら実力はかなりのものだぞ。上級魔法も使うしな。まあ、なんでそれでCランクなんだってことでもあるんだが……。判断力とMP切れさえなければなぁ」
「MP切れですか?」
「あいつは魔力の割にややMPが低くてな。加減も苦手なもんだから、長期戦になるとな。ああ見えて慎重というか怖がりでな。必要より上位の魔法を使うことが多くてそうなるんだが……」
「まあ、後衛だと安全面は気になりますよね。装備もあんまり良くないですし」
「そうなんだよな。もし、いい防具があったら一皮むけるかもしれんが、魔法使いは魔導書を買うのも金がかかるから、あれこれ言えなくてな。ま、そういうわけで魔力は高い程いいが、それ以上にコントロールなんかのスキル恩恵が重視って感じだ。最後は運か。運はなぁ……」
ここまで饒舌だったジュールさんが口籠る。
「どうかしたんですか?」
「いや、運は説明が難しくてな。素材の入手やダンジョンの宝箱で、良いものが出やすいなんて話もある。じゃあ、運が高い奴なら必ずいいものを持ち帰るかって言われるとそういうわけでもない。ただ、高い奴の方が良いものを持ち帰るのは確かなんだが……」
「何か言いにくいことがあるんですか?」
「言いにくいっていうかな。運は他のパラメータと違って伸びないもんでな。三桁あれば上位とまで言われるぐらいだ。そして、高い奴が成功してるって言ったが、対象者もぐんと減るわけでデータとしては微妙なんだよな。少なくともこの数値を見て、パーティーに加える加えないって話を聞いたことはないから、あればいいぐらいなんだよな」
「ちなみにAランクの人でどのぐらいですか?」
「20ぐらいから80ぐらいまでいるはずだな。どっかには100ぐらいの奴もいるとは思うが、ほとんど注視しないからな。噂を信じてダンジョンによく潜る奴らが一人ぐらいパーティーに入れるぐらいだ」
「じゃあ、需要としてはそこそこってところですか?」
「需要な、まあ……」
すごくジュールさんの歯切れが悪くなっていく。何かあるのだろうか?
「何か問題があるんですか?」
「問題というか、否定も難しいというか……」
「聞かせてもらえますか? 私も結構高いと思いますし、聞いていた方がいいと思うんです」
「そういや、アスカは旅に出るんだったな。じゃあ話しとくか。だが、後味の悪い話だぞ」
「分かりました」
「さっき言った、ダンジョンに連れていくって話だがな。それには続きがあって、運が自然作用する派と自身にしか影響を及ぼさない派に分かれてるんだ。簡単に言うと魔物のドロップ品や宝箱の中身は本人が開けないと意味がないかどうかだ」
「あ~、確かに運のいい人と一緒に買うのと、買ってもらうのだと違う気がしますよね」
「そこでだ。アスカみたいに戦える奴がたまたま運がいい場合は良いんだが、運び屋とか非戦闘職の運が高い場合はな、そいつらが宝箱を開けたり、魔物に止めを刺すことになる。分かるか? 村人に毛の生えた冒険者が、上位の魔物に止めを刺す危険性が」
「そ、そんなことしたら死んじゃうじゃないですか!」
「実際、年に……いや数か月に何件かはそういうことも起きる。どんなに運がいい奴でも助からない状況がな」
「それって良いんですか?」
「良くはない。だが、非戦闘職や駆け出しが上位の魔物の素材を得るチャンスでもある。判断するのは本人たちだ。うまくいけば何年も生活できる金が手に入ることもある。もし、無茶してる奴がいたら注意してやってくれ。話を聞かない奴もいるだろうがな」
「そんな……」
「それだけ美味しい話でもあるってことだ。本人たちにすれば、ろくに努力もしないで金が手に入るチャンスなんだ。それもきちんと証明されていない情報でだぞ。成功譚もあるからな。良くも悪くもパーティーは任意加入だ。本人の意思を尊重するのが冒険者ギルドのいいところでもあるからな。アスカもうまい話には気をつけろよ」
「はい……」
「まあ、最後はこんな話になっちまったが、パラメータに関しては大体こんな感じだ。分かったか?」
「はい。ありがとうございました」
そして、出て行こうとした私にジュールさんが声をかける。
「明日、忘れんなよ」
「は、はい」
くっ、仮病か何かを使おうと思ったのにくぎを刺されてしまった。仕方なしと思い直して、細工に戻るため宿に帰る。明日はせっかくの休日だったのにな。
「まあ、午前中は自由だしまだマシかぁ」
気を取り直して、私は細工に打ち込んだ。切り替えないと依頼も終わんないしね。




