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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと遺跡探検

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転居


 あれから、細工を大量に完成させた私は優雅な休日を迎えていた……筈だった。


「わりぃなぁ~、手伝ってもらってよ。運び込む荷物は少ないんだけど、出すもんがな……」


「いいよ。二人とも私のお友達だもん」


 順調に店を構える準備をしていたジェーンさんだったけど、そこは魔法使いで女性だ。薬を作るための窯だったり、道具は思いのほか重たいものが多く、店に置く物を何とか運び終えたものの、家財や製造道具が運び込めないままだった。


「……ちゃんとお金出す」


「いいですよ。私も家を紹介してもらえて助かりましたし」


 というか、窯は一つだけど、かめは大量にある。用途や入れるものによって使い分けるらしく、PとかMとかやたら記号が入っている。


「ねぇ、ジェーンさん。このPの瓶っていったい何ですか? 変わった色ですけど」


「それは……ポイズンポット。魔物に投げつける系の薬品製造用」


「へっ……わっ!」


 慌てて内側から手を放し、外に持ち変える。そういえば、魔物の肝とか一見使えないような物も集めてたっけ。


「でも、冒険者ショップではあんまり見ない系列のポーションですね」


 こういったポーションがあるとは聞いたことあるけど、ショップの方ではほとんど見ないんだよね。

 しびれ薬が銀貨一枚ぐらいで売られてたけど、サンドリザードは耐性を持つみたいで、あの頃はオーガも珍しかったし、買う機会がなかった。


「今まで周辺の魔物が弱かったから売らなかった。こういうのもまだ薬屋で扱いはわずか」


「へぇ~、この辺の魔物が強くなったから用意したんですね。さすがはジェーンさん」


「ううん。前からずっと研究してきた。サンドリザード用のしびれ薬も作った」


 えっ、それって結構すごいんじゃ……。でも、材料はどうしたのかな?


「研究ってお金かかりそうですけど、大丈夫だったんですか?」


「冒険者としての活動と、他のポーションの販売。他にも水魔法のお仕事頑張った」


「ふ~ん。あんた、魔法使いだったのか。若いのにすごいんだな」


「若いと言ってももう十九だし……」


「へ~、あたいと三つしか違わないのにもう店を持つなんてすごいな」


 へっ、今フィーナちゃんなんて……。十九歳のジェーンさんより三つ年下ということは?


「フィーナちゃんって私より年上なの!?」


「アスカは今幾つだ?」


「じゅ、十四歳」


「なんだよ。二こも下なのかよ」


 身長変わらないぐらいだし、絶対年下だと思ってたのに……。


「改めてよろしくお願いします。フィーナさん」


「よせよ、アスカにそう言われると気持ち悪ぃ」


「で、でも、年上なんだし」


「今更だろ。今まで通りでいいよ」


「じゃあ、フィーナちゃん。フィーナちゃんは薬とか買わないの? せっかく知り合ったんだし」


「う~ん。ポーションぐらいは買うかもな。でも、薬って高いだろ? あんまり世話になりたくねぇなぁ」


「大丈夫。必要量だけでも買える。頭痛薬とかも一日分から」


「そっか。なら、邪魔するかもな。弟たちもまだ小さいからさ。熱とかよく出すんだよ。薬草とかでも効くんだけどな」


「薬草はゆっくりだけど効果時間が長い。薬はすぐに効いて、ちょっと効果は短め」


「へ~、そうなんだ。なら、困ったら頼らせてもらうよ」


「うん。その代わり、薬草をお願い」


「任せとけよ! っていいたいけど、まだまだアスカの方がうまいんだよな。もうちょっと頑張んないとな」


「期待してる」


「そうかなぁ。フィーナちゃんもすごいと思うけど」


「ホルンさんに聞いたぜ。アスカって滅多に薬草採取で金貨一枚以下にならないんだって」


「そ、そんなことないよ。それに量を採れば誰だって行くってば!」


「私は超えたことない」


「だよな~。あたいもアスカに聞くまでろくに稼ぎにならなかったよ。まあ、正規の商人じゃなかったけどね」


「とはいっても、私も特別なことをしてるわけじゃないし。採り方と道具の使い方だよ。そうだ! 道具と言えばフィーナちゃんは採取用のナイフ持ってる?」


「んにゃ。今度買おうと思ってな~」


「ならこれ!」


 私はマジックバッグから採取ナイフを取り出す。


「いいのか? これでもちょっとするだろ?」


「実は細工ついでに自分で作ったのがあるんだ。サイズとか持ちやすさが違うから、これは最近使ってなくて」


 実はレディトの道具屋で石を見ている時にティタがお勧めしてくれた鉱石から作ったナイフがあるのだ。わずかだけど、鉄の中にミスリルが含まれているらしく、売ってるものよりも魔法の通りが良くて、戦闘にも何とか使える。

 それにつばや持ち手も自分に合った形にしてるから、最近はそっちしか使ってなかったんだ。


「い~もん、貰っちゃったな。手伝いに来たのに悪いな」


「ううん。こういうのって売ってもお金にならないから、処分に困ってたんだよね」


「そうなのか?」


「戦闘用じゃないし、買うのも新しく採取を始める人ぐらいだから中古もほとんどないの。元々大銅貨一枚程度のものだから」


「採取用は余った金属で作るから特に安い。料理用の刃物の方が高価」


「へ~。持ってなかったあたいには何でもいいよ。それに鞘付きだしな」


「抜き身でなんて渡せないしね」


 もし、付け加えるとしたらそのナイフは採取用でも鋼製の良い物だけど。採取は稼ぎ頭だからナイフも切れ味の良い物を買ったのだ。

 何か言いたそうなジェーンさんに口止めのジェスチャーを送る。彼女ならきっとあれがそこそこするものだと知っているだろう。


「ふぃ~、今日はほんとにここまででいいのか?」


「うん。後は結構壊れやすいものばかりだから」


 ちらりとジェーンさんの視線の先を見ると、フラスコとかビーカーみたいなのが並んでいた。確かにガラス製品は高いし、素人の私たちは触らない方がよさそうだ。


「これ、報酬」


「銀貨じゃないか。いいのか?」


「壊さずに運んでくれたから。壊してたらもっと少なかった」


 ジェーンさんによるとこの世界の引っ越しは、大抵は知り合いか商人ギルドを介してのものになるそうだ。だけど、専門の業者はなくてその時限りの片手間なので、結構壊れたりすることもあるらしい。

 運ぶのも木箱だし、クッション性のあるものに包んだりもしないからね。包むとしたら布製品を置くぐらいだ。それでも底が抜けたり落としたりと、大体何かが破損して終わるのが通例らしい。


「特に道具類は専門のが多いから、集めるのも大変で壊れなくて助かった」


 分かる。細工用の道具とか材料もおじさんのところで揃えてるけど、そうじゃなかったら結構大変なんだよね。実際にレディトの細工屋さんとかだと、半分ぐらい揃わない。

 あっちは店の人が細工師じゃなくて、作ったものを仕入れて売るのと、道具を取り扱ってるだけだ。取引先の細工師がいらないものは取り扱わないみたいなんだよね。でも、店の面積からすると、ほとんどの店はそんな感じみたい。


「なら、貰っとくな。そうだアスカ! 例の物、手に入ったから今度持ってくよ」


「本当! なら、宿で待ってるね」


「おう! じゃあな」


「例の物って?」


「あんまり声を大きくしては言えないんですけど、シェルオークを頼んでるんです」


「シェルオーク……ひょっとして葉っぱも?」


「どうでしょうか? ついでに持って帰ってるかもしれないですね」


「葉っぱ! 葉っぱがあるの!? 葉っぱ欲しい!」


「ちょっ、やめてください。往来でなに叫んでるんですか。おかしな人になっちゃいますよ」


「そんなことより葉っぱなの。あれがあれば今作ってるポーションが良くなる。だから葉っぱを……」


「わ、分かりました。きちんと聞いておきますから!」


「葉っぱ。お願い」


 さらに家に戻る間にも葉っぱと連呼するジェーンさん。ああっ、街の人が避けてる。大丈夫かな? 店を開く直前なのに。宿に戻って数分後、早速フィーナちゃんがシェルオークを持ってきてくれた。


「ありがとう、ちゃんと取ってこれたんだね」


「ああ、ついでに葉っぱも降ってきたから持ってきたんだけど、これも売れるもんなのかなぁ」


「葉っぱ! 葉っぱだ!」


「お、おう? 大丈夫かアスカ?」


「はっ」


 いけないいけない。私もジェーンさんの影響が出てしまったみたいだ。


「うん。葉っぱもきちんと売れるよ。だけど、枝とかと一緒で貴重なものらしいから、先にホルンさんに言ってからにしてね。人前で出したりしちゃだめだよ」


「分かった。アスカみたいなのが出てきても困るからな」


「もう~」


「ははっ! でも、アスカはいらないのか?」


「欲しいけど、ジェーンさんも欲しがってたからなぁ。私は最悪自分で採りに行くからいいよ」


「分かった。それじゃあ、先にジェーンさんに言うよ」


「あんまり、簡単に採れるって言っちゃだめだよ」


「分かった。まあ、あの木も一本だけだしな」


 うんうん。資源の貴重さが分かるところもフィーナちゃんのいいところだ。分かってない人は薬草も全部採っちゃおうとするからなぁ。再生する資源なんだからちょっとは我慢して欲しいんだけどね。


「それじゃあ、報酬だけどこれって古木だよね?」


 色もちょっと黒っぽいし、前にノヴァが見つけたやつに似てる。


「おう! ちゃんと木に古いのって言っておいたからな。だけど、あんまり枝を折ってもかわいそうだし、毎回は持って来れないからな」


「うん。それでいいよ。それじゃあ、はい、報酬ね」


「おう、ってこれ多すぎないか?」


「良いの。古い枝は魔力の通りもいいから、魔法使いには最高の杖の素材なの。これでも普通か安いぐらいだよ」


「遠慮なくって言いたいところだけど、さすがにあたいが持つには高額過ぎるよ。カードに入れてくれ」


「そっか。なら、ギルドへ一緒に行こっか」


「おう!」


「ついでにいい店紹介するよ。何かの記念日とかに利用するといいよ」


「ほんとか!? 助かるぜ~。その辺の店はちょっと入りづらくてよ」


 こうして私たちはギルドへ行った帰りにフィアルさんのお店で食事をしたのだった。



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