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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと古きもの

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家探しはアスカの仕事


 二人で家について色々考えるものの、中々良い案が浮かばない。そんな時、横で見知った顔を見つけたのだった。


「……そう。部屋付きの店舗。向かいに……余ってる奴」


「む、向かい? えっと……ここのこと」


「……そこ」


「ちょっと待っててください。家賃とかの情報貰ってきます」


 受付の人が引っ込んだので声をかけてみる。


「あれ、ジェーンさんお久し振りですね。どうしたんですか今日は?」


「アスカ。店出す」


 隣に並んでいたのはジェーンさんだった。話を聞くと、薬師としての経験を積んだので店を出してみることにしたらしい。でも、引っ越しが面倒なので今住んでいる向かいの空き店舗を使いたいとのこと。

 そんな理由で場所決めちゃって大丈夫かな? 確かジェーンさんの家って、西側でギルドともちょっと離れてるところだったような……。


「そこで大丈夫なんですか?」


「多分。ドルドとか店近いし」


 そういえば、西側でも冒険者が寄り付きそうな店が近くにあったな。やっぱり色々考えてたんだ。


「じゃあ、前のお家はどうするんですか?」


「解約」


 何と、ここで空き部屋情報が。


「ち、ちなみにお家賃おいくらでした?」


「ん? 銀貨三枚半。なんで?」


 うう~ん。ちょっと高いなぁ。でも、あの近くが一番安いっていうし、これ以上は難しいのかも。


「実は家を探してる子がいて……」


 フィーナちゃんのことをジェーンさんにも聞いてもらう。


「……それはかわいそう」


「でしょ。ジェーンさんもそう思いますよね。だけど、ちょっと家賃が高いんですよね。もう少し安いとこ知りませんか?」


「あの辺だと、あそこが一番安い。他は二部屋しかない」


「そうですか……」


 エステルさんのところだと、二部屋しかないしな~。はぁ~。


「ねぇ、ジェーン。あなた本当に店を出すの?」


「うん。来月には出したい」


「そっか。なら、何とかなるかもね」


「えっ!?」


 ホルンさんには何か名案が浮かんだみたいだ。


「あんまり情報を言いふらしたくはないんだけど、今困ってるフィーナちゃんって、アスカちゃんほどではないけど、結構薬草採ってくるのがうまいのよね」


 ピクッ


 ん? ジェーンさんが反応した。


「ほ、ほんと? アスカが採取あまりしなくなって、高位ポーションの製造で困ってる」


「そ・こ・で、ジェーンがフィーナちゃんと契約を結んで、毎月一定の量の薬草を指名依頼で取るの。その報酬を家賃に当てるっていうのはどう?」


「で、でも、それだと低いランクのが多くなったりしませんか?」


「指名依頼だと薬草のランクも指定できるのよ。採る方が大変になるから嫌われるけどね。でも、あの子は採るのがうまいから苦にならないはずよ」


「そ、それいい……。私、助かる。品質重視の店にしたいから」


 何でもジェーンさんの店はポーションちょっとと、後は気付け薬や中級ポーションなどやや質の高い物が並ぶ店にしたいとのこと。店が広くないから、数量を抑えて品質と単価で勝負したいとのことだ。


「それなら、協力する。私、大家さんとは仲いい」


「じゃあ、本人に話が出来て了承が取れたらまた連絡するわ。その間、部屋のことお願いします」


「分かった。絶対空けとく」


 ぐっと力強くこぶしを握って返事をするジェーンさん。いい薬草が手に入るということですごい気合いだ。運良く部屋の当てが出来たので、私はいったん部屋へ戻って細工を始める。しばらく出かけてたし、また次も長期のお出かけになりそうだからね。

 それにしても最近なんだか宿で視線を感じるんだよね。宿だから人は入れ替わってるんだけど、なんでだろ? エレンちゃんに言っても、はぐらかされちゃうしな~。


「まあいいや。細工だ」


 いつものように道具を広げて細工を始める。この前はシェルレーネ様の像を作ったし、アラシェル様たちのも作っておこう。光の神様じゃないけど、信仰がかなりこの世界では重要みたいだし。せっかくだから長生きしてもらいたいしね。


「いや、待てよ。この際、三人一緒にすればいいんじゃないかな?」


 一応この大陸ナンバーワンのシェルレーネ様を中央に添えてちょっとだけ教会を考慮すれば、こういうのもありなんじゃないかな? でも、グリディア様って別に豊穣神とかじゃないしなぁ。そんなこと言ったらアラシェル様も特に関係ないんだけど。


「何とか滑り込ませる感じで行けないかな?」


 アイデアをひねった私はシェルレーネ様を水を満たす女神として、グリディア様を魔物を気にする見張り役として、アラシェル様を実りを祈願するものとして描くことにした。


「何だかこれだとアラシェル様だけニートみたい……。祈るって言っても神様の出す水だし、水不足も起きないから実質、居るだけなんだよね。いや、そんなこと言ったら巫女自体そんなもんだし、この世界なら大丈夫でしょ!」


 この世界にはニートなんて言葉はないし、最悪でも信心深い巫女ぐらいには見てもらえるかな? 気を取り直した私は新たな細工を作るのだった。題名はもちろん『コメを育てる三女神』だ。なんでコメ育ててるの? なんて意見は無視。一食ぐらいはコメの出る生活が恋しいのだ。

 もちろんこれだけじゃなくて、涼やかに風を感じるアラシェル様の像と、灼熱の大地に立つグリディア様も作った。


「そうだ! お姉さんから精霊の像を作る依頼受けてたんだった。そっちも作らなきゃ」


 とはいえ、三作品も作れば時間も夕刻。簡単なラフを描いてその日は仕事終了だ。明日はエレンちゃんと出かける日だし、もう休まないとね。



「いい天気だね~」


「おねえちゃん、今日は雨だよ」


「はぁ~」


 せっかくのお休みでエレンちゃんとのお出かけの日だというのに、今日はあいにくの雨だ。しかも、そこそこ降っているので今日はほとんどの店が休みだろう。


「せっかくのお出かけがぁ~」


「あはは、また行けばいいよ」


「エレンちゃんはお出かけ出来なくなったのになんだか嬉しそうだね」


「うん。アスカおねえちゃんと初めて話をしてたことを思い出してたから」


「話? この町に来てからすぐに話したと思ったけど……」


「お客さんとしてはね。でも、雨の日に私がお仕事お願いしてから、もっと話すようになったよね」


「そうだったかな?」


 いつも話してる印象だから、もう覚えてないかも。


「うん。私みたいな年下の子の言うこともきちんと聞いてくれて、色々な話もしてくれておねえちゃんみたいだなって、その時に思ったもん」


「思い出した! あの時はアスカさんって呼ばれてたなぁ~」


「そうそう。久し振りに呼んでみよっか?」


「うん」


「アスカさん」


「……なんていうか違和感しかない」


「あはは、わたしもそうだね。でも、間違って一度先におねえちゃんっていったことがあるんだよ」


「そうなの?」


「うん。おねえちゃんは気づかなかったけど、すっごく恥ずかしかったんだから!」


 そっか、なんだかんだでもうあれから一年以上経つんだ。私、ちょっとは成長したかなぁ。


「どうしたのおねえちゃん急に黙り込んで?」


「うん。ここに来て一年以上経つけど、成長したかなって思って」


「してるしてる」


「本当!? どの辺が?」


 思わず身を乗り出しながらエレンちゃんに聞き返す。


「まずはちょっと背が伸びたでしょ。それにちょっとだけ美人さんに近づいたかな。後はあんまり変なこと言わなくなった!」


「それは元からだよね?」


「ん~? 前は田舎育ちの非常識とそれ以外の非常識があったけど、今は後者だけだね。街の生活には慣れた感じ」


「街の生活にはって、そんなにおかしなところあるかなぁ~」


「あるある。冒険者なのに部屋にこもって細工してるし、気付いたらリンネとか連れ帰ってるしね」


「さ、細工は将来のためだし、リンネも付いてきちゃったんだもん」


「普通は付いてこないもんだけどね。フィーナさんから聞いたよ。リンネってすごく強いんだって?」


「ま、まあ、この辺じゃ敵なしかな?」


 リンネの爪はガンドンの皮膚を裂くぐらいだし、オーガでもオークでもバッサリだろう。


「この前、魔物使いの人がたまたまうちに来たからびっくりしてたよ。普通最初の一匹はウルフとかコボルトとかもっと弱くて単純な魔物だって」


「その人は何を連れてたの?」


「ウルフのペア。でも、二匹ともリンネにビビっちゃって、レダが間に入ってくれたんだよ」


「他の従魔か、見たかったなぁ」


「どうして? おねえちゃんのより弱い魔物だよ」


「他の魔物使いなんて知らないし、新しい発見があるかもしれないじゃない?」


「なるほど、魔物使いの常識を教えてもらいたかったんだね」


「どうしてそうなるの! もうお土産あげないよ」


「お土産あるの!?」


「うん。本当はお昼時に渡したかったんだけどね。この天気じゃしょうがないよ」


 私はバッグから、小包を取り出してエレンちゃんに渡す。


「なにかな~、わっ! 可愛い!」


 エレンちゃんへのお土産は翡翠のブレスレットだ。丁寧に加工してあり、石の形もわりかし揃えられているので、見映えも良い。それにバンド付きでサイズ調整も利く一品だ。


「どうしたのこれ?」


「エヴァーシ村で、内職代わりにやってる人がいてね。物々交換したんだ」


「おねえちゃん、わざわざ何か持っていったの?」


「ううん。倒した魔物をね」


 大銅貨八枚分を代わりに私が払ってキープしていたのだ。内職といっても、何もやることがなくてしているみたいで、結構手間がかかっている。それに商人も民芸品にはそこまで良い評価をくれないので、交換してもらえたのだ。


「高かったんじゃないの?」


「そんなに高くないよ。材料の革は切れ端で、石はセットで商人さんからちょっとずつ買い付けてるみたいだし」


「こんなにきれいなのにね」


「そうでしょ。私は細工をするから、こういう石の形を生かしたのとか苦手だしね」


 なまじ加工できてしまうので、歪な形の物は磨いてしまう。だから、天然石をそのまま使うのは苦手だったりするのだ。


「じゃあ、その時のこととか聞かせて!」


「分かった。まずは素材の入手からだね」


「そこからなの? あんまりこわいのはやめてよ」


「分かってるって」


 久し振りのエレンちゃんとの会話は弾んで、お昼過ぎまで話し込んでいた。でも、素材の話をするときはエレンちゃんすごくびくついてたなぁ。

 いつの間にか私も冒険者ぽくなって、グロテスクなことに耐性が出来ていたみたいだ。他の人に話す時は気を付けよう。


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― 新着の感想 ―
アスカ「ブリングベアーは…ヒッヒッヒッヒッ…」 エレン「お姉ちゃんこわい」 アスカ「斬れば斬る程臭いが強くなって…」 エレン「ひいぃぃぃ…」 アスカ「臭いッッ!!(テーレッテレー!!)」
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