表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと古きもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

333/495

村の周囲


「ん~、気持ちいい~」


 午前中、存分に寝た私はん~と伸びをする。いやぁ、昨日も結局村に帰って来てから円盤投げ大会で疲れたし、本当にゆっくりできた。


「さて、ご飯だ~」


 時間はお昼前。体調もいいし、今日のお昼は楽しみだなぁ~。


「こんにちは~」


「アスカちゃん、こんにちは。お昼持ってくるわね」


 そう言ってお姉さんが出してくれたのは、野菜スープにキノコのパスタと温野菜だ。スープはリュートの持ってきた干し肉を入れて、味を調えてある。これが初めてではないんだけど、少量入れるだけで味がグッとしまるから何度も作り方を聞かれてたな。あれは面白かった。あの時間にたまたま下にいてよかったよ。



   ✣ ✣ ✣


「ちょ、ちょっと顔が近いですよ!」


「それより、この配合はどうなってるの? 食べ慣れない味がするから、この辺じゃ見かけないものも入ってるだろうけど、それなりなら何とかなるわよね?」


「いや、まあそうですけど……」


「なら、教えてくれてもいいじゃない。どうせ同じ味にはならないんだし」


「でも、僕が考えたわけじゃありませんし……」


「それじゃあ、その人を連れて来てくれる?」


「いや、一般人ですよ。さすがにここまで連れて来れませんよ」


「仕方ないわね……」


「ほっ、良かった」


「それなら、あなたが教えてくれないと」


「どうしてそうなるんですか!?」


「その人がこの村まで来れないなら仕方ないでしょ?」


「でもですね」


 なおも食い下がるお姉さんに、リュートもたじたじだ。特に身長が同じぐらいだから、目線のすぐ下に胸があるんだよね。


「は、離れてください!」


「教えてくれたらね。もちろん報酬も用意するわよ。何が良い?」


「あ、アスカ助けて!」


「本当にリュートは助けて欲しいの?」


「な、何言ってるんだよ!?」


 いやぁ、真面目なリュートはからかいがいがあるなぁ。普段あれこれ言われるし、こういう時に反撃しないとね。こうしてリュートはお姉さんから逃れるために、そこそこの調味液のレシピを渡したのだった。


「教えてくれてありがとう、リュート君」


「言っておきますけど、そのハーブは中々手に入りませんからね」


 最大限の抵抗としてリュートが選んだのは、味がいい代わりに配合の中に入手性の悪いハーブを混ぜたものだった。


「へぇ、これ手に入りにくいんだ」


「そうですよ。アルバでも高くはないですけど、量が取れないらしくて作り置きするのも難しいんです」


「そんなハーブあったんだ」


 ハーブの話になったので私もちょっと興味が出て、お姉さんが持っているハーブを見る。


「あれ? これがそのハーブ?」


「そうだけど、アスカどうかしたの?」


「いや、でもこのハーブってこの村に自生してるよね?」


「ええっ!? どこで!」


「どこって言われても……シャスさんの工房へ行くところに森があるでしょ? あそこの手前側のちょっと背の高い草むらに生えてるよね?」


「あの草がこのハーブなのね。みんな変な香りがするってあまり採らないのよね。臭み消しにちょっと使う程度かしら? あの辺はほっといても生えるから、困るのよね」


「嘘だ、僕の最後の抵抗が……」


 これはいけないと思って私は足早にその場を去った。いやぁ、いいことした後は颯爽と去らないとね。ヒーローは安易に人前に出るべきではないのだ。


   ✣ ✣ ✣



「あ~、スープもパスタも美味しいです」


「アスカちゃんのおかげで、このスープもいつでも食べられるわよ」


「本当ですか! でも、ここまで来ないといけないんですよね……」


「それについては安心して。あの後、リュート君と話をしてミックスハーブとして調味料を売ることにしたの」


「でも、登録とかどうするんですか? 商人ギルドはこの村にはありませんよ」


「ちゃんと代理申請の制度もあるのよ。今必要な書類を作ってるところなの。もう名前も決めたのよ。エヴァンス・オリジンっていうの。これで、少しでもこの村が有名になるといいわね」


 そう元気よく語るお姉さんとは対照的に、無心で料理を食べるリュートが奥に見えた。なんだか疲れてるみたいだし、刺激しないようにしよう。私は空気が読める子なのだ。


「さて、食事も済んだしちょっとお外に行こうか」


《ピィ》


 アルナお待ちかねのお出かけタイムだ。とはいっても村から出るのはさすがに危険なので、その辺を見て歩くだけになると思うけど。

 服を着替えて準備を整える。一応、何かあった時のために簡単に防具をつけて出かける。


「あっ、師匠こんにちは~」


「こんにちは、今日もみんな元気だね」


「師匠は何してるんですか?」


「私はアルナと一緒にお散歩中。村を見て回ろうと思って」


「それなら、あっちの方がいいですよ」


「あっち? でも、あっちはほとんど家がないよね」


 シャスさんの工房と反対側は畑が多くて、人がほとんど住んでないのに……。


「あの辺、変わったやつとか結構見つかるぜ」


「小鳥さんのご飯なら、いいのがあるかも」


「そうだったんだ。人もいないっていうから、私あっちに行ってなくて。貴重な情報をありがとう」


 みんなにお礼を言って村の奥へと進む。そこをいつもと逆に曲がると、簡単に伐採されただけの道が現れた。


「本当にちょっと通るだけの道みたいだね」


 小さい台車ならともかく、馬車なんて通れそうにない道だ。そこを進んでいくと畑があった。畑といっても田んぼに近いぐらいの面積があり、そこには大小さまざまな野菜が植わっていた。

 もちろん、柵もあるけどどちらかというと、隣の畑との境目のようだ。十字に作られた道の奥はそれこそ手入れもされていないようなところだ。


「あっ、でも森の方だけはちょっと道があるね」


《ピィ》


 するとアルナがささっと飛んで行ってしまった。


「危ないよ、ティタお願い」


「らじゃ」


 アルナの見張りにティタも付いて行ってもらう。数分後に帰ってくるとアルナが報告してくれた。


「おくにいずみがあった」


「泉? そっか、あっちの道は水源までの道なんだ」


 泉だなんてちょっと気になるし、行って見よう。がさがさと草をかき分けて進んでいく。道にはなっているものの、泉が枯れていないかなど用事がある時だけ使われるようで、他の道のように定期的には綺麗にされないようだ。


「うわぁ~、綺麗~」


 そして中央には大きな泉があり、こんこんと水が湧き出ていた。周囲には木々が生い茂り、泉には光が差し込んで幻想的な光景が広がっている。


「それにしてもすごい光景だな。みんなで見に来ればいいのに」


 観光名所にすれば大人気間違いないぐらいの光景だ。


「ここで、ユニコーンとか精霊が居たら、完璧なのにな~」


 その時、急に目の前を何かが横切った。


「な、なにっ!」


 思わず身をひるがえしてしまったけど、魔物の反応もないし魔法探知にも引っかからなかったし、何だろう?


「きゃ!? 貴方、私が見えるの?」


 私の正面に小さなものがやって来た。


「ようせい?」


「あら、本当に見えるのね。貴方珍しいわよ。精霊視持ちかしら? でも、そんな感じはしないわね。どっちかというともっと神聖な……。おっといけない。自己紹介ね。私はここに住む精霊よ」


「精霊ですか? 妖精じゃなくて」


「ええ、あんな気まぐれな存在と違って、私たちは一所に住み、そこで世界を見守っているのよ」


「そ、そんなすごい存在だったんですか。すみません」


 見た目は思い描いていた妖精の姿だから勘違いしちゃった。


「いいわ。でも、精霊視の感じは受けないけど、貴方は何者なの?」


「私ですか? 私はアスカ、冒険者をやっています」


 とりあえず自己紹介だ。さっきからこの方の言っている、精霊視が何かは分からないけど、何か特別な力なのだろう。さすがに私にはそんな力が無いもんね。


「そう。後ろのは?」


《ピィ》


「こっちの小鳥がアルナでそっちのゴーレムがティタです」


「ふ~ん。こっちの鳥は分かるけど、使い魔持ちの人間なんてますます珍しいわね」


「使い魔? ティタは従魔ですけど……」


「面白い冗談ね。確かにそういう契約の跡も見られるけど、そういう要素は薄いわよ。貴方が作ったのでしょう?」


「作ったというかなんというか……」


「まあ、詳しくは聞かないわ。それにしても、あなたからは懐かしい力を感じるわね。光の女神の力ね。もう数百年は見てなかったけど、元気かしら?」


「光の女神様を知っているのですか?」


「もちろんよ。今じゃ信じられないけど、ちょっと前まではかなりの勢力だったもの。近くに巫女もいてね、たまにこの村に寄ったりしていたのよ」


「ちょっと前ですか? あの村が滅んだのはもう数百年前ですけど……」


「じゃあ、ちょっとじゃない。そっか、あの村から誰も来ないと思ったら滅んでいたのね。誰もそんな話をしないから分からなかったわ。女神様もかわいそうに。あれだけ神と人に尽くした巫女は他の女神の巫女にはいないわよ」


「そうなんですか。私は光の女神様には一度会ったきりなので、よく知りませんが……」


「あなた時間はある?」


「まあ、それなりには……」


「じゃあ、面白い話をしてあげる。最も旅の冒険者からの土産話だけどね」


 そう言って、精霊様は一番人の世に貢献したであろう一人の巫女の話を始めたのだった。




いつもお読みいただきありがとうございます。

感想や誤字脱字、評価等頂けて感謝です。


感想や誤字脱字につきましては、まとまった時間が取れる時に確認するようにしておりますので、 ご理解頂けたらと思います。


今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ