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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと古きもの

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お宝は?


「アスカ、お~い起きろ。アスカってば」


 ぺちぺち


「う……ん?」


 目が覚めた。さっきの出来事はまるで夢のようだ。でも、実際にあったこと。私は覚えておかないと、名をなくした神様とその信徒たちのためにも。


「おっ、起きたか? もうすぐ、十六時頃だよ。いい加減起きな」


「あ、はい……。ずっと眠ってました?」


「うわごとを言いながらね。なんか夢でも見たのかい?」


「そうですね。ここに来てよかったと思えた夢でした」


 誰にも忘れ去られて、消えていく運命を救えたと思えるなら。


「げっ! この銀の像こんなんだっけか? 随分古ぼけて見えるねぇ。顔すらよく分からないね」


「そっか……そうですね。これじゃ、売り物になりませんね」


「全くだよ。せっかく、言い値で売れると思ったのにさ。仕方ないからアスカが持ってな」


「良いんですか?」


「良いも何もこんな像じゃ売れないし、溶かして成形し直すぐらいしかないだろ?」


「そうですね。貰っておきます」


 きっと、最後の信仰心の欠片も残さず消えていったんだね。そして、信仰心によって今まで像が綺麗に保たれてたんだ。数百年を過ぎて、埃ひとつなかったもんね。


「おやすみなさい」


 丁寧に布にくるんで像をマジックバッグにしまい込む。取り出すことももうないだろうな。


「何だい? まだ寝るつもりかい」


「ち、ちがいますよぅ。ほら、外に出ましょう!」


「はいよ」


 ジャネットさんとテントの外に出る。外は綺麗な夕焼けだ。光の神様って言ってたし、最後の贈り物なのかな? 眩しく綺麗な光景を目に焼き付けて、みんなのところへ行く。


「おっ、ようやく起きたな。この辺はなんか作物があるぐらいだな。ほら見てみろよ、これ麦みたいだけどちょっと違うんだぜ。中身は同じように見えるけどな」


「こ……」


「こ?」


「コメ! いや、稲だ~!」


 ノヴァが手に持っているのは紛れもなく稲だった。これまでも少量なら入荷はあったけど、どれも高くて中々手が出せなかったんだ。飼料扱いのものも輸入だからそこそこの値段だったし。


「リゾットも材料が高いから量が少なかったんだよね」


 改めて稲を見る。中々、お米が付いているように思う。私たちが食べているのも品種改良を重ねて、元のやつとはかなり違っているって聞いた。野生種にしてはこれはかなりいいのでは?


「こ、これ、もっと生えてた?」


「ああ、あっちにいっぱいな。多分育ててたんじゃないかな。割とそこら中にあるぜ」


「なんてことだ! 私が神様だったら降臨してでも助けたよ」


「は? 降臨? 何言ってんだ」


「と、とにかく案内して! 今日の夕飯に使うんだから」


「お、おう」


 ノヴァの言う通り、この辺ではかなり生えている様だ。秋に実るものだけど、どうやら季節に関係なく植わっている状態なので、やや早く実っているらしい。急ぎ、エアカッターで刈り取って集める。


「確か昔はすりこ木だっけ。ああいうのを使うんだよね」


 近くの木を切ってそれらしきものを作り、稲を引き抜いて米を落とす。後は棒を作って叩いて中のコメを出す。多分こんなやり方だったと思うんだけど……。


「あれは何してるんだい?」


「さあ、新しい食材みたいですね。ほら、たまにリゾットとかで使われてるあれですよ」


「ああ、そういやアスカは好きだったね。熱いのも我慢してほおばってさ」


「でも、火を使うんだろ? 大丈夫なのか」


「なら、ノヴァはあの笑顔を前にやめとけって言うの?」


「あ~、まあ、襲われなきゃいいか」


「後で火の始末を念入りにしないとね」


「にしてもよくあんなにすぐ思いつくな」


「迷いがなかったし、故郷にいる時によく使ってたんじゃないの?」


「まあなんにせよ、元気になってよかったよな」


「そうだね」


「ほら、リュート。ティタに水だしてもらったから、炊いて」


「はいはい。じゃあ、火をお願いするよ」


「任せといてよ!」


 こうして、楽しい夕食作りが始まったんだけど、すっかりおかずを忘れてしまった。


「後は十五分ぐらい蒸らして完成かな?」


「蒸らす?」


「うん、蓋をしてしばらく待つとふっくらするんだよ」


「それじゃあ、何か副食も用意しないとね。他にはまだ何も作ってないし」


「あっ、いっけない。早く用意しないと!」


 慌てて、他の食材を切ったりして簡単なスープも用意した。


「それじゃあ、いただきます」


「はい、いただきます」


「でもよ~、ほんとに何もかけなくていいのか?」


「大丈夫だって、そのままでも美味しいんだから」


 新米だし、まずはそのまま頂かないとね。


「うん。美味しい! なんていうかもち米とまではいかないけど、ちょっともっちりしてて美味しいね。粘り気のある品種なのかな? おはぎとかにもよさそう」


「本当だね。そのままでも中々美味しいね」


「後はこれを栽培してくれるところを探さないとね」


「栽培?」


「せっかくこんなに美味しいんだから広めないと。この稲と発芽用にコメを持って行けばいいよね」


「広めるってどこで?」


「とりあえずはエヴァーシ村からかな? 確か入り口近くに小川もあったし、水源も結構あるみたいだしね」


 育てるのには水が不可欠だ。そういう場所に広めてもらわないと。


「やれやれ、とんだ遺跡巡りだよ。ただの食材探しじゃないか」


「まあ、一番お宝に目を輝かせていた本人が納得してるみたいですし……」


「リュート、冒険者の目的は?」


「利益ですか?」


「そう。今回ろくに稼げてないよね」


「まあ、行きのウルフとかとガーキャットだけですね」


「労力に見合ってないんだよ。まいったね」


「貴重な体験ですけどね」


「それもあたしたちじゃなくて、アスカだけだろ?なんかいつもとちょっと感じ違うしね」


「ゼロよりましですよ」


「そりゃそうだ」


《ピィ》


「何だいアルナ。慰めてくれるのか?」


《ピィ》


「飯かい。ほれ」


 炊いてないコメをやる。全くどいつもこいつも飯ばっかりだねぇ。


「さあ、ごはんも食べたしこれからどうしましょう?」


 まだ、辺りはやや薄暗い程度だ。探索ならできそうだけど……。


「固まって動くとなると、そんなに動けないからねぇ。一応、簡単に各家を回って気になるところを明日探すかね」


「じゃあ、用意しますね」


 パッと杖を用意して、鎧もつけて準備完了だ。早速、村へと繰り出す。


「ん~、こっちはギリギリ壺があるぐらいだな。そっちは?」


「僕の方もタンスの跡かな? 形がほぼ残ってないね」


「アスカ~、そっちはどうだ?」


「二階部分が崩れて駄目。それも風化してて、埃が……。けほっ」


「駄目だ。下にもなにもない。次にいこう」


 こうして、隣り合った二軒をそれぞれ見ていく。だけど、風化が進んで正直見た目で何もないと思えてしまう。


「これ意味あるか?」


「金属や鉱石なんかだったらね。他はさすがに使い物にならないけど」


「探すなら祭壇近くにします? 結構貴重品とかってああいうところに置きますし」


「そうしよう。日も落ちる頃だし、手早くいこう」


 私の案で、家中探さず祭壇近くに絞る。何件目かを見ていると祭壇下でがこんと音が鳴った。


「ん? なんだろうこれ?」


 開いたところに手を突っ込む。ん~、何か固いなぁ。しかも、そこそこ重たい。


「アスカ、はやくだす」


「えっ? うん」


 突然ティタに急かされた。一体何だろう? とりあえず、取り出してみるとなんとも言えない色の石が出てきた。


「変な石。ティタ分かる?」


「たべていい?」


「何か分かってからね」


 どうしたんだろ? ティタにしては珍しい反応だな。


「ん、何かあったのかい?」


「あ、はい。何か石が出てきたんですけど……」


「石? 何処から?」


「祭壇の下からです」


「ちょっと見せてみな」


 ティタの視線をものともせず、ジャネットさんが石を手に取る。


「ん~、この石どっかで見たことあるな。ティタは知らないのか?」


「わかる。だから、ちょうだい」


「いや、くれって言っても価値が分かんないからねぇ……」


「たべたらおしえる」


「まあ、それならこの端のとこちょっとだけな」


 ティタが教えてくれると言うので、とりあえず尖った先を落としてあげようとする。


「これ固いねぇ。アスカ、ちょっと下がってな」


「は、はい」


 石ひとつに大袈裟だなぁって思うけど、剣を振り回すのは危ないので、大人しく下がる。


「はあっ、やぁっ!」


 何度かジャネットさんが剣を振り下ろし、ようやく角が取れた。本当に硬い石なんだな。


「テントもどる」


「はいはい。ちゃんと教えてくれよ」


「うん」


 石を抱えながらティタは私の肩に乗ってテントまで戻る。すごくテンションも高くて、魔法で軽くしてもくれてない。仕方がないので、自分で風魔法を使って重量をなくしている。


「あれ何だったかなぁ? どっかで見たことあるんだけど……」


 ジャネットさんも石が気になるようで、ぶつぶつ言いながら進んでいる。


「どうしたんだ?」


「うん、なんか見つけたんだけど、それからジャネットさんもティタもちょっとおかしいんだよね」


「石一つで大騒ぎだな」


「でも、テントまで戻ればティタが教えてくれるんだって」


「ティタは何か知ってるんだ?」


「うん。でも、自分の分を食べるまでは教えないって聞かなくて」


「へ~、アスカの言うことなら何でも聞いてるイメージがあるけど、珍しいね」


「そうでしょ? 私もなんだか気になっちゃって」


 テントまでは襲撃がなかったけど、気もそぞろでちょっと危なかったかも。


「さあ着いたよ。いい加減教えてくれよ」


「ちょっとまつ」


 ティタが丁寧にちょっとずつ口に含む。いつも、お気に入りの魔石でもパクッと一口で、バリボリと食べるのにえらく慎重だなぁ。


 《ぽり ぽりぽり ぽり ごっくん》


 ようやくティタが食べ終わった。というか、食べる時もかなり硬そうだったんだけど……。



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― 新着の感想 ―
[一言] >「確か昔はすりこ木だっけ。ああいうのを使うんだよね」 即興で扱き箸か千歯扱き造りましたか…(汗)
[一言] ミスリルかアダマンタイトかな この金属もファンタジーだと定番だよなぁ
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