目指せエヴァーシ村
ノヴァの剣も無事に出来上がり、旅の準備も出来た私たちは再びエヴァーシ村に向けて出発することになった。
「細工の方は問題なし。それぞれお休みの連絡も済んでるし、後は出発するだけだ」
食堂に下りて朝食を取る。
「おねえちゃん、はい。何か面白いものを見つけたらまたお話してね」
「うん。きっとすごいものを見つけてくるからね。今回はティタも一緒だし」
「あんまりすごいものでなくていいよ。程々ので」
「そう? まあ、まかせといてよ!」
ライギルさんのパンがしばらく食べられないのは残念だけど、それに見合ったものを見つけてくるんだから。意気揚々と食事を終えて、ギルドへ向けて出発する。まずは、依頼を見つけないとね。
「おはようございま~す」
「おはよう、アスカちゃん。今日は早いのね」
「ちょっと、エヴァーシ村まで出かけるんです」
「そうなの。なら、またしばらくは町を離れるのね」
「そうですね。えっと、レディトまでの依頼はと……」
依頼といっても今日中にレディトに着けるものじゃないとね。時間のかかる依頼なら、野宿になっちゃう。
「ちょうど、護衛依頼が一つ残ってるわよ」
「護衛依頼ですか? 珍しいですね。最近残ってること自体無かったのに……」
「まあ、ちょっと安いっていうのもあるのかしら? それでも今までは埋まっていたんだけどね」
言われるがまま護衛の依頼の内容を確認する。何々……依頼料は銀貨三枚。確かに四人前後のパーティーが多い中で、銀貨三枚だと等分しても一人銀貨一枚に届かない。安いと言えば安いけど他にも何かあるのかな?
「え~と、一名は御者の代わりに乗ってもらい、残りは徒歩です。か」
そういえば依頼といえば、いつも馬車に乗せてもらってたけど、これだと一人以外は徒歩になるんだ。というか御者の代わりって馬を操れないといけないんじゃ……。
「おっ、アスカ。早速依頼を見てるんだね」
「ジャネットさん! そうなんですけど、これ見てください」
「何々、ひとりが御者で残りが徒歩か……。馬ぐらいなんてことないけど、ついでに乗せてくれないもんかねぇ」
「出発は連絡が入り次第なので、ちょうどいいと言えばいいんですけど……」
「まぁ、どの道レディトまでは歩きで何か依頼を受けるつもりだったし、大きな問題はないね」
そう言いながらも嘆息するジャネットさん。
「やっぱり安すぎますか?」
「ん~、この御者の件が無くて徒歩だけならまだいいんだけどね。こっちに役割を一つ持たせてこの金額はねぇ」
「交渉しますか?」
「それもねぇ。出発の時間が伸びてもこっちは損するだけだし」
「では、銀貨三枚と大銅貨五枚なら即決ですぐに出られると伝えますか?」
「いいかい?」
「ええ、ここから近いし、直接請負人を連れて来ないように言われてるの」
「なら頼むよ」
「じゃあ、行ってくるわね」
私たちが考えあぐねていると、ホルンさんが間に入ってくれた。
「んで、肩にティタが乗ってるけど連れていくのかい?」
「はい。昔のことをティタもらないかなって思いまして。それに私たちが気づかないものにも気づくと思って」
「なるほどね。んじゃ、ホルンさんが帰ってくるまで代わりの依頼を見とくかね」
「さっきの依頼は?」
「まあ、五分五分ってところだね。断られた時にすぐに出て行けるようにしとかないとね」
「じゃあ、この辺ですかね」
「北側ルートの調査か……。時間はぎりぎりになりそうだね」
「そうですね。出来れば街道を行きたいところです」
「相手の出方次第だからいい返事を期待しようじゃないか」
「なんだ? 依頼はもう決まったのか?」
私たちが依頼を見ようとするとやって来たノヴァが声をかけてきた。
「ノヴァ。今返事待ちだよ」
「そうか。表でリュートも見たからすぐに来るぜ」
ノヴァが言うと、入り口からリュートの姿が見えた。
「おはようみんな」
「リュートもおはよう」
「何かいい依頼あった?」
「いいかどうかは微妙だけど、今日中にレディトへ着けるのはあったよ」
「今は返事待ちだけどねぇ」
「ただいま。返事をもらってきたわよ」
「おや、案外早かったね」
「ここから近いところだったから。OKですって。ただし、三十分以内には出たいって」
「こっちはそろったから何時でもいいよ」
「じゃあ、五分後にギルドの外で。すぐに連絡するわ」
「頼んだよ」
再びホルンさんが駆けていったので、私たちは代わりにカウンターにいた人から依頼を受ける。
「はい、これで依頼は受注したわよ。いってらっしゃい」
「はい、行ってきます」
特にギルド内ですることもないのでそのまま外に出て商人を待つ。すると数分後に商人らしき人が現れた。
「やあ、君たちが依頼を受けてくれる人かい?」
「そうですけど、お一人ですか?」
「まあね。小さい商会だから人手が足りなくてね。よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
「で、御者はどなたが務めてくれるのかな? 馬車二台を一人はきつくてね」
「あたしがやるよ。他のが護衛になるね」
「あなたですか? 失礼ですが、他の方たちは大丈夫ですか?」
「レディトまでならなんてことないさ」
「そうですか。では、よろしく願いします」
用意ができたのでジャネットさんが馬車に乗って御者として動き始める。
「んじゃ、俺たちは徒歩だな。さっさと行くか」
「ま、まって~」
私たちはすぐに東門を出て、街道を進みだした。
《ピィ~》
「ん、ちょっと待って」
何だか聞きなれた声がしたような……。バッグから?
バサッとバッグを開けるとそこにはアルナがいた。
《ピィ~》
狭かったと言わんばかりに飛び回るアルナ。
「ちょ、ちょっと、もう家に戻る時間はないよ?」
《ピィ》
「ついてくるきだから、だいじょうぶ。だって」
「ええ~、本当に大丈夫なの?」
「どうかしましたか?」
「すみません。飼ってる小鳥が一緒についてきてしまったみたいで……」
「おおっ! その姿はヴィルン鳥ですか?」
「ま、まあ、半分は。バーナン鳥とのハーフなんです」
「一緒で構いませんよ。どちらもこの国に縁のある鳥ですからね。商売人にとっても良い縁になるでしょう」
「すみません。アルナ、迷惑かけないようにちゃんとつかまってるんだよ」
《ピィ》
元気よく返事をするアルナだけど、旅は危険もあるから心配だなぁ。新たにアルナも加えて、私たちは道中を進んでいく。
「街道はまだ安全みたいですね」
「確かにそうですが、商人からすればオーガ一体でも十分脅威ですので、こうして護衛を雇うわけです。数に関係なく出会った時点で脅威ですから」
「まあ、そうだろうね。にしては依頼料をケチり過ぎじゃないかい」
「やはりそうでしたか。いつも依頼の受注がすぐに来ないのでそうかと思っていたのですが……」
「銀貨四枚ぐらいは覚悟した方がいいよ。アルバもCランク冒険者が増えたし、そのぐらいは普通だね」
「中々、難しいところですね。うちの商会ももう少し商売がうまくいけば、ポンとお出しできるのですが」
「後ろの荷物が傷むようなものでなければ、別にいいと思うがね」
「今のところはそういったものは取り扱っておりませんね。その時が来れば金額も適正に致しましょう」
「向こうで滞在費がかかってもいいなら構わないんじゃないかい?」
「ジャネット、こっちのペースも見といてくれよ」
「はいはい。ノヴァは精々遅れることのないようにね」
「それならアスカが……あれ? 何であんな前にいるんだ?」
「アスカは土魔法で先に行ってるよ。遅れる度にあれで進んでるから、多分一番早いんじゃないかな?」
「二人ともずるいぜ。俺たちは真っ当に進むぞ、リュート」
「あ、うん。魔法は使わないでおくよ」
順調に街道を進んでいく私たち。どうやら今回は当たりのようだ。無駄に時間も使わないし、いいスタートかな?
「そろそろ、お昼にしましょうか?」
「だね。馬もいったん休ませよう」
ちょっと広くなっている脇道に馬車を止めて、馬も放してやる。こうしてリラックスして食事を取ってもらい、また一頑張りしてもらうのだ。
「はい、ご飯だよ~」
ちょっとだけ風の魔法を使って、ふわっと草をばらまく。これは荷台に入っていたもので、町で安く手に入る馬のご飯らしい。
《ピィ》
「こらアルナ、勝手に食べちゃダメでしょ」
《ヒヒーン》
「うまがいいって」
「う~ん、ならいいのかな? でも、食べ過ぎないようにね」
「中々、面白いパーティーですね」
「褒められたと受け取っておくよ」
結局、その後も街道で魔物に出くわさず、レディトへ着けた。
「どうもありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
「今度は御者ぐらい雇いなよ」
「はは、そうします」
ギルドに完了の報告を入れて、後はいつもの宿で食事を取る。アルナの件はというと小鳥ぐらいなら町にいるから大丈夫とのことだった。ティタ? 置物として通してるから大丈夫。喋らなきゃみんな分かんないしね。
「明日はまた朝早いからね」
「はい、今日はもう寝ます」
何とか早く出てエヴァーシ村へ夜までには着きたい。前はリンネと出会えたけど、夜戦はもう十分だ。
「それじゃ、お休みなさい」
《ピィ》
「おやすみ、アスカ」
ティタとアルナにお休みを言って、私は眠りについた。




